最終決戦・恋の浦! SA・SAX2林軍市選手が全日本初勝利、そして荒井信介選手が5年ぶりにタイトル奪還!!

レポート ダートトライアル

2020年11月4日

今シーズンの最終戦となる全日本ダートトライアル選手権第2戦が10月24〜25日、福岡県のスピードパーク恋の浦で開催された。秋晴れの下に集結した115名の参加者は第1ヒートから激しい争いを披露。合計7クラスで短かった2020年のタイトル争いが決着した。

2020年JAF全日本ダートトライアル選手権第2戦
「RASCAL SPRING TRIAL IN KYUSHU」

開催日:2020年10月24~25日
開催地:スピードパーク恋の浦(福岡県福津市)
主催:RASCAL、FMSC、RC-大分

 2020年の全日本ダートトライアル選手権は全8戦を予定していたが、3月の開幕戦・京都コスモスパークを終えた後に、新型コロナウイルス感染症の影響で大会が中止や延期となっていた。その後、活動が再開されてからは8月にオートスポーツランドスナガワで第4戦が開催。そして、約12週間を経て今シーズン最終戦となる九州ラウンドを迎えた。

 この九州大会は「RASCAL SPRING TRIAL IN KYUSHU」と名付けられている通り、当初は4月4~5日を予定していた大会が10月に延期されて開催されたもの。4月には115名によるエントリーリストも発表されており、今大会では参加者の入れ替えがあったものの、当初と同じ、クローズドを含めた115名による仕切り直しの「第2戦」開催となった。

 レースウィークは土曜の公開練習、日曜の決勝ともに晴天で、風もある絶好の”ダートラ日和”に恵まれた。しかし、直前に見舞われた大雨の影響により、公開練習の時点では、恋の浦名物の「超硬質」路面には程遠い状況だった。しかし、2日間に渡る晴天と海風の影響で路面は硬質化し、日曜にはブラックマークが出現する超硬質ドライ路面となった。

 決勝コースレイアウトは昨年の大会とほぼ同じルートで、コース前半には高低差のある外周路に高速セクション、後半は内周路にテクニカルなセクションを設定。しかし、路面状況は刻一刻と変化していき、うねりやワダチ等によるギャップに悩まされることになった。シーズン最後の戦いは、感染対策を施しながら観客を受け入れて実施され、難しい路面状況を相手に、ダートラの醍醐味を味わえる激しいタイトル争いが展開された。

シーズン決戦の地は福岡県のスピードパーク恋の浦。玄界灘を望む絶好の景勝地でもある。
会場では検温や手指消毒が行われ、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策を徹底。
開会式や表彰式は風通しが良くソーシャルディスタンスを確保した状態で実施された。
決勝コースレイアウト。高低差がある高速区間とテクニカルな低速区間を組み合わせる。

 中でも注目を集めたのが、SA・SAX2クラスだった。同クラスでは今シーズン2連勝を挙げている荒井信介選手が40ポイントでランキング首位を快走。開幕戦コスモスで2位につけた北村和浩選手と、2戦目の北海道で2位につけた黒木陽介選手が、ともに25ポイントのランキング2位で追走していた。だが、この大会で主役を演じたのは、タイトル争いの上位ランカーではなかった。

「とにかく1本目が勝負だと思って全開で行きました。何か所がミスしたけれど、トップタイムだったのでチャンスはあるかな……と思っていました」と語るのは関東の中堅ドライバー林軍市選手。第1ヒートでは1分39秒410をマークして暫定トップで折り返していた。

 近年の恋の浦では、ドライ路面であっても、第2ヒートにおける路面変化が大きすぎることから第2ヒートでの逆転は難しいと言われていた。今大会でも昼の慣熟歩行を終えた印象では「1本目勝負」の様相を呈していた。しかし、PN1クラスをはじめ前半出走のクラスではベストタイム更新が相次ぎ、今年の恋の浦はひと味違う展開を見せていた。

 ところが、これらの逆転劇は四輪駆動車のクラスにおいては第1ヒートのタイムを更新する展開が難しくなってしまう。SA・SAX2クラスのタイトル争いは荒井選手、北村選手、黒木選手が立役者。第1ヒートでは荒井選手が2番手、黒木選手は4番手、北村選手はなんと11番手に甘んじていただけに、最終走者の北村選手まで読めない展開となっていた。

