ドラマチックな2DAY、28歳の小橋正典選手がD1記録タイに並ぶ3連勝!

レポート ドリフト

2020年11月10日

オートポリスで開催されたD1グランプリ第4戦&第5戦は、エビスの第2戦&第3戦と同じくデュアルファイナル。第4戦はドライ、第5戦は予選がドライで追走トーナメントからウェットとなり、波乱の2日間となった。

2020 D1グランプリシリーズ第4戦&第5戦 オートポリス大会
開催日:2020年10月31日~11月1日
開催地:オートポリス(大分県日田市)
主催:株式会社サンプロス

 オートポリス大会は例年どおり、ストレート逆走からの最終コーナーが審査区間となったが、今年はスタート位置が50mほど前進したため、セクター1(ドリフトアクション開始地点)の最高速度が昨年より大幅ダウン(それでも150km/h以上)。さらにライン指定も小変更され、とくにアウトクリップのゾーン指定には苦戦する選手も多かった。

 前戦のエビスでは観客を500名限定としたが、オートポリスは観客席が広いため入場者数は限定せず、2日間で5,000名を超える観客が集まった。エントリー台数は27台。第4戦は齋藤太吾選手(FAT FIVE RACING)が前日練習走行でエンジンブローしたため26台での予選となった。

全27台がエントリーしたオートポリス大会。有観客開催となり、5,000名を超える多くのドリフトファンがサーキットに集まった。

 決勝戦は予選トップ通過の藤野秀之選手(Team TOYO TIRES DRIFT-1)と、第2戦&第3戦のエビスで連勝してシリーズランキング首位の小橋正典選手(LINGLONG TIRE DRIFT Team ORANGE)が対決。トーナメントに入ってからも先行で99点、100点、100点と高次元の安定した走りで対戦相手を撃破した藤野選手は、ここでも先行でD1オリジナルスコアリングシステム(DOSS)得点100点の走りを繰り出した。

 後追いの小橋選手は97点のDOSS得点に後追い優位の8点を足して105ポイント。入れ替えて先行の小橋選手がDOSS得点99点、藤野選手は98点に後追い3点を足すが一歩及ばず。小橋選手がD1GP史上ふたりめの3連勝を挙げた(ひとりめは2016年のシリーズチャンピオン齋藤太吾選手)。

 なお、これまで5勝を挙げている小橋選手は、そのすべてが所属するチームオレンジがホームコースとするエビスサーキット。「ベスト8で横井さんと対戦しているときに後追いで離され、なんとか食らいついて勝てたところでスイッチが入った。強いのはエビスだけじゃないと証明できてうれしい」と振り返る。

 一方、単走優勝の藤野選手は、オートポリス入りまでの練習走行で左手を負傷し、ギプスを装着したままでの参戦となったが、それを感じさせない正確無比な走りで他を圧倒した。「タービンだけでなく、排気系全体とそれにともなう燃調セッティングなどすべてにおいてバランスが飛躍的によくなった」とチームスタッフ。

28歳の若手・小橋正典選手が、46歳の100点連発男・藤野秀之選手を撃破して第4戦優勝。エビスからの3連勝を飾った。
優勝した小橋選手のエンジンは決勝戦終了直後にピストンの棚落ちが発覚。ギリギリの勝負だったということになる。
予選を兼ねる単走の優勝は99点を獲得した藤野選手。180SXに搭載の2JZ改3.4リットルは今年3回目のタービン交換が大成功。

 松井有紀夫選手(Team RE雨宮 K&N)は、準決勝で昨年シリーズチャンピオン横井昌志選手(NANKANG TIRE DRIFT TEAM D-MAX)と対戦して勝利。D1GP史上初となる4ローターが早くも3位入賞。FD3Sで優勝経験もある松井選手は「3ローターのほうが乗りやすい」と言う。4ローターのピークパワーは800psを超えるが、その構造上、ペリフェラルポートになって高回転は伸びるが低回転でのトルクが少ないのが難点。ロータリーエンジンの可能性を追求するRE雨宮チームだけに熟成を期待したい。

