各地から猛者がもてぎに集結、“日本一決定”にふさわしいレースが繰り広げられた
2020年12月23日
年末の恒例イベントである「スーパーFJ&F4日本一決定戦」が、2020年はツインリンクもてぎを舞台に12月6日に開催された。今年はコロナ禍でモータースポーツ全体が大幅なスケジュール変更を強いられたため、シーズンの“締め”にはならなかったものの、それぞれが1年間の集大成とするレースという点では例年どおりであった。
2020 S-FJ&F4日本一決定戦
2020もてぎ・菅生ツーリングカー選手権FIT1.5チャレンジカップ第7戦
開催日:2020年12月5~6日
開催地:ツインリンクもてぎ(栃木県茂木町)
主催:株式会社モビリティランド、M.O.S.C.
FJ1600の時代と合わせると、実に23回目となるスーパーFJの「日本一決定戦」には37台がエントリー。レースは予選~6周の第1レグ~10周のファイナルと、トーナメント形式で競われる。
その予選は前日までの雨が路面に残り、A組ではタイヤ選択が分かれたが、正解だったのはドライタイヤの方。全日本カート選手権OK部門にも参戦し、シーズン半ばからスーパーFJに出場の宮下源都選手がトップで、上野大哲選手と佐藤巧望選手が続いた。
B組は全車がドライタイヤを選択。開始早々に赤旗中断があり、アクシデントに巻き込まれていたのが岡本大地選手だった。2020年の鈴鹿チャンピオンで、岡山、SUGO、もてぎにも遠征して優勝経験を持つ“本命”は、残り10分で左フロントのアームが曲がった状態ながらも復帰。元嶋成弥選手に次ぐ2番手となった。3番手は西村和真選手。
第1レグの頃には路面は完全にドライとなり、A組ではひとり2分3秒台を連発した宮下選手の独走に。その後方では佐藤選手と石坂瑞基選手、上野選手、松澤亮佑選手が2番手を争うも、5周目の3コーナーで佐藤選手が姿勢を乱して後退。そして、最終ラップの90度コーナーで松澤選手が3番手に浮上し、石坂選手に続いてチェッカーを受けた。
「初めてスタートがうまくいきました。ホイールスピンしなかったのが大きかったですね。まだそんなに無理していないので、タイヤは残っていると思います」と宮下選手。
B組ではフロントローに並んだ元嶋選手、岡本選手がともに好スタートを切り、そのまま激しい一騎討ちを繰り広げた。4周目の1コーナーで前に出た岡本選手だったが、次の周のヘアピンで元嶋選手が再逆転、そのまま逃げ切りを果たす。「6周なのに、めっちゃ長くて、耐久レースのように感じました」と元嶋選手は苦笑い。
37台がズラリ並んだファイナルは、まさに壮観の一言。2020年のフォーミュラカーレースとして最多台数となった。第1レグのトータルタイムに勝ったことから、A組がアウト側のグリッドに並んで、ポールポジションについたのは宮下選手。その脇にはB組トップの元嶋選手がつけた。
好スタートを切ったかに見えた元嶋選手だったが、直後のシフトミスで岡本選手と石坂選手の先行を許してしまう。一方、宮下選手は1コーナーにトップで飛び込み、オープニングの1周だけで早くもコンマ6秒の差をつける。その後方は大渋滞。2周目には岡本選手がそこから抜け出し、宮下選手を追いかけるも、差は徐々に広がっていく。3周目のS字では元嶋選手が、石坂選手を抜いて3番手に浮上。
一時は1秒4にまで差を広げた宮下選手だったが、6周目以降は岡本選手と元嶋選手のペースが上回るようになり、徐々に差が詰まってくる。そして、迎えた運命の最終ラップ。
「シフトミスしたわけではなく、なぜか5速に入れる時に失速して」いた宮下選手に、後続のふたりが急接近。4コーナーでまず岡本選手がインを刺し、立ち上がった直後に宮下選手と接触! そして、「絶対トップに立つんだと、僕は右から行こうとしていたら、その直後に2台が寄せ合って、バーンと当たっていて」と元嶋選手がトップに立つ。
宮下選手はその場でストップ。岡本選手はチェッカーを受けたが、32位という結果に終わる。「4回目の日本一だったので、二度あることは三度あるを過ぎていたから、今度こそと思っていましたが、本当に獲れないです……」とレース後に肩を落とした岡本選手。
すでにお気づきのとおり、ウィナーの元嶋選手はGTドライバー元嶋佑弥選手の弟。兄はフォーミュラチャレンジ・ジャパンを戦った後、メーカーのサポートを失うも、スーパーFJで再始動。2012年に日本一決定戦を制したことがきっかけとなり、今日のシートをつかんでいる。
「兄弟で同じレースを勝つことがずっと夢だったので、夢がかなって良かったです。スタートは出足こそ良かったのに、シフトミスして遅れてしまいましたが、諦めずに着いていけたのが一番の勝因だと思います」と語る元嶋選手にも、この勝利がきっかけとなって、ステップアップしていくことが期待される。
宮下選手と岡本選手の脱落で2位は石坂選手、3位は松澤選手が獲得。石坂選手は2012年にスーパーFJを卒業、今年はフォーミュラリージョナルやスーパーフォーミュラ・ライツにスポットで参戦したが、「やっぱりスーパーFJは面白いので、2021年は鈴鹿なのでリベンジします(笑)」と、かなり本気と取れる発言も。そして「最後までミスなく走れたからこそ、この運がついたと思うので、この3位は素直に嬉しいです」と松澤選手。
4位は筑波・富士チャンピオンの伊藤駿選手が獲得。予選でウェットタイヤを履いたことが裏目に出て11番手に甘んじ、ファイナルも6列目からのスタートで、この位置までジャンプアップを果たしていた。
