「JAFデジタルモータースポーツ部会」がついに始動! "eスポーツ"のJAF国内統轄の基盤整備が始まる

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2021年3月23日

国内競技規則の一部改正により、国内のあらゆる仮想、電子自動車競技の管理統轄を宣言したJAFは、2021年1月1日に新設した「JAFデジタルモータースポーツ部会」の初会合を2月18日に開催。谷本勲部会長率いる新カテゴリーの部会委員が活発な意見交換を行った。

第1回JAFデジタルモータースポーツ部会
開催日:2021年2月18日
開催地:JAF本部およびオンライン会議

 2020年9月1日に公示された国内競技規則一部改正により、JAFは「国内の自動車競技ならびにあらゆる形式のあらゆる仮想、電子自動車競技を管理統轄する唯一の権威」であることを宣言した。それを受けて、モータースポーツ専門部会規定を一部改正し、モータースポーツ専門部会に「デジタルモータースポーツ部会」を2021年1月1日から新設。そして、2月18日、第1回デジタルモータースポーツ部会がオンライン会議形式で開催された。

 このJAFデジタルモータースポーツ部会は、デジタルモータースポーツに関する、デジタルライセンスやデバイスや付帯機器・設備の調査・研究を行い、競技会やイベントを扱いながら諸規則の立案や統一解釈を行うことを目的としており、FIAデジタルモータースポーツ委員会とも協働して、国際・国内の関わり方の方針を始めとした諸事項に対応することとなっている。JAFにおいては、2019年に「デジタルモータースポーツ作業部会」が設立されており、すでに、当該活動の下地作りがなされてきていたという状況だ。

 ちなみにこの「デジタルモータースポーツ」は、FIAが呼称するモータースポーツをテーマとしたeスポーツのことで、シムレーシングやバーチャルレーシング、eモータースポーツなどとして世界に流通している電子競技の総称となっている。FIAでは、Formula Eを始めとした既存の選手権などに、エレクトリックを示す「E」を使用していることから、電動車によるリアルモータースポーツと区別するために「デジタル」を採用している。
FIAでは、2019年3月に「FIAデジタルモータースポーツワーキンググループ」を立ち上げており、そこで初めてデジタルモータースポーツ(DMS)という呼称が登場。そして2021年には、この作業部会が「FIAデジタルモータースポーツ委員会」へと昇格している。

 このたび新設されたJAFデジタルモータースポーツ部会は、株式会社トムス代表の谷本勲氏を部会長として、株式会社ZERO-ONE代表の葦原一正氏とレーシングドライバーの小林可夢偉氏、ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル株式会社企画部の中嶋洋之氏、株式会社トゥーアズワン代表の佐藤恵氏、 トヨタ自動車株式会社GRマネジメント部の柳沢俊介氏、そして、JAF加盟団体でもある株式会社ポリフォニー・デジタル代表の山内一典氏という顔ぶれとなった。

 また、リアルモータースポーツでは車両が必須であり、デジタルモータースポーツでもタイヤなどの仮想車両を通した競技を基調としていることから、これまで以上に国内自動車製造者やアフターパーツ製造者との関係性を強化する必要があるため、当部会には、JAFマニュファクチャラーズ部会委員もオブザーバー出席することになっている。

 第1回部会では、まずはJAFモータースポーツ部の村田浩一部長から、FIAにおけるデジタルモータースポーツ活動の現状や将来に関する動向の報告が行われた。そして、谷本部会長の主導により、デジタルモータースポーツの国内統轄の在り方や、部会が目指すべき中期的なビジョンに関する議案が話し合われた。その過程では、デジタルモータースポーツの現状認識や、JAFの関与の仕方、ビジネスとしての経済システム構築の是非などなど、時間いっぱいまで議論が行われ、広範な領域に検討課題があることが共有されていた。

 それら数多くの課題を踏まえて、リアルなモータースポーツとデジタルモータースポーツはもともと親和性が高いという認識の元で、当部会では「デジタルベースの持続的なモータースポーツ振興」を活動の柱に掲げることを検討することとなり、デジタル基盤の構築や、楽しむ層との接点作り、自立運営できる業界構造作りなどを通じて、”若者のクルマ離れ”といった社会的テーマにも寄与できる活動方針を示すことなどが確認された。

 デジタルモータースポーツの世界は、海外だけではなく、すでに国内でも多くのイベントが行われており、FIAグランツーリスモチャンピオンシップを始め、TOYOTA GAZOO Racingによるe-Motorsports推進活動や、JAF加盟団体となったNGM株式会社が主催するAUTOBACS JeGT GRAND PRIXなど、継続的な大会もスタートしている。また、グランツーリスモSPORTだけではなく、レースシミュレーターとして使用される機器を含めて多数のプラットフォームを持つ業界でもあるため、ルールの整備や統一、機器の認定といった包括的な掌握には、その意義やプレイヤーの反応も含めて広範な議論が必要だ。

 JAFデジタルモータースポーツ部会では、FIAデジタルモータースポーツ委員会との足並みを揃えつつも、日本独自の活動方針を採っていくことも検討されている。デジタルモータースポーツは、先んじてFIAに承認されたドリフト競技に続く、日本発祥の新たなモータースポーツカテゴリーとも言えるもの。今後の整備・成長が大きく期待されている。

新設された「JAFデジタルモータースポーツ部会」を取りまとめる谷本勲部会長。
7名の委員がオンラインで繋がったリモート会議。4時間に及ぶ議論がなされた。
「FIAデジタルモータースポーツ委員会」でも様々な整備や規則制定が行われいる。

フォト/JAFスポーツ編集部 レポート/JAFスポーツ編集部

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