中部・近畿ラリー選手権も、いよいよ最終戦。各クラスで接戦が展開

レポート ラリー

2020年11月17日

JAF中部・近畿ラリー選手権は10月31日~11月1日の2日間、富山県を舞台に最終戦が行われた。強豪ドライバー達が多数参戦したクラスもあり、最終戦にふさわしい盛り上がりを見せた。

2020年JAF中部・近畿ラリー選手権第7戦
2020年JMRC中部ラリーチャンピオンシリーズ第4戦
2020年JMRC中部ラリーチャレンジシリーズ第3戦

開催日:2020年10月31日~11月1日
開催場所:富山
主催:AND

 今年のJAF中部近畿ラリー選手権は全日本ラリー選手権の「新城ラリー」、「ラリー丹後」にそれぞれ併催された2戦に加え、9月には「ラリー丹後」と同じエリアで再び地方選手権として単独開催され、計3戦を消化している。一方で、新型コロナウイルス感染拡大のため、第3戦、第5戦、第6戦の計3戦が中止を余儀なくされた。

 今回開催されたANDテクニカルツアーは当初の予定通り、10月31日~11月1日の日程で行われ、シリーズを締め括る最終戦として開催された。ヘッドクォーター&サービスが置かれたのは、1週間後に全日本ジムカーナ選手権の最終戦が控えている富山県南砺市のイオックアローザの駐車場。SSはアローザからも程近い林道と、ダムを周回する林道の2本が用意された。いずれも舗装のステージだ。

 ラリーはふたつのセクションとも、3.6kmのアローザ近辺の林道SSを挟んで、ダム沿いの2.0kmのSSを2度走るという設定。しかしセクション2ではダム沿いのステージは逆走となる。計6本のSSのトータル距離は15.76kmと地方選手権としてはややコンパクトなラリーとなったが、その分、ワンミスが命取りになる、高い集中力が試されるラリーとなった。

 参加台数は48台と今季最多のエントリーを数えた。中でも注目されたのは参加19台と、一大激戦区となったDE-2クラスで、その顔触れも、明治慎太郎、中平勝也といった今季の全日本選手権で優勝を飾っているメンバーがエントリーしてきた。加えて、今季はスーパーGTに集中しているヘイキ・コバライネン選手までもが参戦。コバライネン選手にとっては昨年のセントラル・ラリー愛知以来、約1年振りとなるラリー参戦となった。

 そのDE-2クラス。ダム沿いのステージ、SS1はコバライネン/北川紗衣組のGT86R3が順当にベストを奪うが、0.2秒差で喰らいついたのが今季、中部近畿戦では全勝をキープしている親子クルーの廣嶋真/廣嶋浩組のセリカだった。廣嶋組はその後、ペースを上げたコバライネン組に徐々にリードを広げられたものの、2位をキープ。全日本組の2台を最後まで抑えてゴールを果たした。

「F1ドライバーを倒すつもりでSS1から全開で行きました(笑)。勝てるとしたら距離が長い方のSSだろうと思っていたので、短い方で勝負できたのは、逆になりましたね。荒れた路面に気が散ってしまったことが何カ所かあったので、今にしてみれば、もっと集中して攻められていたら、という気持ちもあります」と振り返った廣嶋選手。しかし今季、ライバルを圧倒し続けているスピードを再び証明した形となった。そして文句なしのシリーズチャンピオンを確定した。

 一方、出走15台とこちらも激戦区となったDE-5クラスは、最後まで僅差のバトルが展開された。セクション1をトップで折り返したのはイオックスSSで速さを見せた田中潤/北田稔組のデミオ。同じくデミオに乗る村山俊晴/河西晴雄組が1.8秒差の2番手につけた。

 セクション2に入ると、セクション1のダムサイトSSでともに2番手と速さを見せていた木下広紀/中根達也組のヴィッツがダムサイトの逆走となるSS4でこの日、初となるベストタイムを奪取。田中組に一気に0.3秒差まで迫る。一方、村山組はこのステージでコースオフ。車両を痛めてリタイヤとなってしまった。

 田中組は得意とするイオックス線のSS5でベストを奪い、木下組との差を3.1秒に広げるが、最終のダムサイトステージであるSS6では木下組が田中組を6.2秒差で下すベストタイムをマーク。土壇場で大逆転を果たして地区戦初優勝を飾った。