 ノンシードの選手は浜孝佳選手や鈴木信地郎選手は自己タイムを更新したものの、林選手の暫定ベストには届かない。第1ヒートで3番手タイムを叩き出していた井上博保選手もタイムダウンに終わっていた。そして、シードドライバーの林選手も「第2ヒートはギャラリーコーナーで動きが止まってしまった」と語るようにタイムダウンしてしまう。

 続くマイケルティー選手は自己タイムを上げたものの8番手、黒木選手は約コンマ6秒上げたものの4番手変わらず。残る荒井選手、北村選手ら2台の走りに注目が集まるが、なんと北村選手はスピンを喫してしまう。無事フィニッシュした荒井選手もタイムダウンとなり、この結果、林選手の逃げ切り優勝、そして全日本初優勝が決まった。

 林選手は「このクラスにはもの凄いドライバーがいますから、2番は3回かあったけど、ずっと勝てなかったんです。でも、逆に何かあればチャンスがあると思って努力をしてきました。恋の浦ではタイヤのマッチングを一人で地道に試したんです。それでいい感触を得られた選択が当たりました。こんな僕でも勝つことができて嬉しい」と語る。

 2016年の第4戦門前大会では、優勝した北村選手にコンマ001秒差で敗れる経験もしてきた林選手。今大会は荒井選手のゴールで勝利が決まった瞬間には、これまでの想いがこみ上げて男泣きを見せたが「こういう時ってワンワン泣かないもんだね」と林選手らしいユーモアも披露。林選手の元にはクラスや地域を超えて祝福の声が続々と寄せられ、強豪ぞろいの”SA2”での初優勝を噛み締めた。

 一方のタイトル争いは、荒井選手が2位、黒木選手が4位、北村選手が13位という結果となり、「タイトルを意識していたので1本目は抑えすぎました。2本目もタイムアップができなかったけれど、こういう状況でも2位に残れて、チャンピオンも獲れたので良かった」と語る荒井選手が、2015年以来の全日本タイトル奪還を果たしている。

第1ヒートで荒井信介選手を約コンマ5秒差で下したSA・SAX2林軍市選手が全日本初優勝。
パルクフェルメで天を仰いだ林選手。精緻なテストを繰り返した努力が結実した瞬間だ。
SA・SAX2クラス表彰式。優勝は全日本初勝利の林軍市選手。2位は荒井信介選手、3位は井上博保選手、4位は黒木陽介選手。5位は浜孝佳選手、6位は鈴木信地郎選手。
北村選手の沈没など波乱のSA・SAX2クラスは、荒井信介選手が5年ぶりにタイトルを奪還。

 PN1クラスでは、第4戦スナガワまでに2連勝を果たしている上野倫広選手がすでに2020年タイトルを確定させているが、今大会では、開幕戦コスモスで13位に止まっていた太田智喜選手が第1ヒートから気を吐いた。デミオ15MBを駆る太田選手は2番手の濱口雅昭選手を約コンマ8秒上回るタイムでトップフィニッシュ。一方の上野選手は走行中のリム落ちからクラス最下位という厳しい立ち上がりとなっていた。

 第2ヒートのPN1クラスは各車が自己タイムを更新する展開となり、太田選手の勢いも健在。「本当は1分48秒台を狙っていたんですけど、それが達成できなかったことが残念です」と語りながらも、自己ベストを大幅に更新する1分49秒035を計測して今季初優勝を獲得した。対する最終走者の上野選手は、1分49秒台まで迫るものの僅かに届かず2位。「恋の浦でも勝って、シーズン全勝で終えたかった。タイトルは獲れましたけど、そこが悔しいですね」と語り、PN1クラス2年連続チャンピオンを確定させた。

 PN2クラスは、今季2勝でポイント首位に立つ2019年チャンピオンの宝田ケンシロー選手と、2018年チャンプの細木智矢選手が、2020年のタイトル争いで一騎打ちとなっている。しかし、第1ヒートの宝田選手にまさかの事態が発生。公開練習で破損した駆動系に再びトラブルが発生し、スロー走行で何とかゴールラインを切ることができたのだ。

