2020年最後のWMSCがオンライン形式で開催。2021年F1日本グランプリが10月10日開催で承認された

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2021年1月7日

 FIAは今季4回目の世界モータースポーツ評議会(WMSC)をジュネーブで開催した。FIAのジャン・トッド会長、グラハム・ストーカー副会長を始め、世界各国の評議員らがビデオ会議システムを利用して、2020年としては最後となる会議に参加した。

 2020年最後のFIA世界モータースポーツ評議会(WMSC)では、長時間に渡る会議の末に多くの議題が承認され、その決議事項が12月16日付けでリリースされている。

 まず、FIAフォーミュラ1世界選手権(F1)に関しては2021年のカレンダーが承認され、過去最大の23戦で開催される予定となった。とはいえ、4月25日の第4戦が調整中である他、第5戦バルセロナがプロモーターとの契約締結、第22戦サウジアラビアはサーキットの公認取得を条件とするなど不確定要素も含まれている。

 なお、FIAのドット会長は世界的なパンデミックのなか、17戦を完了したことを祝福するとともに、F1会長かつCEOのチェイス・キャリー氏の多大な貢献について感謝を述べた。キャリー氏は2020年末に執行権を持たない会長に就任する予定で、ステファノ・ドメニカリ氏が新しいCEOに就任する予定となっている。

 ちなみに、2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で開催を見合わせたF1日本グランプリは、2021年は10月10日に第18戦として鈴鹿サーキットで開催される予定だ。

 FIA世界ラリー選手権(WRC)に関しても、選手権規定の変更が承認された。まず、それまでドライバーに与えられていたパワーステージでのボーナスポイントが、マニュファクチャラーにも付与されることになった。上位5位でフィニッシュしたドライバーのうち2名がポイントを獲得可能となり、マニュファクチャラーズ選手権のバトルに新しい要素が追加されることとなった。

 また、2021年よりピレリがタイヤのシングルサプライヤーになったことで、FIAは各マニュファクチャラーに認めるテスト日数として9日間を追加した。

 WRC2についても、参加要件明確化のためいくつかの規定が変更された。具体的には、WRC2に参加するチームは第5戦終了時までにノミネートすることが必要になり、チームのポイント獲得には、2台体制で、欧州圏外の1戦を含めて最低7戦の出場を義務化した。ポイント加算の対象大会はノミネート制で、7戦中6戦の有効でタイトルが争われ、ドライバーはプライオリティ2として、ポイント外の大会に参戦できるようになっている。

 ちなみにWRCでのパワーステージの成功を受けて、WRC2およびWRC3でもこのフォーマットを採用する。WRC3はCOVID-19以前の規制に戻すことを前提に、開催数を全5戦から全7戦に戻して、5戦の有効システムを採用。パンデミックで変更されていたジュニアWRCの開催数も全4戦から全5戦に戻される予定となっている。

 2021年のWRCは、すでに第2戦スウェーデンの中止が発表されているが、FIAはWRCの価値を確保するために、少なくとも当初のカレンダーの半分を開催しなければならないと明文化した。さらにWRC2、WRC3などのサポート選手権も、当初の予定から減少する場合は、参加の最少人数と大会数の調整を図る可能性があることも加えられた。

 FIA世界耐久選手権(WEC)に関しても、今回のWMSCでは多くのことが決定している。それらの中で最大の変更点は、シンプルな予選フォーマットが復活したことだろう。

 これまでは、2名のドライバーの合計タイムで争われていたが、そのフォーマットを廃して、1台の車両につき1名のドライバーのベストタイムでグリッドを決定する方式に改まる。ハイパーカーとLMP2クラス、LM GTEの二つのグループに分かれて、各10分間の予選セッションが行われる予定だ。

 また、LMP2チームに課せられた、少なくとも1名のシルバーまたはブロンズドライバーの起用、という条件には変更がないものの、ブロンズドライバーを要したチームには、新たな特定のカテゴリーが与えられることも新たな要素となった。

 さらに、2021年にはルマン・ハイパーカー・カテゴリーが導入されることから、シーズン前およびシーズン中のテスト機会が増加する予定で、LMP2およびLM GTE Amクラスもテストマイレージが追加されるようだ。

 その他、継続的に取り組んでいるコスト削減の一環として、ハイパーカー参戦チームの運営スタッフを40名、ハイブリッドシステム搭載車の場合は43名に制限(ル・マン24時間レースを除く)したほか、ル・マン24時間レースも2週間ではなく、10日間に日数を短縮。車検とプレ・レースチェックはレースウィークの前週の金曜と土曜に行われ、前週の日曜のテストデーはル・マン24時間レースと兼ねてカウントされることとなった。

 FIA世界ツーリングカーカップ(WTCR)に関しても競技規則が変更されており、これまでは1大会に3レースが構成されていたが、2回のフリープラクティス、1回の予選、2回のレースという新しいフォーマットを採用することも注目のポイントと言えるだろう。