 そしてスープラに3UZを搭載する川畑真人選手(Team TOYO TIRES DRIFT-1)と、シルビアにVR38を搭載する植尾勝浩選手(VALINO)がベスト16で対決。前日から不調を抱えた川畑選手は先行時にアウトクリップまで飛ばせず、予想を裏切られたカタチの後追い植尾選手が詰まってハーフスピン。入れ替えて後追いの川畑選手は植尾選手についていけず、ミスを出しながら苦戦するも、双方の減点の大きさから川畑選手が辛くも勝利となった。

今シーズンからD1GP史上初となる4ローターロータリーエンジンを搭載した松井有紀夫選手のFD3Sが悲願の表彰台を獲得。
川畑真人選手と植尾勝浩選手はD1GPマシンの定番エンジンに対し、打倒2JZを掲げて新時代のハイパワーパシンで戦った。
スタートラインからセクター1を臨む。昨年より50m以上も前進したため、最高速は190km/h台から160km/h台に低下した。
通常のラウンドでは使用タイヤが3セット(6本)に制限されるが、オートポリス戦では特例として「決勝戦のみ1セット追加」となり、タイヤマネジメントが重要となった。
第4戦の優勝は小橋選手、2位は藤野選手、3位は松井選手、4位は日比野哲也選手、5位は横井昌志選手、6位は川畑選手、7位は田中省己選手、8位は上野高広選手、9位は末永正雄選手、10位は村上満選手。

 翌日に行われた第5戦は、前日の絶好調が止まらない藤野選手が単走優勝。なんと100点を超える101点を獲得した。しかし、ベスト16決勝トーナメントで予選16位の北岡裕輔選手(TEAM MORI)に破れてしまう。藤野選手の左手の負傷は深刻らしく、痛み止めとテーピングで対処していた。

 続く決勝トーナメントは雨天に見舞われた。これを制したのは地元熊本でカーショップを経営する植尾選手。前日に優勝した小橋選手のチームメイトである末永直登選手(LINGLONG TIRE DRIFT Team ORANGE)を破り、15年ぶりの優勝を遂げた。

 植尾選手はS15シルビアにR35GT-RのVR38DETTを搭載して3年目。前日から単走では進入速度170km/hを超え、この日の単走は3位だった。長いリアスプリングと高い車高で「だれよりも速いスピードから異常な角度を繰り出して圧倒的に勝つためにはダートラ車の発想が必要」と、独自の理論を持つ。彼は2002年D1GPのシリーズチャンピオンで、そのときはAE86だった。

 ベスト16の対戦で注目が集まったのはベテラン川畑選手と、今年から出場の蕎麦切広大選手(TEAM SHIBATA SAILUN TIRE)。RCドリフトチャンピオン経験者で24歳のルーキーが駆るのはVR38DETTを搭載するQ60。川畑選手が貫禄勝ちしたとはいえ、2日間連続で予選通過したルーキーの健闘ぶりに会場も沸いた。

「痛みで左手を使わないようにすると力が抜けていい走りが連発するのかも」と、第5戦で単走優勝の藤野選手。
鹿児島出身の末永直登選手との九州人同士の対決を制し、植尾選手が第5戦で15年ぶりの優勝を果たした。
植尾シルビアのエンジンルーム。VR38DETTは排気量そのままにピストンとコンロッドを強化。HKSのタービンキットで1000馬力を超える。
2019年にD1Lightsに初参戦し、GPライセンスを手に入れて今年からD1に挑戦の蕎麦切広大選手が攻めの走りで大健闘。
第5戦の優勝は植尾選手、2位は末永直登選手、3位は川畑選手、4位は北岡裕輔選手、5位は小橋選手、6位は内海彰乃選手、7位は上野選手、8位は田所義文選手、9位は藤野選手、10位は末永正雄選手。

フォト/SKILLD川﨑隆介 レポート/SKILLD川﨑隆介、JAFスポーツ編集部

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