TOYOTA GAZOO Racingセバスチャン・オジェ選手が通算7度目の王者に! 勝田貴元選手は最終SSで初のベストタイムを奪取!!

レポート ラリー

2020年12月8日

今シーズンは全7戦へと短縮されたFIA世界ラリー選手権。伝統のラリー・モンツァが急遽最終戦に加えられることになった。しかし、当日は降雪を伴う悪天候に見舞われ、優勝争いと選手権争いは混迷を極め、ラリー最終日まで勝負の行方が見えない展開となった。

2020年FIA世界ラリー選手権(WRC)第7戦 ラリー・モンツァ
2020 FIA World Rally Championship Round 7 Rally Monza

開催日:2020年12月3~6日
開催地:モンツァ・サーキット周辺(イタリア・ミラノ)

 2020年のFIA世界ラリー選手権(WRC)もついに最終戦を迎え、12月3日~6日、イタリア・ミラノ近郊で、シリーズ最終戦となる第7戦「ラリー・モンツァ」が開催された。悪天候に見舞われた同大会では、TOYOTA GAZOO RacingでヤリスWRCを駆るセバスチャン・オジェ選手が今季2勝目を挙げ、7度目となるドライバーズタイトルを獲得した。

 そして、日本人ドライバーとして注目を集める勝田貴元選手も、ヤリスWRCで素晴らしいパフォーマンスを披露。SS1でデイリタイアを喫したが、再出走後は好タイムを連発。最終ステージではWRCキャリア初となるステージベストをマークしてみせた。

 今季のWRCは新型コロナウイルス感染症の影響により、不開催期間を挟んだ全7戦という変則的なカレンダーとなった。本来なら今年の最終戦はWRC日本ラウンドとなるはずだったが、最終戦の舞台は、1978年にスタートした「ラリー・モンツァ」に変更。モンツァ・サーキットの敷地内や、ベルガモ北部の山岳エリアにターマックおよびグラベルステージが設定された。

 WRCの気になるタイトル争いは、第2戦スウェーデンおよび第5戦トルコを制したTOYOTA GAZOO Racingのエルフィン・エバンス選手がドライバー選手権をリードし、第3戦メキシコを制したオジェ選手が14ポイント差のランキング2位で追走していた。一方、マニュファクチャラー選手権はヒュンダイWRTが首位を走り、TOYOTA GAZOO Racingは7ポイント差の2位につけていた。

 今ラリーで幸先の良いスタートを切ったのはトヨタのオジェ選手。12月3日、モンツァ・サーキットの敷地内を舞台にしたSS1でいきなりベストタイムをマークした。

 4日のデイ2もモンツァ・サーキットの特設ステージを舞台となったが、ここで素晴らしいパフォーマンスを見せたのが、ヒュンダイi20クーペWRCを駆るダニエル・ソルド選手。豪雨に見舞われながらも2度のSSウィンを獲得してデイ2をトップフィニッシュした。

 フォード・フィエスタを駆るMスポーツのエサペッカ・ラッピ選手は、SS3でベストタイムをマークして1秒差の2番手で続き、オジェ選手はトップから4.3秒差の3番手、ランキング首位のエバンス選手は、トップから9.4秒差の4番手でデイ2を走破した。

 5日のデイ3はベルガモ北部の山岳地帯が舞台で、朝から雨に祟られたほか、標高の高い部分では積雪と残雪に覆われるなど過酷なコンディションに見舞われた。そのため、トヨタのカッレ・ロバンペッラ選手がSS7でスピンを喫し、総合3番手まで浮上していたエバンス選手もSS11でコースアウト。エバンス選手はデイリタイアにより2020年ドライバータイトルが絶望的になるなど、悪天候と最終戦に翻弄されたハプニングが続出した。

 そんな状況でも安定した走りを披露したのはオジェ選手。SS7でのベストタイムをはじめ好タイムを連発し、総合首位でデイ3をフィニッシュ。ソルド選手が17.8秒差の2番手につけ、ヒュンダイのオイット・タナック選手が22.1秒差の3番手につけていた。

 結局、オジェ選手は6日のデイ4でも好調で、オープニングのSS14でベストタイムをマークしつつも危なげなくラリーをフィニッシュ。今季2勝目を獲得した。

 オジェ選手は「このラリーで勝つことだけを考えていました。路面が荒れていたので、ミスをしないように走りました。とてもいい1日で、信じられないような週末でした。私が獲得した7回目のタイトルはチームが成し遂げたものであり、彼らなしでは実現できなかったと感謝しています」と語るように、7回目のWRCドライバーズタイトルを獲得した。

の快挙にトヨタ自動車の豊田章男社長は「セバスチャン、最終戦モンツァの優勝、そしてシーズンチャンピオン獲得おめでとう」と祝辞を贈っている。

 なお、チームメイトのロバンペッラ選手が5位に終わったほか、タナック選手が2位、ソルド選手が3位につけたことで、ヒュンダイがマニュファクチャラー選手権でタイトルを獲得。TOYOTA GAZOO Racingは2位に留まり、タイトル奪還は果たせなかった。

 一方、TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムにより、今大会には勝田貴元選手が4台目のヤリスWRCで最終戦にチャレンジしていた。

 しかし、オープニングのSS1でいきなりコースオフ。コンクリートバリアに接触してデイリタイアするなど、ラリー序盤から厳しい立ち上がりを演じていた。

 しかし、デイ2で再出走を果たすと、SS6では2番手タイムをマークしたほか、デイ3のSS13でも2番手タイムをマークするなど好タイムを連発。さらにデイ4では、ボーナスポイントを得られる最終パワーステージのSS16で、キャリア初のベストタイムをマーク。ミックス路面に悪天候という難しいラリーを、会心の走りで終えることができた。

「木曜日にミスをしてしまった後は、いい仕事ができたと思います。特にパワーステージでベストタイムを出すことができて、本当に良かったです。自分はまだまだ上達していますし、成長も続いているので、来年はさらにスピードを高め、結果を残したいと思います」と語る勝田選手。2021年の動向には注目だ。

ドライバー選手権とマニュファクチャラー選手権が決まる最終戦の地・モンツァ。しかし、レースウィークは積雪や降雨に悩まされる、何が起きるか分からない状況となった。
ミックス路面を舗装仕様で走る状況に悪天候が追い撃ちをかけた今大会。脱落者が続出する中で、セバスチャン・オジェ/ジュリアン・イングラシア組が最終戦を制した。
オジェ選手は自身7度目のドライバーズタイトルを確定。トミ・マキネン氏がチーム代表として関わる最後のシーズンである今季、マニュファクチャラー選手権は2位で終えた。
エルフィン・エバンス選手は自身初のWRCタイトル獲得のチャンスにポイントリーダーとして臨んだが、降雪路となったSS11でコースオフ。デイリタイアに終わってしまった。
TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムで参戦する勝田貴元選手。シーズン最後のチャレンジに期待が集まったが、木曜のデイ1でいきなり脱落の憂き目に遭う。
復活した勝田選手は最終日も好調を維持。SS14では4番手タイムを計測し、最終SS16パワーステージでは、WRCでは初となるベストタイムを奪取。大きな5ポイントを獲得した。

フォト/TOYOTA GAZOO Racing レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部

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