 そして、WTCRではルーキードライバータイトルをジュニアドライバータイトルに変更し、2021年には最低3戦の出場義務を課した女性ドライバーズタイトルも新設した。2020年のTCRジャパンシリーズでもDrago CORSEの下野璃央選手が素晴らしい活躍を見せただけに、WTCRの女性ドライバータイトルも見逃せないポイントとなるだろう。

 今回のWMSCでは、FIAリージョナルラリー選手権のカレンダーも発表され、FIAアジア・パシフィックラリー選手権(APRC)の2021年の概要が明らかとなった。

 2021年は、アジアカップが2月4~7日の開幕戦ラリー・オブ・嬬恋を皮切りに、3月26~28日の第2戦南インド・ラリー、9月10~12日の第3戦ラリー北海道、10月22~24日の第4戦ラリー・ロンユウといった、日本の2大会を含めた計4戦で開催予定。

 パシフィックカップはニュージーランドを舞台にした4月16~18日の第1戦ラリー・オタゴ、5月14~16日の第2戦ラリー・ワンガレイ、オーストラリアを舞台にした10月15~17日の第3戦アデレード・ヒルズ・ラリー、11月20~21日の第4戦コフスハーバー・ラリーの計4戦で争われる予定で、コフスハーバー・ラリーが、APRCとしてのファイナルとなり、アジアカップ、パシフィックカップの上位ランカーで争われる予定となった。

 なお、リージョナルラリー選手権が4戦以下で争われる場合は、開催された全ての競技結果がタイトル争いに考慮されるほか、コスト削減のために距離を短くするなど、パンデミックの状況によるラリーのコンパクト化が認められている。

 各種FIA委員会による決議事項についても明らかとされたが、FIAシングルシーター委員会では、FIA-F2、FIA-F3の技術規定の変更が承認され、選手権規定もF1との整合を図っていく予定。同時にコスト削減の観点から時間を制約する予定で、FIA-F2とFIA-F3の同一レースウィークでの開催が見送られるようだ。

 また、FIA GT委員会では、新クラス車両である「エレクトリックGT」の技術規定が認められた。これにより、WMSCメンバーは2021年以降の開催に向けて「FIAエレクトリックGT競技会」の最新情報を収集する。同様にFIAツーリングカー委員会も2021年以降の開催に向けて「エレクトリックツーリングカー競技会」を推進するための最新情報を収集するなど、電動車によるFIA公認モータースポーツ開催の整備が着実に進められている。

 FIAエレクトリックおよび新エネルギー委員会でも2021年のモータースポーツカレンダーが承認されており、2021年のEラリー・レギュラリティカップは欧州を中心に全8戦で開催予定。また、鈴鹿サーキットで開催されているソーラーカーレース鈴鹿も2021年7月30~31日の開催が承認されたが、既報の通り「技術が進化し、代替エネルギーのトレンドの変化する中、ソーラーカーレースがこれまで担ってきた役割を果たしたと判断した」ことにより、2021年の開催をもってソーラーカーレース鈴鹿は幕を閉じる予定となった。

 FIAドリフト委員会では、FIA公認ドリフト競技の世界大会「インターコンチネンタル・ドリフティング・カップ」に関する決定があった。これまで、FISCOクラブと株式会社サンプロスの主催により、東京・台場と筑波サーキットで過去3回開催され、2020年は開催が見送られたが、ロシアのドリフトシリーズ「RDS」を主催するロシアンドリフトシリーズLLCが3年間に渡ってプロモーターを務めることが承認された。同時に最初の大会がラトビアのリガで開催されることも計画されている。

 なお、今回のWMSCではFIA委員会のメンバー改選も行われており、FIAシングルシーター委員会では、F1でCEOを務める予定のステファノ・ドメリカリ氏に代わって、ロバート・ファーンリー氏が委員長に就任する。FIAウィメン・イン・モータースポーツ委員会ではミシェル・ムートン氏が引き続き委員長を務め、FIAドリフト委員会でも引き続き、飯田章氏が日本人唯一のFIA委員会の代表を務めることが決定している。

 FIAメディカル委員会では、ジェラール・サイヤン教授がFIAメディカル委員会代表の勇退を承認。サイヤン教授はCOVID-19に対する医療プロトコルを調整し、F1が再開することを可能にした人物で、彼の強力なリーダーシップに対して特別な賛辞が贈られた。サイヤン教授は引き続きメディカル委員会の顧問を務める予定となっている。

 サイヤン教授の後任には現副委員長のディノ・アルトマン博士が就任し、イアン・ロバーツ博士が副委員長に就任する。ちなみに、FIAは世界アンチ・ドービンング機関の指導のもと、2021年1月1日に発効されるドーピング防止規則を採用することとなっている。

 また今回のWMSCでは、FIA国際モータースポーツ競技規則付則S項の「COVID-19行動規則」においてFIAインナーナショナルシリーズを適用除外することも決定している。

フォト/JAFスポーツ編集部 レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部

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