サウジアラビア開催のダカールラリー2021、過酷なステージを駆け抜けた日本チームが各部門で好成績を挙げる
2021年1月22日
2021年のダカールラリーが1月3~15日、前回大会に続いてサウジアラビアを舞台に開催。新ルートが採用された今大会にはTOYOTA GAZOO Racingやチームランドクルーザー・トヨタオートボデー(TLC)、日野チームスガワラなど日本の自動車メーカーの支援を受けたチームが参戦。各部門で好成績を挙げた。
ダカールラリー2021
2021 Dakar Rally/43rd Dakar Marathon Cross-Country Rally
開催日:2021年1月3~15日
開催地:サウジアラビア王国(ジェッダ~ビシャ~ワジ・アル・ダワシール~リヤド~アル・カイシュマ~ハイル~サカカ~ネオム~アルウラ~ヤンブ~ジェッダ)
1978年に幕を開けた「ダカールラリー」は2009年~2019年の南米開催を経て、2020年より中東のサウジアラビアへステージを移動した。2021年の大会もサウジアラビアを舞台に伝統の一戦が開催されたものの、そのルートは刷新されており、標高1000m以上の山間地や渓谷、砂丘エリアなど、多彩なシチュエーションが採用されていた。
それだけに2021年の大会でも、ラリー序盤から多くのマシンが転倒やトラブルに祟られるなどサバイバル戦が展開されることとなったが、日本の自動車メーカーの支援を受けるチームが素晴らしいパフォーマンスを披露した。中でも目を見張る躍進を遂げたのが、トヨタ車体が組織するチームランドクルーザー・トヨタオートボデー(TLC)だった。
TLCは1995年よりランドクルーザーでダカールラリーにチャレンジしてきた名門チームで、2020年の大会では市販車部門で1-2フィニッシュを達成して7連覇を達成。その勢いは2021年大会でも衰えることなく、ディーゼル市販車を対象とした四輪T2部門にランドクルーザー200で挑み、日本人ドライバーの三浦昂選手/ローラン・リシトロイシター選手の340号車、そして、今回から加入したロナルド・バソ選手/ジャン・ミッシェル・ポラト選手の345号車ともに素晴らしい走りを披露していた。
しかし、ステージ2では345号車が転倒したほか、ステージ5では前輪を岩場にヒットさせたことにより340号車にパワーステアリングのトラブルが発生。ステージ7およびステージ8では2台ともにパンクを喫するなど様々なハプニングが発生し、今大会の過酷さを見せつけられたが、最終的に2台のランドクルーザーは全ルートを走破した。
この結果、「コロナ禍で実戦の機会は例年に比べて減りましたが、歴史あるTLCのエースドライバーとして常に勝つことを意識して取り組んできました。それだけに13回のダカールラリーで一番うれしい優勝になりました」と三浦選手が語るように、三浦/リシトロイシター組の340号車が総合38位につけるとともにディーゼル市販車の四輪T2部門を制覇。TLCが市販車部門で通算21勝目を獲得するとチーム史上初の8連覇を達成した。
さらにバソ/ポラト組の345号車も総合40位、ディーゼル市販車の四輪T2部門2位につけたことで、ランドクルーザー誕生70周年というメモリアルイヤーにTLCの“ランクル”が市販車部門で1-2フィニッシュを達成した。
一方、日野自動車と日本レーシングマネージメントが共同参戦する日野チームスガワラも、HINO500 Series(日野レンジャー)でトラック部門で躍進した。同チームは1991年に日本の商用車メーカーとして初めて出場して以来、輝かしい実績を残してきた名門で、2021年大会では菅原照仁/染宮弘和/望月裕司組の508号車が1台参戦となっていた。
ステージ1ではパンクとミスコースを演じたほか、ステージ3では砂丘で転倒。リアボディを大きく破損したものの、ドライブトレインには影響が少なかった。これにより大きく後退することとなったが、ステージ4以降は復調。ステージ9でパンクに見舞われたものの、それ以外は大きなアクシデントもなく、8009kmの行程を走破。508号車はトラック部門で総合12位につけ、30大会連続で完走した。そして、排気量10リットル未満クラスでは唯一の完走車両となったが、チーム最多のクラス12連覇を達成した。
菅原選手は「今大会で一番大きな出来事は転倒したことと、その晩に応急修復をして競技を続けられたこと。みんなの頑張りでここまで来ることができました」とコメント。ナビゲーターの染宮選手は「今回のダカールは道が悪くて大変でした。キャブの上下振動で体もダメージを受けましたが大丈夫。ラリーを楽しむことができました」とコメント。ナビゲーターの望月選手は「車両が転倒した際には乗車メカニックとしてエンジン始動や応急措置など仕事ができて良かったです。少人数で大変なこともありましたがいいダカールでした」とコメントした。
そのほか、トヨタ・ハイラックスで2012年からローカルチームのTOYOTA GAZOO Racing サウスアフリカとして活躍してきたが、2020年からは体勢を一新したTOYOTA GAZOO Racing勢も活躍。2021年大会には、ナッサー・アル‐ティヤ/マシュー・ボーメル組を1号車に、ジニエル・ド・ヴィリエール/アレックス・ハロ組、ヘンク・ラテガン/ブレット・カミングス組、シャミア・ヴァリアワ/デニス・マーフィ組の4台体制で挑んだ。
中でも素晴らしい走りを披露したのが、過去に3回の優勝経験を持つアル-アティヤ/ボーメル組の301号車だった。ステージ1こそパンクを喫し、総合10番手に出遅れたが、その後は計5回のベストタイムをマークして猛追。惜しくも総合優勝はステファン・ペテランセル/エドワール・ブランジェ組に譲ることになってしまったが、「ハイラックスとともに4輪駆動車では最高位でフィニッシュできたのは素晴らしい結果です」とアル-アティヤ選手が語るように、アル-アティヤ選手/ボメール選手の301号車が総合2位で表彰台を獲得した。
フォト/TOYOTA GAZOO Racing、トヨタ車体 レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部