女性オンリーのカート大会「MadonnaKART」が大盛況! 新たな第一歩を踏み出した

レポート カート

2020年11月5日

モータースポーツに興味があって、機会があれば始めてみたいと思っている……、そんな女性の背中をそっと後押ししてくれるイベントが開催された。レンタルカートで非日常の体験を楽しめるMadonnaKARTに密着取材してみた。

MadonnaKART
開催日:2020年11月1日
開催地:新東京サーキット(千葉県市原市)
主催:有限会社KRP、T.KBF

 さわやかな秋晴れに恵まれた11月1日、千葉県市原市にある新東京サーキットで"MadonnaKART"が開催された。このイベントは女性オンリーのレンタルカートを使用した大会で、JAF公認競技ではないが「安全に楽しく完走する」ことをコンセプトとして企画および開催された走行会。当日は1チーム2~3人の全26チーム/69名が参加した。

 舞台となる新東京サーキットはコース全長1,076m、ホームストレート150m、8つのコーナーを備え、コース高低差は4mと、初心者からベテランまで走りごたえのあるコースレイアウトとなっているのが特徴だ。また各コーナーのエスケープゾーンも広く確保されており、安全性もしっかり考慮されている。

 主催の有限会社KRP代表取締役の河本卓也氏によると、「ThreeBondさんが今年スーパーフォーミュラにタチアナ・カルデロン選手を、去年はフォーミュラ3に三浦愛選手を起用しましたよね。ThreeBondさんは女性に特化したモータースポーツをやりたい、という意向があるようでして、今回の大会が実現しました」と、開催の経緯を語ってくれた。

ちょうど11月に入ったばかりだが、陽射しの下では少し暑さを感じるほどの陽気に包まれた、千葉県市原市にある新東京サーキット。
コースの舗装に伴い2018年よりレイアウトが変更された新東京サーキット。前半はテクニカル、後半はハイスピードのコース特性を持つ。
「開催前はイベントがちゃんと成立するかどうかすごい心配でした」と言う、主催の有限会社KRP代表取締役・河本卓也氏。
MadonnaKARTをサポートしたのは、2020年全日本カート選手権に参戦中の川福健太選手(左)と皆木駿輔選手(右)。

 この開催を楽しみに待ち望んでいた参加者たちが、受付時間前の早朝からサーキットに続々と集まった。なお今回の参加資格は満20歳以上で普通自動車運転免許を持ってること、そして1日を楽しく過ごすといった、イベントの主旨を理解していることが条件だ。

 参加にあたりレーシングスーツやヘルメット等のドライバー装備は各自で用意しなければならないものの、参加費は1チーム10,000円とリーズナブルな金額に抑えられ、カートレンタル代、練習走行費、ガソリン代が含まれる内訳となっている。今回の使用マシンは200ccエンジンを搭載したビレル社製のN35だ。

 参加受付時にM4(マスターズ・4ストローク)とThreeBondのロゴが入ったピンクのTシャツが選手全員に配布されたこともあり、サーキットの各所が華やかなピンク色に彩られるとともに、一体感のようなものが醸し出された。またモータースポーツに興味を持った参加者が集まったことで、チームの垣根を越えての交流が随所で行われていた。

 全日本カート選手権に参戦している皆木駿輔選手や川福健太選手によるデモ走行があり、並行してカートの操作方法やサーキット走行時のルール、フラッグ等の説明も行われた。もちろん参加者の半数近くがカート初心者だったことから、選手たちは皆、真剣に耳を傾けた。

今回は1チーム2~3名構成の1時間耐久の模擬レース。TCRJで活躍する下野璃央選手も、道上龍氏率いるDrago CORSEチームとして参加。
使用されるマシンは、ビレルのレンタルカート用モデルのN35。最大時速は60km/h程度だが、体感速度はその2~3倍となる。
お揃いのTシャツを着た参加者がサーキットをピンク一色に染めた。参加した選手たちのモチベーションも最高潮に達している。
レースに臨むにあたって重要なルールを学ぶ。安全かつ潤滑にレースを進行するためには必要不可欠だ。

 その後は初心者を対象とした20分の練習走行を経て、10時15分に1時間耐久の模擬レースがスタート。不慣れなレンタルカートに手こずるチームも多く、開始早々から各所でスピンやコースアウトも見受けられたが、周回数を重ねていくうちにその数も減っていき、各チームとも熱い走りを展開した。

 一方ピットレーンでは、チームメンバーが走行中の選手に応援をしたり、交代のサインボードを掲示したり、間近でレースの醍醐味を体験できたことで興奮のるつぼと化している状態。「存分に走り切った」「不完全燃焼だった」、それぞれ選手が想いを抱える中、あっという間に1時間は過ぎていった。

 最終的には56周の周回数をこなしたC's Splash Oチームが好走を見せ、レディース専用設計のレーシングスーツが贈られた。そしてベストラップはBooyah with Drago CORSEが叩き出した59秒619で、全チームの中で唯一の1分切りを果たす。そのほかエンジョイ賞として、くじ引きによる賞品が全チームに贈呈され、MadonnaKARTは幕を閉じた。

