ルーキーたちが躍進! 第9戦は遠藤照剛選手、第10戦は荒尾創大選手が優勝!!

レポート カート

2020年12月22日

全日本カート選手権2020シリーズ最後の大会となるOK部門第9戦/第10戦が鈴鹿サーキット国際南コースで行われ、第9戦ではラスト3周の波乱でルーキーの遠藤照剛選手(Croc Promotion)が初優勝。第10戦では、やはりルーキーの荒尾創大選手(BirelART RAGNO Racing)が今季2勝目を飾った。

2020年JAF全日本カート選手権OK部門 第9戦/第10戦
開催日:2020年12月12~13日
開催地:鈴鹿サーキット国際南コース(三重県鈴鹿市)
主催:株式会社モビリティランド、SMSC

 新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、7月開幕という異例の事態になった2020年度のOK部門。5か月の間に5大会・10戦を駆け足で行い、いよいよ鈴鹿でシリーズ最後の大会を迎えた。最終戦が12月という遅い時期にずれ込むのも異例のことだ。

 一般来場者の観戦エリアは、密集を避けるためメインストレート前のスタンドとコース外周路の一部に限られたのだが、2020シリーズを締めくくる一戦とあって、多くの応援・観戦客が国際南コースを訪れ、熱心にレースの行方を見つめていた。

 また決勝日には、前大会ですでにOK部門の戴冠を確定させている渡会太一選手(DragoCorse)のチャンピオン表彰が昼休みに、他4部門のチャンピオン表彰が決勝終了後に行われ、会場は華やかな祝福ムードに包まれていた。

前戦もてぎ大会でシリーズチャンピオンを確定させた渡会太一選手には、四輪へのステップアップをサポートするスカラシップが贈呈された。
パドックの一角には日本フォーミュラ・フォー協会が、カートからのステップアップカテゴリーとしてJAF-F4のマシンを日替わりで展示し、代表取締役社長の福永亜希子氏や佐藤蓮選手がPRを行った。
佐藤選手からJAF-F4の特性の説明を受けて、興味津々の様子でマシンに乗り込む渡会選手。
鈴鹿大会には脇坂寿一氏や道上龍氏らも訪れた。この最終戦がいかに注目されたかがうかがえる。
鈴鹿サーキットで開催されるレースやイベントで華を添える鈴鹿サーキットクイーン。1979年から続く歴史あるイメージガールは、惜しまれつつも2020年シーズンの42期生をもってその活動が中止となった。

 大会の進行は、今回も土曜日に公式予選と呼ばれるタイムトライアルと第9戦の予選が、日曜日に第9戦の決勝と第10戦の予選・決勝が行われる運びだ。

 12月半ばとは思えない暖かさに包まれた土曜日。参加全29台をふたつのグループに分けて実施されたタイムトライアルでは、最年少14歳の荒尾選手が第2グループでひとり飛び抜けたタイムをマークしてトップに。2~6番手には第1グループ出走の選手が並び、渡会選手が2番手、佐藤凌音選手(INTREPID

APAN CORSE)が3番手となった。

 トップ3はブリヂストン・ユーザーが占拠。ダンロップ勢では大健闘の野村勇斗選手(EXGEL with MASUDA RACING)が4番手に食い込み、ヨコハマ勢では森山冬星選手(KR HIROTEX)の25番手が最上位だった。

 冬の太陽が1コーナー方向へと大きく傾いた16時前、第9戦の予選が始まった。12周のレースは、まだ予選だというのにヒートアップ。先頭は渡会選手から佐藤選手、再び渡会選手、佐々木大樹選手(TONYKART RACING TEAM JAPAN)へと入れ替わり、最後は渡会選手と荒尾選手がほぼ横並びでゴール。

 渡会選手が0.021秒差のトップで決勝のポールを獲得した。2番手荒尾選手の真後ろで、3番手の佐々木大樹選手と4番手の平安山良馬選手(Team EMATY)も鼻の差のゴール。ブリヂストン勢のトップ争いに独り果敢に食い込んだ野村選手が5番手、佐藤選手が6番手となった。

 一夜明けて、大会最終日の日曜日。サーキットには前日と打って変わって凍えるような寒風が吹きつけている。この日の最初のヒートとして行われた第9戦の決勝。24周の戦いには、意外性に満ちた展開が待っていた。

 スタートでは佐々木大樹選手が一閃、フロントローの2台をかわしてトップを奪い、平安山選手、荒尾選手、渡会選手、遠藤選手がそれに続いて先頭集団を形成。終盤には佐々木大樹選手の弟、大河選手(TEAM WOLF)も14番グリッドからの猛追でここに加わり、優勝争いはぐんぐん熱を帯びていった。

 レースが残り3分の1となった17周目、先頭は第8戦のウィナー荒尾選手に。新チャンピオン就任のお披露目レースとなる渡会選手がゴールに向けて順位を上げ、その真後ろに迫る。そして残り3周のストレートエンドで、渡会選手が勝負を仕掛けた。だが、両者のラインは交錯、2コーナー立ち上がりで2台そろって大きくラインをはらませた。

