東地域開幕! FS-125部門は伊藤祐選手が、FP-3部門は村田悠磨選手がともに初優勝!

レポート カート

2021年4月14日

西地域に後れること3週間、東地域でも全日本カート選手権の2021シリーズが幕を開けた。FS-125部門では伊藤祐選手(ガレージC)が、FP-3部門では村田悠磨選手(SPS川口)が優勝。同時開催されたジュニアカート選手権の2部門を含めて4部門すべてがデビューウィンという、新時代の到来を予感させる大会となった。

2021年JAF全日本カート選手権 FS-125部門/FP-3部門 東地域第1戦
2021年JAFジュニアカート選手権 FP-Jr部門/FP-Jr Cadets部門 東地域第1戦

開催日:2021年4月10~11日
開催地:ツインリンクもてぎ北ショートコース(栃木県茂木町)
主催:RTA

 東地域のFS-125部門は2020シリーズの上位ランカーの多くがOK部門にステップアップを表明しており、顔ぶれが大きく入れ替わった。その影響もあってか、エントリー22名のうち20名が16歳以下、さらに最年少13歳のドライバーが5名と、このクラスは低年齢化が進んだ。

 この部門の名物ドライバーである65歳の橘田明弘選手(K.SPEED WIN)と、2020年から全日本に復帰した29歳の箭内優樹選手(brioly racing)には、かえって注目が集まるところだ。

 若年層が増えたのは、元々シニアドライバーのためのレースとして始まったFP-3部門も同様。エントリー21名のうち20名が20歳以下、最年少の13歳が3名と、以前とは様相の異なる“若い”クラスになった。

 決勝日の空は快晴。サーキットは早くも初夏を思わせるまぶしい陽光に包まれた。ただし、時折り吹く風はひんやりとして、北関東の春の涼しさを思い出させる。

 FS-125部門のタイムトラアルでは絶好のレース日和の下、9名がコースレコードを更新。37秒740のトップタイムをマークしたのは、14歳のルーキー伊藤選手だった。2番手は2020年のFP-3部門チャンピオン中村仁選手(Formula Blue TKC)。3番手は2019年のジュニア選手権FP-Jr部門王者で、昨年はFIAカーティングアカデミートロフィーに参戦して海外で腕を磨いてきた堂園鷲選手(Energy JAPAN)と、この部門初参戦のドライバーがトップ3を占めた。

 伊藤選手は16周の予選ヒートでも常にトップのまま周回。1周目からリードを築いて独走し、決勝のポールを獲得した。2番手はやはり中村選手。3番手には堂園選手をかわして野澤勇翔選手(Formula Blue エッフェガーラ)が上がってきた。

 迎えた30周の決勝。午後4時を過ぎて風も強まったため気温は下がったが、コースコンディションは安定している。そのスタートで、伊藤選手にピンチが訪れた。反抗を胸に期すライバルたちの猛攻を受け、一気に4台の先行を許してしまったのだ。

 しかし、伊藤選手は懸命の挽回でポジションを取り戻し、やがてトップに復帰。ここから再び抜群の速さを発揮して独走し、リードを4秒以上に広げて優勝を果たした。同じエンジンで2年間のレース経験があるとはいえ、大いに鮮烈な印象を残す全日本デビュー戦での圧勝劇だった。

 2番手でゴールした中村選手は、スタート進行中の違反で無念の失格に。野澤選手が2位に、堂園選手が3位に繰り上がって表彰台に立った。

「30周走った直後には優勝の実感がぜんぜんなくて、ピットに帰ってきて、やっと勝ったんだと感じることができました。全日本の(ハイグリップ)タイヤも問題なかったし、体力的にも学校の部活(陸上部)で鍛えていたんで不安はなかったです。SUGO大会(第5戦)は学業の都合で出られないけれど、これからもどんどん攻めて、チャンピオンを目標に頑張ります」と、優勝の伊藤祐選手。
FS-125部門の表彰式。左から2位の野澤勇翔選手、1位の伊藤選手、3位の堂園鷲選手が登壇。

 FP-3部門の決勝は、稀に見る激戦となった。28周のレースが始まると、出走全車の半数以上がトップから一列に連なり、序盤戦の先頭集団は実に13台。中盤戦に入っても9台が優勝争いを繰り広げていた。トップの座は二転三転、目まぐるしく順位が入れ替わる。

 そんな中でぐいぐいとポジションを上げてきたのが、5番グリッドからスタートした村田選手だった。予選ヒートで全体のベストタイムを記録して手応えをつかんだ村田選手は、抜かれたらすぐに抜き返す積極的な戦いで先頭のポジションをもぎ取ると、終盤戦は背後にややギャップを開いて快走。5年間のジュニア選手権参戦で果たせなかったJAF選手権での1勝目を、全日本に上がって初めてのレースで成し遂げた。