 ちなみに、宝田選手はポイントを4点以上獲得すれば、細木選手が優勝してもタイトルが確定するため、今大会のPN2クラスは出走6台で、最下位でも6点が得られることから、辛くもゴールできた宝田選手は、第1ヒート終了時点でタイトルが確定することになった。

 恋の浦のPN2クラスで幸先の良いスタートを切ったのは、開幕戦コスモスで2位につけていた地元ドライバーの濱口龍一選手。唯一の1分49秒台をマークして第1ヒートで暫定トップに立った。濱口選手は第2ヒートも好調で1分47秒台にまでタイムを上げたが、後続の細木智矢選手が1分47秒432でベストタイムを更新。車両を修復して挑んだ最終走者の宝田選手は1分47秒台を叩き出すもコンマ5秒届かず2番手に留まった。

 この結果、細木選手が今季初勝利を獲得。「リスクがあったので、第1ヒートは少し探りすぎましたが、第2ヒートはうまく攻め切れたと思います。スナガワでは勝てるチャンスを自分のミスで落としていたので、最終戦で勝ててうれしいです」と有終の美を飾った。

 一方の宝田選手は、開幕戦コスモスでは第1ヒートのミスコースからの優勝、第4戦スナガワでは車両大破から必死の修復で優勝というドラマチックな逆転劇を”自ら”演じ続けてきた。今大会については「第1ヒートでは駆動系トラブルが出たので、ストレスのかかるコーナーは抑えて走りました。アドバンカラーの1年目でタイトルを獲得できたので、最低限の仕事はできたと思います」と語るように、伝統のカラーリングを纏うプレッシャーに押し潰されそうになりながらも、PN2クラス2年連続チャンピオンを確定させた。

デミオ15MBの太田智喜選手が2ヒートともベストの完全勝利。全日本4勝目を挙げた。
PN1クラス表彰式。優勝は今季初得点の太田智喜選手。2位は上野倫広選手、3位は濱口雅昭選手、4位は児島泰選手、5位は原靖彦選手、6位は山谷隆義選手。
第4戦スナガワ終了時にPN1タイトルを確定させた上野倫広選手。PN1連覇を達成。
第1ヒートでタイトル争いが決したPN2。細木智矢選手は第2ヒートで濱口龍一選手を逆転!
後続の宝田ケンシロー選手は約コンマ5秒届かず2番手。細木選手は今季初勝利を獲得。
PN2クラス表彰式。優勝は今季初勝利の細木智矢選手。2位は宝田ケンシロー選手、3位は濱口龍一選手、4位は永田誠選手、5位は徳山優斗選手、6位は鳥居晴彦選手。
PN2クラスは第1ヒートを完走した時点で宝田ケンシロー選手のタイトル連覇が確定した。

 PN3クラスは、ポイントランキングで上位8名にタイトル獲得の可能性が残される激戦区となっていた。そして、今大会の第1ヒートでは、PN3のランキング8位の浦上真選手が、後続を約1秒引き離す1分51秒台をマークして暫定トップで折り返していた。

 PN3クラスでも第2ヒートにおける自己タイムの更新が可能な状況となっており、各選手が自己タイムを1~2秒更新する展開となったが、浦上選手の第1ヒートのタイムはなかなか破られなず、自身の出走では1分49秒075と再びベストタイムを計測して暫定トップをキープする。続くシードドライバーもタイムを上げるものの浦上選手には届かず、岡翔太選手は約コンマ4秒届かず2番手。最終走者の山崎利博選手は1秒以上離された3番手。

 この結果「第1ヒートの方がうまく走れました」と語りながらも「開幕戦コスモスはクルマを乗り換えたばかりで苦労しましたが、ようやく走れるようになりました。九州に来た甲斐がありましたね」と語った浦上選手がPN3クラスでの初優勝を獲得した。

 一方、PN3クラスのタイトル争いは、第4戦スナガワを制した山崎選手が「今回は公開練習からタイムが出てなかったので、決勝で何とかタイムを出せて良かったです。昨年は意識しすぎてタイトルを獲れなかったので、今年はタイトル争いを考えずに戦ったのが良かったのかも知れません」と語り、PN3クラス移行後2年目にしてタイトルを確定させた。

