11月5日にJAFが「基本的な感染対策のあり方の例」第3版を公開。すべての競技会来場者を対象とした「グループ/プロファイル」導入等の対策例が加わる

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2020年11月25日

JAFは「モータースポーツ参加者・関係者さまへ」と題した「競技会開催に係る新型コロナウイルス感染防止対策のお願い(2020年11月5日版)」を発表。JAFメディカル部会の助言に基づく「基本的な感染対策のあり方の例」の最新版「Ver.3」も併せて発表した。

 国内モータースポーツの参加者や関係者を対象とした「基本的な感染対策のあり方の例」は、すでに5月27日に第1版、7月21日にVer.2が発表されている。

 11月5日に発表されたVer.3は、大枠の内容はそのままに、FIAが発表した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大防止の新規則、FIA国際モータースポーツ競技規則(ISC)付則S項で示された「グループ」や「プロファイル」の概念、いわゆる「ソーシャルバブル」の考え方が導入された。

 このソーシャルバブルという考え方は、すでに欧米のプロスポーツなどで導入されているものだが、FIA ISCの付則S項によれば、モータースポーツイベントすべての来場者をグループに分け、対人接触はそのグループ内に留めることで感染のリスクと拡大をそのグループ内に留めることで拡大を防ぐという概念だ。今回の追記部分を簡単に紹介しよう。

 基本的な感染対策のあり方の例Ver.3によると、まず、すべての来場者に対して「グループ」を構成し、グループ間の接触を回避するためのイベント設計が明確に求められるようになった。これは来場者を例外なく以下の各グループに分類することから始まる。

 グループは「選手、参加者、チーム、メカニック、メディア、オフィシャル、役員、観客、来賓、その他」などが例示されており、これらのグループがイベント準備から撤収、事後に至るまで、グループをまたがる接触を回避するためのイベント計画をする必要があるとされている。接触の回避については、それぞれのグループに対し固有の動線を設定する必要もあると明言されている。

 Ver.3において最も注目すべき点は、新たに追加された「5 競技会に係るプロトコルの例(FIA付則S項等に基づく)」という項目だろう。これは文書全体の20%にも及ぶボリュームがあり、イベント計画の根幹に関わる内容も含まれている。新たに「プロファイル」という概念も示されており、これはすべての来場者を立ち入るエリアで分類し、相互の交流・接触を排除するというものだ。

 パドックやピット、コントロールタワーなどに立ち入る必要のある人間、これは事実上「レース・イベント関係者」ということになるが、この者を「プロファイル1参加者」と規定している。プロファイル1参加者はイベント会場への到着96時間前にPCR検査を受けることが推奨されている。

 しかし、これは「特定の対象イベント」参加者に適用されるもので、FIAの規定によれば、F1を始めとした世界選手権や、各国で展開するFIAシリーズなどのイベントがその対象とされている。FIAインターナショナルシリーズとして開催されているスーパーGTでも、FIA付則S項に対応し、イベント前のPCR検査がいち早く実施された件は記憶に新しい。

 そして、パドックなどの関係者エリア=プロファイル1エリアに立ち入る必要がない者は「プロファイル2参加者」と規定される。この「プロファイル2参加者」とは、要するに観客や売店のスタッフ、レース運営に直接関わらないイベントスタッフなどのことだ。

 プロファイル1参加者とプロファイル2参加者は完全に分離され、イベント期間を通じて参加者間での接触が発生しないイベント計画を推奨している。プロファイルを「横軸」の階層とするならば、グループは「縦軸」という捉え方ができるだろう。

 モータースポーツイベントは、一般的にチームやタイヤサポート、エンジンサプライヤーといった小規模のグループがイベントに派遣されることで成立しており、シリーズ戦では同じグループが転戦し、グループ内での接触は現実的には不可避と言える。

 そのため、グループをまたいだ交流の回数を最小限に抑えることが推奨されている。また、グループの中でさらに接触を伴うメンバーを細分化した「サブグループ」と呼ばれるさらに小さなグループを形成し、感染者が発生した場合の隔離リスクを最小限に抑えることも求められている。

 グループ、プロファイルという縦横の二軸でソーシャルバブルを形成することで感染拡大の抑止と、感染者が発生した際の隔離リスクを最小限にすることが可能となるというもので、これが「プロファイル」の概念が提示するイベント計画の基本的な考え方だ。

 Ver.2までは、基本的には無観客を前提とした内容となっていたが、厚生労働省掲示の「イベント開催制限の緩和に伴うリスクを軽減するための措置」などに基づき、スーパーGTやスーパーフォーミュラを始めとして、国内モータースポーツでも観客を受け容れている。それに呼応して11月5日のVer.3では、観客動員を伴うガイドラインが示された。

 文書では、長く無観客・自粛期間が続いたことから観戦可能イベントに観客が集中する可能性が指摘されており、より周到な観客動員の設計が強く求められている。その中にはイベント会場「外」のエリア、つまり観客の制御が困難なエリアでの混乱が予想されることから、事前に様々なメディアでのメッセージ発信、新型コロナウイルス感染症についての情報提供といったアクティビティも含まれている。

 観客の収容人数も明確に記述しており、現状では1万人以上が収容な可能な会場では5000人を越える観客の参加も可能となっているが、その際の上限については、独自に「収容人数の50%まで」と明示した。これは人が集中する共用スペース(ここでは「トイレ、入退場」と規定される)での「三密リスク」を避けるための措置だ。

 また、多くの人が集中する制限エリアへの入退場は、そのゲートが「三密」状態となり感染リスクが懸念されるため、こうしたエリアへのアクセス経路、アクセスタイミングの設定が求められる。そのためにはイベントのスケジュール、会場の選定と動線設計といった総合的な対策が求められることになる。

 Ver.3新規追加項目の締めとしては、検温、定期的で効果的な手洗い(可能であればアルコール消毒)、歩行者の一方通行ルールとソーシャルディスタンスの遵守といった社会生活でも求められる対策と、プロファイルの分離が再び強調されている。

 つまり、個人レベルでのこうした対応と意識がなければ、どんなイベント計画も動線設計も水泡に帰す可能性がある、という示唆でもある。イベント主催者は計画だけでなく、こうした啓蒙活動も同時に展開する必要がると捉えて良いだろう。

 11月5日発表のVer.3は、このようにイベントの根幹に関わる内容が多く含まれているため、参加者や主催者、スポンサー、そして観客も含めて一度目を通しておくことを強くお奨めしたい。今回追加された部分については、その場に存在する全員が認識を共通にすることで初めて実効性が高まる内容であると捉えられるからだ。さして長いリリースでもなく、また平文で書かれているため解釈も決して困難ではない。是非ともリリース原文の一読も併せてお願いしたい。

■モータースポーツ参加者・関係者さまへ 競技会開催に係る新型コロナウイルス感染防止対策のお願い(2020年11月5日版)

■新型コロナウイルス感染防止対策への取り組みについて(2020年11月5日更新)

フォト/JAFスポーツ編集部 レポート/JAFスポーツ編集部

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