 村田選手と同じ15歳のルーキー大越武選手(BEMAX RACING)は、ポールスタートから2位でフィニッシュ。2周目のポジションダウンが痛手となって優勝こそ逃したものの、印象的なレースを演じてみせた。今回はスポット参戦で、今後の参戦予定はないというのが実に惜しい。

 大越選手と鼻の差で3番手のゴールとなった角選手は、フロントフェアリングのペナルティで4位に降格され、代わって熱海瑛達選手(ガレージC)が3位を獲得。ルーキー勢が表彰台の3席を占める結果となった。

念願の優勝をFP-3部門で決めた村田悠磨選手。「タイムトライアルではトップと僅差でしたが、予選もファステストを取れて、決勝は自信がありました。FP-Jr Cadets部門やFP-Jr部門で勝てなかったのが、全日本にステップアップして初優勝できてうれしいです。ミスとかしてコースアウトも1回あったんですけど、それでも最後まで集中してていねいに走り続けました」
FP-3部門の表彰式。左から2位の大越武選手、1位の村田選手、3位の熱海瑛達選手が登壇。

 同時開催のジュニアカート選手権・東地域第1戦。FP-Jr部門は全員が12歳という珍しい顔ぶれとなった。参加7名のうち初参戦が5名、他の2名も1回のスポット参戦経験があるだけというフレッシュな面々だ。

 その決勝では、予選ヒートを独走してポールについた岡澤圭吾選手(HRT)を、3番グリッドからスタートを決めて2番手に上がった春日龍之介選手(SPS川口)がパスしてトップに立った。だが、岡澤選手は落ち着いた戦いぶりで春日選手を抜き返すと、レース後半を独走。ポール・トゥ・ウィンでこの部門のデビュー戦を飾った。春日選手は2位。スタートの出遅れを挽回した鈴木恵武選手(RT-APEX)が3位となった。

 参加7名のうち6名がルーキーと、やはり顔ぶれが前年度から大きく入れ替わったFP-Jr Cadets部門では、佐賀県から遠征の遠藤新太選手(AAA motorsports)が他を圧倒する速さを披露。20周のレースで後続を11秒近くも引き離してデビューウィンを飾った。その後方では松井沙麗選手(BEMAX RACING)と関口瞬選手(B-MAX Jr.brioly racing)がバトルを展開。松井選手が2位、関口選手が3位入賞を果たした。

 またこの大会ではふたつの併催レースが行われた。MAX Mastersでは、加藤雅規選手(Triple-K&MOMOX)が3秒弱のリードを築いてポール・トゥ・ウィン。山田武選手(brioly racing)がセカンドグループの争いを制して2位、清水健一選手(REVE RT)がグリッドから2ポジションアップの3位を得た。

 Junior MAXでは、トップ3がコンマ1秒ほどの中に固まってフィニッシュ。この熱戦のウィナーとなったのは、ポールスタートの奈良原瑞大選手(トレンタクワトロ名古屋)だ。FP-Jr部門とダブルエントリーの鈴木選手が2位を得て、この日2回目の表彰台に。3位はタイムトライアルで新コースレコードを樹立した迫隆眞選手(ERS with SACCESS)だった。

「勝ててうれしいです。前半は落ち着いてバトルして、相手のスキができたところで抜こうと考えていました。思ったとおりのレースができました。独走になってからはペースをコントロールしながら走っていました。今年は全勝してチャンピオンを獲りたいです。将来の夢はF1レーサーです」と優勝の喜びを語る岡澤圭吾選手。
FP-Jr部門の表彰式。左から2位の春日龍之介選手、1位の岡澤選手、3位の鈴木恵武選手が登壇。
各地で腕を磨いてきた遠藤新太選手が圧巻の勝利を収めた。「ゴールした時はとてもうれしかったです。(デビュー戦でのポールスタートも)緊張はしませんでした。レース中は後ろを引き離してブッチ切りの1位になることをだけ考えて、ずっと全開でした。将来の夢はF1レーサーになること。今年の目標は全勝です」
FP-Jr Cadets部門の表彰式。左から2位の松井沙麗選手、1位の遠藤選手、3位の関口瞬選手が登壇。

 決勝前日のスポーツ走行終了後には、FP-3部門2020シリーズ東地域での活躍を讃える賞典贈呈式が催された。対象は今回の2021シリーズ開幕戦にも引き続き参戦したドライバーのうちランキング上位2名で、2020シリーズ2位の角陽向選手(FLAX motorsports)と、同7位の富下李央菜選手(Formula Blue TKC)に、この部門のワンメイクエンジンであるヤマハKT100SECが贈られた。

2020年FP-3部門の振興策としてシリーズ上位2選手にヤマハのエンジンが贈られた。東地域の対象者は角陽向選手と富下李央菜選手の2人。

フォト/JAPANKART レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

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