“天空のタイムトライアル”が、快晴の高知県大豊町で開催!

レポート ヒルクライム

2020年12月28日

約3kmのアップヒルを全開で攻め抜くヒルクライムが、去る11月29日、高知県北部の大豊町の特設コースを舞台に開催された。

おおとよヒルクライム2020
開催日: 2020年11月29日
開催場所: 高知県大豊町
主催: TSURUGI、OWL

 ヒルクライムは、その言葉通り、上り勾配のコースをひたすら駆け上がるモータースポーツだ。米国の独立記念日に開催される「パイクスピークヒルクライム」が有名だが、パイクスがすでに100年を超える歴史を持つことからも知れるように、海外ではモータースポーツの一カテゴリーとして認知されている。

 おおとよヒルクライムは、2017年に初めて開催された。その年、同地を拠点に開催が予定されていたラリー競技が台風のためにSSとして用意されていた林道が使えず、中止となったために、前年のラリーでSSとして使用された今回のコースを使って、代替イベントとして行われたのが、きっかけだ。

 おおとよヒルクライムのコースは、高知県大豊町の標高750mの高地にあるアウトドアレジャー施設、「ゆとりすとパークおおとよ」へ至る片側1車線の公道を使用する。昨年は、ゆとりすとパークからさらに上に向かって伸びる林道風の道をコースとしたが、今年はスタートからゴールまで隈なくセンターラインが確保された、スカイラインと呼ぶにふさわしいロケーションに恵まれたコースに再び戻った。

 今年で4回目を数える同大会だが、今回は初めてJAFが昨年、新たに制定した「スピード競技開催規定 細則: ヒルクライム競技開催要項」に従って行われた。クローズドされたコースでのタイムトライアルを行うヒルクライムは、カテゴリー上はジムカーナ、ダートトライアル、ドリフトと同様のスピード競技という位置付けになる。ただし、コースをチェックできるポストにオフィシャルが配置され、ほぼ全周をチェックできるジムカーナやダートトライアルとは違い、ヒルクライムはラリー同様、一般の公道を使用するため、競技車の動きをすべて把握することが難しい。このため、新しく制定されたヒルクライム開催要項では、ラリーに準じる安全面の対応を求めている。今回は3.2kmのコース内に競技車両の通過をチェックするラジオポイントが4か所設けられ、不測のアクシデントにも対応できる体制を整えた上で競技が開催された。

 競技当日、ゆとりすとパークの駐車場に集合した参加者達は、一旦、先導車に従ってスタート付近まで下りてコースを覚えることを目的とした試走を行った後に2本の決勝トライに臨んだ。順位は2本の内のベストタイムではなく、2本の合計タイムで競われる形が採られた。90名の参加者が7つのクラスに分かれて、タイムアタックに臨んだ。

 今回最大の激戦区となったのは1,500cc~3,000ccの車両を対象としたBクラスで、28台が参加した。優勝は2本ともベストタイムを叩き出した高知在住の川村嘉伸選手。CR-Xをドライブして叩き出した3分41秒24の合計タイムは総合でも2番手に入る好タイム。全日本ラリー選手権で活躍中の若手、大竹直生選手の86の前に昨年は涙を呑んだ川村選手が、今年は2年ぶりに首位を奪還した。

 1,500cc以下の車両が対象のAクラスも、参加18台と盛り上がった。第1ヒートは昨年、このクラスで優勝を飾った香川在住の寒川耕輔選手のシティがトップに立つが、0.26秒差でロードスターの矢野伸一選手がつけ、勝負は第2ヒートで決着がつけられることに。しかし第2ヒートで3秒、タイムを詰めた寒川選手に対し、矢野選手は1.2秒のタイムアップに留まり、寒川選手が2年連続で優勝をさらった。

 総合ベストを巡る戦いが展開されたのは、ナンバーを持たない改造車両が集ったDクラス。第1回以来の参戦となった田口勝彦選手が、全日本ダートトライアル選手権を戦っているモンスターマシンのフィエスタでエントリーしてきた。試走でコ・ドライバーを乗せてペースノートを作った田口選手は、本番でも豪快な全開走行を見せて、2本合計で3分24秒67という驚異的なタイムを叩き出して、文句なしの総合優勝を飾った。