 PN3クラスは最終戦を前にして20点台に4名が並ぶ激戦だったが、最終戦を終えても、山崎選手、2位和泉泰至選手、3位河田富美男選手、4位矢野淳一郎選手、5位岡選手、6位浦上選手とシリーズポイントが僅差で並び、タイトルを確定させた山崎選手は、2位の和泉選手に対して1点差でタイトルを確定させるという展開で今シーズンを終えている。

 Nクラスでは、開幕戦コスモスの勝者・矢本裕之選手と第4戦スナガワの勝者・北條倫史選手、西田裕一選手、岸山信之選手ら4名によるタイトル争いとなっていた。そして、最終戦の恋の浦でスタートダッシュを決めたのは地元ドライバーの岸山選手だった。

「今日は1本目で勝負が決まると思って本気で攻めました」と語る岸山選手は、後続に2秒以上の差を付ける1分39秒598をマークして第1ヒートをトップフィニッシュ。しかし、「2本目ではウェット用タイヤを装着しましたが、コース後半では操作が難しかった」というように第2ヒートはタイムダウンを喫してしまう

 関東の影山浩一郎選手が、第2ヒートでは最速となるタイムを叩き出して2番手にジャンプアップしていたが、最終走者の北條選手はそれをかわせず3番手。この結果、「本当に長かった。最後で勝てて良かった」と語る岸山選手が第1ヒートの結果で今季初優勝を獲得。自身2回目の全日本優勝を、ようやく地元の恋の浦で決めることができた。

 一方、Nクラスのタイトル争いは、開幕戦コスモスを制した矢本選手と、第4戦スナガワを制した北條選手が同点のポイントリーダーに立っていたが、矢本選手は恋の浦では2ヒートともドライビングミスで低迷、北条選手は3位入賞を果たしたことから、北條選手がNクラスのタイトルを確定。以下、岸山選手、矢本選手、西田選手の順位が確定した。

PN3の86に乗り換えた2019年SA1チャンピオン浦上真選手が全日本3戦目で初勝利!
PN3クラス表彰式。優勝はPN3初勝利の浦上真選手。2位は岡翔太選手、3位は山崎利博選手、4位は矢野淳一郎選手、5位は和泉泰至選手、6位は河田富美男選手。
3位に入った山崎利博選手が2018年PN1以来、PN3クラスでは初となるタイトルを確定。
第1ヒートにSA・SAX2でも入賞するタイムを計測した岸山信之選手がようやく地元で勝利。
Nクラス表彰式。優勝は自身2勝目の岸山信之選手。2位は影山浩一郎選手、3位は北條倫史選手、4位は馬場一裕選手、5位は西田裕一選手、6位は伏見浩二選手。
Nクラスは3位に終わった北條倫史選手が、3年連続となる全日本タイトルを確定。

 SA・SAX1クラスでは、葛西キャサリン伸彦選手と内藤修一選手、岩澤研一選手、川口昭一選手、志村雅紀選手の5名によるタイトル争いとなっていた。しかし、川口選手は今大会にエントリーしておらず、岩澤選手は公開練習には参加したもののエンジントラブルでリタイアしてしまい、決勝では葛西選手と内藤選手、志村選手の3名に権利が残された。

 ところが、第1ヒートでトップタイムをマークしたのは、スポット参戦の外山嘉賢選手。しかも後続を約1.6秒も引き離したスーパーベストを叩き出し、第2ヒートを有利にした。第2ヒートでは、SA・SAX1クラスでも逆転劇が展開され、多くの選手が自己タイムを更新。中でもZC33Sスイフトスポーツを駆る福山重義選手と志村雅紀選手が上位タイムを計測し、公開練習のクラッシュから一晩で復活させた三枝光博選手が2番手タイムを計測した。

 外山選手はタイムダウンで、第1ヒートのタイムで暫定トップをキープしている。ポイントリーダーの葛西選手は、今大会は唯一のシードドライバーとして最終走者となっていたが、第2ヒートの出走時点ではすでに5番手にまで落とされていた。しかし、直前に出走した内藤選手が下位に低迷したことから、走行中にタイトルが確定。自身も第1ヒートのタイムを更新できなかったことから、今大会の優勝は外山選手に決定した。

「1本目で勝負が決まると思っていました。コンディションが悪く、走りにくい中でタイヤがマッチしたことがタイムに繋がりました。恋の浦って新潟のコースによく似てるので好きなコースなんですよね(笑)」と語る外山選手。2017年第2戦恋の浦で全日本初優勝を挙げており、今回は自身2度目となる全日本優勝となった。