 その脇をするすると抜けてトップに立ったのが遠藤選手。突然のハプニングに失速した後続の群れを1秒以上後方に従えて残り3周を走り切った遠藤選手は、何度も右拳を握りしめながらチェッカーをくぐった。

 遠藤選手はローカルレースの上級カテゴリーに最強王者として君臨し、日本代表としてワンメイクレースの世界大会に出場した22歳。OK部門どころか日本カート選手権自体の参戦が今年初めてだった。そんな異色のルーキーのドラマチックな初優勝に、チームメイトたちは大興奮。車検場に戻ってきた遠藤選手を、拍手と抱擁で出迎えた。

 2番手でコントロールラインを通過した渡会選手は、進路妨害による10秒のペナルティを受けて10位に降格。さらに、それに続いてゴールした平安山選手と佐々木大河選手にも、フロントフェアリングのペナルティが。表彰台には5番手ゴールの荒尾選手が2位、6番手ゴールの佐々木大樹選手が3位で登壇した。4位は13番グリッドから飛躍のルーキー清水啓伸選手(DragoCorse)だ。

シーズン前からローカルレースで培ってきた実力に注目が集まった遠藤照剛選手が、ついに第9戦で優勝を果たした。
「(荒尾選手と渡会選手が失速した)2コーナーを立ち上がった時は、思わず「ヨッシャー!」って叫んじゃいました。そこからはエンジンが焼けないよう祈りながら、複雑な思いで走りました。やっと勝てて本当にうれしいです。まだ第10戦も残っているけれど、正直この気分のまま帰りたいです」と笑顔で優勝の喜びを語った遠藤選手。
第9戦の表彰式。左から2位の荒尾創大選手、1位の遠藤選手、3位の佐々木大樹選手。

 この日の波乱は、第10戦になっても続く。予選のスタートに向かうローリング中、佐々木大樹選手がピットロードに入ってスタートを切ることなく戦線離脱。さらに渡会選手も、スタートで先頭に立った直後にコースアウトを喫しリタイアしてしまった。

 予選をトップで終えて決勝のポールとなったのは佐藤選手だ。そこにダンロップを履いてひとりブリヂストン勢に斬り込む活躍で評価急上昇の野村選手と、前回のもてぎ大会でブレイクの気配を見せた大宮賢人選手(INTREPID JAPAN CORSE)が続き、若きルーキーが2・3番手に着けた。

 そして、2020年最後のレースとなる第10戦決勝がスタート。好発進を決めた野村選手から大宮選手、平安山選手とトップの座が引き継がれた後、残り5周で6番グリッドからスタートの荒尾選手が先頭に躍り出た。その背中に急接近してきたのが、渡会選手。ほぼ新品のタイヤのパフォーマンスにも後押しされて28番グリッドから猛挽回を続け、いよいよ2番手に上がってきたのだ。最終ラップ、渡会選手は荒尾選手を射程距離に捕らえてコントロールラインを通過した。

 だがその直後、1コーナー手前で渡会選手は突然失速。コース外にマシンを停め、天を仰いだ。エンジンの焼き付きだった。勝者は荒尾選手。シリーズ終盤の2勝でランキングを3位に押し上げてルーキーイヤーを終えた。第2集団の激闘を抜けて2番手でゴールした佐々木大河選手には、またも無念のフロントフェアリング・ペナルティが。これで9番グリッドの遠藤選手が2位を獲得、平安山選手が3位入賞で今季4度目の表彰台登壇を果たした。

 4位は11番グリッドから7ポジションアップの金子修選手(TEAM WOLF)。大宮選手はファステストラップをマークして5位でフィニッシュ。ディフェンディングチャンピオンの佐々木大樹選手は6位に留まるも、セッティングに悩み続けた苦しいシーズンをランキング2位でまとめてみせた。

2勝目を挙げた荒尾創大選手。シーズン前半は苦戦を強いられたが、後半は徐々に表彰台を獲得し始め、ルーキーイヤーながら大活躍した選手だ。
第10戦を制した荒尾選手は「序盤から前が詰まってなかなか順位を上げられなくて、平安山選手にもトップに出られてちょっと焦ったけれど、そこから気持ちを切り替えて行きました。終盤は平安山選手に渡会選手を止めてもらいたかったけれど、バトルになったら自分の方が上だと思ってレースしました」と最終戦を振り返った。
第10戦の表彰式。左から2位の遠藤選手、1位の荒尾選手、3位の平安山良馬選手。
シリーズチャンピオンの渡会太一選手。「カートが好きなのでこれからも続けていきたい」と熱く語った。
ランキング2位は2019年チャンピオンの佐々木大樹選手。マシンのセッティングに悩まされたシーズンとなった。
ランキング3位は昨年FS-125部門からステップアップしてきた荒尾選手。大躍進の1年だったと言えよう。
ランキング4位はステップアップ組でルーキーの平安山良馬選手。成長著しい若手選手のひとりだ。
ランキング5位は遠藤選手。この鈴鹿大会で優勝を含めた2戦連続の表彰台獲得でポイントを荒稼ぎ。
ランキング6位は宮下源都選手。今シーズンは表彰台獲得こそ叶わなかったが、少しずつ頭角を現したドライバーだ。

フォト/遠藤樹弥、小竹充、JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

ページ
トップへ