レジェンドクラス優勝は総合9位で、今回も吉田宣弘選手が獲得。「今年初レースで、まったく走っていないんですよ。その割には走れたかなと。楽しめました。今のクルマはもう売却していて、来年は新車でやるので心機一転で。F4も出ながら、FJもやる予定です」と語っていた。
2006年から行われ、今回で15回目となった「F4日本一決定戦」には14台がエントリー。レースは予選~8周のセミファイナル~15周のファイナルという、従来どおりの方式で競われた。
ただひとり選手権シリーズに全戦出場したランキング2位のKAMIKAZE選手は欠場ながら、「いっぱいレースに出たから、もう疲れちゃったので(笑)、若いドライバーにチャンスをあげようと思って」代役に起用した、太田達也選手が主役の座を射止めることとなった。
早朝一番に行われた予選は、前日の雨が路面に残ってセミウェットというべき状態。9台がドライタイヤを装着するも、低い路面温度に発熱が追いつかず。米谷浩選手が4番手につけるに留まった。そして、コンマ04秒差で金井亮忠選手を抑えて、太田選手がポールポジションを獲得する。3番手はハンマー伊澤選手。
「ドライでは絶対無理でした。まだいいタイヤで走っていないので、どうなるか分かりませんが、中古のタイヤではそこそこいいペースで走れていたので、つまらないミスだけしないよう頑張ります」と太田選手。
セミファイナルでは、伊澤選手がフォーメーションラップでスタートできず、オフィシャルによる押しがけでエンジンは始動したが、最後尾スタートを余儀なくされる。スタートを誰より決めたのが金井選手だったが、1コーナーで太田選手の前に出るまでには至らず。
「6周目にちょっとミスって差が詰まりましたが、あとは抜かれない感じで走っていました」という太田選手がトップチェッカー。「無理せず、ファイナルに向けて最終チェックみたいなイメージで走りました」と語る金井選手に続いたのは、今回がF4初レースの石谷豪志選手だった。追い上げた伊澤選手は山本幸彦選手に続く5位でゴール。
ファイナルもセミファイナル同様、トップ争いは一騎討ちになるかと思われたが、なんと金井選手が痛恨のエンジンストール! 大きく遅れてしまうも、1周目のうちに4番手にまで復帰し、2周目には3番手、3周目には2番手に上がる。その時点でトップの太田選手との差は3秒7。しばらくはほぼ等間隔となっていたが、「終盤はきつかったです」と金井選手が語るように、太田選手との差は広がっていった。
そして逃げ切りを果たした太田選手がトップでフィニッシュ! 「日本一決定戦では2位とリタイアしかなく、6年やって4回目。嬉しい、やっと勝てました。今回乗せてくれたKAMIKAZEさん、チームの皆さんに本当に感謝です。この日本一が、今後につながるよう頑張ります!」と笑顔で語っていた。
一方、2位に甘んじた金井選手は「エンジンが止まらなければ、着いていけたかなという感じでしたね。僕も優勝ないんです。“日本二”はたくさんあるんですけど。学生たちが仕上げてくれたクルマが、今まで一番ってくらいだったので、これで勝ちたかったんですけどね」と苦笑いしながら語っていた。
3位は2年ぶりのフォーミュラという石谷選手が獲得し、4位は伊澤選手で、5位が山本選手。そして6位は最後尾スタートからの追い上げで河野靖喜選手がつかんでいた。
もてぎ・SUGOツーリングカー地方選手権とのダブルタイトルである、FIT 1.5チャレンジカップ第7戦は、チャンピオンに王手をかけた中村義彦選手が予選3番手。そして安井亮平選手を挟む格好で、中村選手を唯一逆転できる相原誠司郎選手がポールポジションを獲得。
「ちょっと緊張しました。オーナーさんのご好意で、いつもとは違うクルマに乗ることになったので。チャンピオンとかあまり意識せず、とりあえず気を楽に。スタートをミスらないように確実に行こうと思います」と相原選手。対して、中村選手は「今のところ順調です、無理はしていないので自分の中でマージン取って、無事にゴールできるようにしたいです」と語っていた。
決勝では安井選手がスタートを決めて、トップで1コーナーに飛び込み、これに相原選手、中村選手が続いていく。2周目には後続を振り切り、3台での真剣勝負が繰り広げられることになる。それぞれコンマ差で、まさに息詰まる状態だったが、勝負が決したのは7周目の90度コーナー。相原選手のオーバーランで、一気に安井選手が差を広げたのだ。「後ろばかり気にしていて、前だけに集中していればよかったんですが」と悔やむ相原選手。
安井選手は「FITでは初優勝です。スタートで前に出られたのが、一番の勝因だと思います。でも、前がいなくて走っていたので、あまり実感ないですね、緊張しないで走っていたので」と、正直な胸の内を語っていた。
そして、中村選手は最後コンマ02秒差にまで松尾充晃選手に迫られたものの、3位でフィニッシュしたことでチャンピオンを確定。「先週、鈴鹿の関係ないレースに出たら、クラッシュとかいろいろあったし、みんな応援に来ていてくれたことがあったので、慎重でしたね、はい(笑)。チャンピオンはFITでは初めてです。5年かかりました、やっと!」と安堵の表情で語っていた。
フォト/石原康、はた☆なおゆき レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部
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