 参加者たちは口を揃えて「楽しかった」「また参加したい」とコメントを残しており、また会場にいた関係者たちの評判も上々。モータースポーツの入口として、女性の活躍の機会をさらに広げる契機となったのではないか、と思わせるイベントでもあった。

グリッド上にズラリと並んだ選手たち。スタートの瞬間を今か今かと待っている緊張感が漂っていた。
そして10時15分にスタートした1時間耐久の模擬レース。競技スタートの国旗が振られた瞬間、26チームは一斉にアクセルをON!
慣れない経験にコースアウトも続出。マシンの救援に駆け付けたのは、今回オフィシャルを務める全日本カート選手権OK部門に参戦中の皆木駿輔選手。
3回以上のドライバー交代が義務づけられている。事前の説明や経験者の指導の甲斐あってか、交代もスムーズに行われていた。
26番グリッドからスタートしたC's Splash Oチームが1時間で56周を周回。チェッカーを受けて模擬レースを終えた。
「女性オンリーのカート大会と聞いて、最初は大荒れで大変なことになるんじゃないかなって思っていましたが、終わってみれば楽しかったのひとことです。以前はスンプマリーナカーティングがホームコースで、C's Splashというチームで練習していました。今回は初めてこのコースを走りましたが、またこういうイベントがあったらぜひ参加してみたいです」と語ったのは、56周の周回を果たしたC's Splash Oのおんたまさん(左)とおかよさん(右)。
デモ走行を行った川福健太選手は「こんなに集まって賑やかになるとは思っていなかったので、想像以上というか、今後のモータースポーツが盛り上げる可能性を感じた1日でした。参加している人たちや関係者の方の反応を見て驚いています。カート界にはかなりのドライビングスキルを持っている女性カーターの方もいますし、ここから派生して、女性を中心としたイベントも各地で広がっていくことを期待します」と熱くコメントした。
フォーミュランド・ラー飯能のオーナーでもある塚越広大氏に話を聞くと、「まず参加されている人数に驚きましたね。こんなに女性ドライバーだけで集まることってないと思うんです。モータースポーツに興味を持ってくださっている女性がたくさんいるんだなと改めて感じました。初めて参加された方も多いと聞いたんですけど、そういうのを感じさせない走りで、すごく盛り上がったと思います」と、この大会を見て抱いた感想を述べてくれた。
「初の試みで初めての人が半分以上いる中で、大きな怪我やアクシデントがなくてホッとしています。FIAであったりJAFであったり、モータースポーツ界が女性の活躍の場を推進している中で、このマドンナカートをきっかけに、女性でも男性と同じようにモータースポーツが楽めるものだと感じてくれて、またカートに乗りたいとか、いつかはレースに出てみたいなと思ってくれるとすごくうれしいです」と、期待を寄せている道上龍氏。
JAFウィメン・イン・モータースポーツ作業部会の飯田裕子座長も視察に訪れた。「グリッドを埋め尽くすマシンのシート、ドライバー交代のメンバーたちが全員女性って、私にとっては鳥肌が立つくらい新鮮な光景でした。これだけの人数がレースがしたいと思って来ているんだなって。レベルを上げすぎず、ファンを徐々に増やして、それがモータースポーツに興味を持ってもらうステップになるようなイベントになってほしいですね」と感想を残した。
主催の河本氏にイベント終了後の率直な感想を伺った。「都心からでもアクセスしやすい新東京サーキットというロケーションが良かったのか、思ったより集まってくれてちょっとびっくりしています。参加者の皆さんから楽しい、またやってほしいという声をいっぱいいただいて、大成功として終わることができました。逆にちょっとバタバタ感があって、ゆっくり皆さんのフォローができなかったのが申しわけなく、もう少し時間が欲しかったなと思いました。今回、カートを通じてモータースポーツを知っていただいて、その中でプロになりたい方が出てくればうれしいですね。とはいえ、今回の参加者の大半はライセンスを持っていらっしゃらない方のようです。それをどうステップアップの方向へつなげるか、今後の課題だと考えています」

■参加チームの皆さん

#1/ち~むとれりす@73R、#2/YAPPARI、#3/Pさまレーシング、#4/アミトロしか勝たん♥、#5/Teamサングラスニット帽、#6/ちびっこバスターズ、#7/チームRAZO、#8/ラブラブドライブ、#9/NANA&宝石堂&Araiヘルメット。
#10/チームオートクリル、#11/SPARCOマドンナチーム、#12/ワンツーいやほーい、#13/アウティスタゴルファー、#14/Bond girlチーム、#15/Booyah with Drago CORSE、#17/C's Splash A、#18/かずみっちょん、#19/ツギハギRACING。
#20/グランツ、#21/Racing J Ladies、#22/ロータリアンぬ、#23/TEAM LOVERS COLLECTION、#24/ときめきハートレーシング、#25/落花生GIRLS笑、#26/イタコシスターズ、#27/C's Splash O。

フォト/JAFスポーツ編集部 レポート/JAFスポーツ編集部

ページ
トップへ