角田裕毅選手がF1テスト走行に挑む。スクーデリア・アルファタウリ・ホンダの車両で約350kmを走破

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2020年11月11日

第7戦ベルギーの第1レースで今季2勝目を獲得し、第10戦ロシアを終えた段階でランキング3位につけるなど、2020年のFIA-F2選手権で素晴らしいパフォーマンスを見せている角田裕毅選手がF1テストに参加。11月14日、イタリアのイモラ・サーキットを舞台に、スクーデリア・アルファタウリ・ホンダの2018年型モデルでテスト走行を実施した。

 ホンダ・フォーミュラ・ドリームプロジェクトおよびレッドブル・ジュニアチームに所属する角田裕毅選手はF1テストが行われる約1か月前の10月13日、スクーデリア・アルファタウリのファクトリーを訪れ、F1テスト走行のためのシート合わせを実施していた。

 F1テスト走行で使用されるマシンは同チームの2018年型モデル「STP13」。テストプログラムの目的はタイムを出すことではなく、あくまでも走行距離を稼ぐことで、「最優先事項は300kmの距離を走ることです。走行距離が長くなれば、クルマに対する理解が深まるので、クラッシュやコースアウトが減り、もっと楽にドライビングすることができると思います」と、角田選手は冷静にF1テスト走行の参加にあたる。

 ちなみに、この300kmという走行距離は、F1参戦に必要なスーパーライセンスの資格と発給条件が大きく影響している。FIA国際モータースポーツ競技規則付則L項、第5章の資格によれば「少なくとも40ポイントを累積する」、「過去3シーズンの間にスーパーライセンスが与えられたことがある」、「当該F1チームは申請に先立つ180日以内に申請者が相当とするフォーミュラワンの車両で最低300kmをレーシングスピードで最大2日間の間に走行していることをテストを行った国のASNに証明されるか、FIAフォーミュラワン世界選手権ドライバー部門対象のイベント中に申請者が行ったことを示さなければならない」など、F1参戦に必要な様々な条件が明記されている。

 そのため、角田選手がスーパーライセンスを取得するためには、F1マシンでの300km以上の走行が必要となることから、その条件をクリアするために、11月14日、角田選手はイモラサーキットで初めてのF1テスト走行にチャレンジしたというわけだ。

 F1テスト走行当日の天候は曇天で、路面はハーフウエット。そのため角田選手の初のF1走行はウェットタイヤを装着してスタートした。5度目のスティントからはドライタイヤを装着してテストが行われたが、角田選手は複雑なハイブリッドシステムを搭載するF1マシンに対応し、エンジニアとのコミュニケーションをとりながら、合計72ラップ、距離にして約350kmを走破した。

 日本人のF1走行は2019年のF1日本グリンプリで山本尚貴選手がフリー走行の1回目にスクーデリア・トロロッソ・ホンダで出走して以来となったが、初のF1走行を終えた角田選手は「初めてのF1マシンでのドライブは少し疲れましたが、とても楽しかったです。ブレーキのパフォーマンスやアクセルの加速がこれまでドライブしたマシンとは全くの別次元だと感じました。F1マシンに慣れ、目標としていた300kmを走り切ることに集中していました。ステアリングスイッチが多いなどの複雑さはありますが、事前にシミュレーターでのセッションを繰り返していたので問題はありませんでした」と語る。

 さらに「アルファタウリのエンジニアたちとは先月のシート合わせの時からコミュニケーションを始めました。イタリア人で陽気なメンバーも多いので、冗談を言い合いながら仕事を進めたりと、すでにいい関係を築けています。もちろん、日本語でコミュニケーションが取れるホンダのエンジニアともパワーユニットについて様々な話をしています」と初のF1テストの手応えを語った。

 一方、スクーデリア・アルファタウリのチームプリンシパル、フランツ・トスト氏も「イモラでユキ(角田選手)と生産的なテストを行うことができた。フルウエットタイヤでスタートしたけれど、ユキはすぐにクルマになれていたし、ドライタイヤに交換するとすぐにラップタイムが改善されたことが印象的だった。昼休みの後に新しいセットアップを行ったけれど、ユキのクルマの挙動に対する技術的なフィードバックは期待どおりで、最後に行ったレースシミュレーションも安定していた」と高く評価している。

 そして「次のテスト、アブダビで行われるスクーデリア・アルファタウリの若手ドライバーテストが楽しみ」とも語り、角田選手は自身2回目となるF1テストに参加するようだ。

 角田選手は「FIA-F2は2ラウンド4レースが残っています。自分としては一つのセッション、一つのラップ、一つのコーナーといった感じで、目の前にある課題に集中するのみだと考えていますし、最終的にそれを結果に繋げられればと思っています」と終盤戦の意気込みを語る。久々の日本人ドライバーF1参戦への期待が高まりつつあるだけに、FIA-F2での躍進、そして2021年の動向に注目したい。

粛々とテスト項目を消化した角田裕毅選手。日本人ドライバーがF1マシンをドライブするのは2019年のF1日本GPのフリー走行1回目に走行した山本尚貴選手以来となった。

フォト/RedBull レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部

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