「SS6のスタートの前に、初めて競っていることを知ったので最後はプッシュしました。クルマが暴れて何度かヒヤリとしましたが、自分でもビックリするくらいのタイムが出せて良かったです。夏休みにデフをオーバーホールしてアクセルを踏みながら曲がれるクルマになったことが特にダムサイトSSでマッチしました。イオックス線は、どうもいいイメージが掴めなかったですが、ダムサイトは危ない所さえ抑えれば行ける感じがありました」と木下選手。逆転を許した田中選手は「イオックス線ではよくグリップしてくれたんですが、最後のSS6はなぜかグリップが落ちてしまって」と戸惑いを見せた。両者のタイヤ戦略が最後に明暗を分けた形となった。

ラリーの拠点となったイオックス・アローザでは、選手、関係者ともにマスク着用を徹底。感染防止に努めた。
DE-1クラスは、今季2連勝と速さを見せている大江毅/田中大貴組がSS2、SS3でベストタイムを連取し、首位で折り返したが、SS4でガードレールにヒット。その影響でペースダウンを強いられ、代わって首位に立った伊藤淳郎/吉田和徳組がそのまま逃げ切った。「前回の丹後半島ラリーからセッティングを変えたらアンダーステアの傾向がなくなったので、今日は最初から踏めるクルマになってくれました。(逆転して首位に立った直後の)2本目のイオックス線は集中して、きれいに走れました。セクション2は泥が出てましたけど、ノートを修正するなどして対応できたと思います」(伊藤選手)。
DE-1クラスで優勝の伊藤/吉田の両選手。
DE-2クラスではヘイキ・コバライネン/北川紗衣組が全SSベストと下馬評通りの速さを披露。総合順位でもトップを奪った。
DE-2クラス優勝のコバライネン/北川組。「これからスーパーGTが続くこの段階でラリーに出るのは、自分にとってはいい練習になるんだ。距離が長い全日本ラリーは二日間でどうラリーを組み立てていくか、ということが求められるけど、今日のような距離が短いラリーはSS1から全開で行かないと勝てないから、最初から高い集中力が必要だ。この経験はきっとスーパーGTにも役立つはずだよ。だから僕にとってラリーのスケールは関係ないんだ。今日は最初はあまりいいフィーリングじゃなかったけど、ラリーが進むにつれて調子が上がってきたので、最後の2本は本当に限界で攻めた。セリカも速くていい刺激になったし、ラリーも楽しめたよ」(コバライネン選手)。
SS1ではコバライネン選手に肩を並べるタイムを叩き出した廣嶋真/廣嶋浩組のセリカ。父親が煮詰めた車両を息子が操る。「今年は本当にクルマが出来上がってきたので、ちょっと運転をアジャストしただけで凄く乗りやすいクルマになりました」と真選手。
DE-5クラスは木下広紀/中根達也組が劇的な逆転優勝を飾った。
地区戦初制覇達成の木下/中根組。
DE-6クラスは、終盤のSS5、SS6でベストを奪った洪銘蔚(ホン・ミンウェイ)/浦雅史組が0.6秒という僅差で優勝した。
DE-6クラス優勝の洪/浦組。2017年にラリーデビューを飾った洪選手は念願のラリー初優勝を飾った。「夏の全日本のラリー丹後でリタイヤしてしまって、その後、調子を崩したので、一から自分の運転を見直してみたんです。井原(慶子)さんや勝田(範彦)さんに運転の基本から教えてもらったんですが、そこでクルマをコントロールする楽しさをもう一度、思い出せました。今日も最後のSS6は勝負が掛かってたんですけど、プレッシャーを感じるよりも、ともかく楽しく、リズム良く走れたのが勝因だと思います。本当に今日の1勝は凄く嬉しいです。教えて下さった方々に感謝したいです」(洪選手)。
JMRC中部チャレンジラリーシリーズは、長野から参戦の行徳聡/東山徹大組が全SSベストの快走を見せて優勝した。
優勝の行徳/東山組。「MR-Sでのラリーデビューウィンを飾れて嬉しいです。SS1から全開で行きましたが、楽しく走れました。ただ、今までランサー、ヴィッツと乗ってきましたが、RWD車はやっぱり難しいですね。もっと乗りこなせるようになりたいです」と行徳選手。

フォト&レポート/JAFスポーツ編集部

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