 今回のヒルクライムのために敢えて製作した舗装用のサスペンションを装着して走った田口選手は「ダートラでは体験できなかった、フィエスタというクルマの新たな動きを知ることができて楽しかったです」とヒルクライムの楽しさを満喫した様子。「カテゴリーの枠を超えて色んなクルマが出られるのが、ヒルクライムのいい所ですね。多分、これから発展していく競技だと思います。今回はS(セミレーシング)タイヤを履いて走りましたが、ラリータイヤでも十分に楽しく走れると思うので、ダートラやラリーの人も参加してほしいですね。また観戦しても楽しい競技なので、見せる工夫を皆でもっと考えていけば、集客力のあるイベントにできると思います」と、今後に期待を寄せていた。

ゴール付近からコースを望む。標高750mとあって、雲海が眼下に広がる。
高地ゆえの眺望に優れた、ゆとりすとパークおおとよは、『風とあそぶ』をテーマに、フラワーガーデンやキャンプ場などを兼ね備えた、大豊町を代表するアウトドア・レジャーランドだ。
当日は新型コロナウイルス感染防止対策が徹底された上での開催となった。
当日は競技車はもちろん、ヒストリックカー、スーパーカーも揃い、バラエティに富んた車種による大会となった。
JAF準国内格式で開催された今回の大会は、車検やドライバーズミーティングでのスタートシグナルの周知徹底等、公認競技会としての手順を踏まえた進行によって行われた。
ゴール直前のコーナーを望む場所にギャラリー席が設けられ、観戦に訪れた人々は迫力の走りを楽しんだ。
センターラインも確保され、ロケーションにも優れた走りやすいスカイラインがコースとなった。
Kクラスはミラバンをドライブした山岡道信選手が快勝した。
Kクラス入賞の各選手。
Aクラスは第1ヒートで僅差ながらトップに立った寒川耕輔選手が、第2ヒートでライバルを突き離して優勝。
Aクラス入賞の各選手。
Bクラスはこの大会の常連の一人、川村嘉伸選手が2本ともベストを奪って快勝した。
Bクラス入賞の各選手。
Cクラスはアクセラターボで参戦の添木祐介選手が、JAF四国ジムカーナ選手権で活躍中の佐伯希選手のランサー・エボXを0.17秒という僅差で抑えて優勝した。
Cクラス入賞の各選手。
Dクラスは全日本ダートトライアル選手権を戦うフィエスタを持ち込んだ田口勝彦選手が快勝した。
Dクラス入賞の各選手。九州から遠征の岩下幸広選手と江川博選手が2~3位に入り、このクラスは全日本ダートラのドライバーが表彰台を独占。
L(レジェンドカー)クラスは初代S30型のフェアレディZをドライブした坂上弘選手が優勝した。
Lクラス入賞の各選手。
S(スーパーカー)クラスは、フェラーリFF(“フェラーリ・フォー”)を駆った石井秀和選手が優勝を飾った。
Sクラス入賞の各選手。
Aクラスで2年連続優勝の寒川耕輔選手は香川在住。普段は地元の阿讃サーキットや広島のTSタカタサーキットをシティで走り込んでいる。「もうクルマはショックがヘタっているので、大きなギャップでは跳ねて怖かったです(笑)。去年とは違うコースだったので、試走では危ないコーナーをまずしっかり覚えて、1本目は、2本目に繋がるように要所をチェックしながら走りました。ヒルクライムはやっぱり、こうやって一日かけてコースを攻略していく、というのが楽しい競技ですね」。
Cクラスは阿讃サーキットを走り込んでいるという徳島在住の添木祐介選手のアクセラターボが優勝した。「公認競技は一度だけダートトライアルに出たことがあります。ここのヒルクライムは2度目ですが、前回は3位だったのでリベンジできて嬉しいです(笑)。1本目は様子見で走りましたが、行き過ぎた所や逆にブレーキが早過ぎた所などを2本目で思い出して、ギクシャクしないように走ったのが良かったと思います。また路面の凹凸の走り方もタイムに影響するので、その辺も気を付けましたね。街乗りのクルマで、使い古したタイヤでも結構、勝負できるというのが、このヒルクライムのいい所だと思います」
総合優勝を飾った田口勝彦選手は、「公道を走ることは想定していないハイパワーのマシンなので、当初はペースノートがないと危なくて走れないと思ったんですが、今回はコ・ドライバーを乗せていいという規定があったので助かりました」と振り返った。ノート走行でアタックするという形が、今後はヒルクライムのスピードを追求するひとつのスタンダードになるかもしれない。

フォト/山口貴利、JAFスポーツ編集部 レポート/JAFスポーツ編集部

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