 後輪駆動車にとっては苦しい路面状況にも関わらず善戦したと言えるMR2使いの葛西選手。第2ヒートは自身初の全日本タイトルを確定させたウイニングラン状態だったものの、今大会の結果は5位。フィニッシュ後にはチャンピオンとしてキャッチ&リリースエリアに訪れたが「いやーカッコわりい~。自分はパドックに帰ります」と謙虚な姿勢でエリア外に退出。勝利でタイトル確定を飾れるべく、来年以降のリベンジを誓った。

 SC1クラスは、第4戦スナガワ大会がクラス不成立となったため、全日本選手権の成立要件である「全3戦」を満たすことができず、2020年はシリーズ不成立となっていた。今季2戦目となった今大会では、開幕戦コスモスで5位につけていた山下貴史選手がクラス唯一の1分46秒台を叩き出し、第1ヒートをトップで折り返した。

 第2ヒートでは、第1ヒートで2番手の奥村直樹選手が自己ベストを更新するものの、1分47秒の壁を破れず2位に惜敗。山下選手はタイムダウンしたため、第1ヒートのタイムで今大会の優勝が決まった「第1ヒートで決まると思っていたので頑張りました。ゴールでは失敗したけど、それ以外は狙い通りでした。全日本では2勝目なので最高にうれしいです」と語る山下選手。2012年第7戦タカタ以来となる全日本2勝目を獲得した。

2017年にも恋の浦を制している外山嘉賢選手がSA・SAX1クラス優勝。シリーズ3位に入る。
SA・SAX1クラス表彰式。優勝は恋の浦マイスター外山嘉賢選手。2位は三枝光博選手、3位は福山重義選手、4位は志村雅紀選手、5位は葛西キャサリン伸彦選手、6位は中村凌選手。
SA・SAX1クラスは葛西キャサリン伸彦選手が5位で自身初の全日本タイトルを確定させた。
今季のシリーズは不成立となったSC1クラス。山下貴史選手が第1ヒートのタイムで優勝。
SC1クラス表彰式。優勝は自身2勝目の山下貴史選手。2位は奥村直樹選手、3位は山崎迅人選手、4位は松田宏毅選手、5位は則信重雄選手、6位は坂井秀年選手。

 SC2クラスは、ベテランラリーストの大西康弘選手をポイントリーダーとして、上村智也選手と吉村修選手、杉尾泰之選手、岩下幸広選手、亀田幸弘選手、平塚忠博選手、橋本和信選手らといった、8名ものドライバーにタイトル獲得の可能性を残していた。

 恋の浦のSC2クラスでは、第1ヒートから僅差の争いが展開された。上位4名が1分40秒台にひしめき合い、そのうち上位3名はコンマ2秒差という大激戦。その混戦を抜け出したのが開幕戦コスモスで3位、第4戦スナガワで2位につけたポイントリーダーの大西選手で、1分40秒012をマークして第1ヒートをトップで折り返した。

 第2ヒートに入ると、第1ヒートで2番手だった地元の橋本選手はタイムダウンに終わったものの、第4戦スナガワを制した杉尾選手が1分38秒918というスーパーベストを計測して暫定トップに浮上してみせた。その後はシードドライバーも自己タイムを思うようには上げられず、1分40秒台で推移。上村選手は第1ヒートのタイムで4番手に留まっていた。

 最終走者の大西選手は、例え2位に終わっても上村選手の優勝がなければタイトルが確定する状況となっており、上村選手の4番手という結果により、大西選手の出走時点で2020年タイトルが確定した。しかし、ラリーストでもある大西選手は、荒れた路面にも関わらず中間計時で杉尾選手を約1秒上回る”中間ベスト”を叩き出す激走を披露。最終的には1分38秒740で逆転を果たし、タイトル確定の大一番を優勝で飾ることができた。

 SC2クラスの大西選手は「今年は勝っていないので、勝ってチャンピオンを獲りたいという気持ちが強かったんです。2本目は走ってる途中で実況アナウンスから“ベストタイム更新”と聞こえたので、根性で踏みました(笑)。今年は3戦という少ない競技数の中で、安定して力を出せたことが結果に結び付いたと思います」と語る。

 1980~90年代にはラリードライバーとして全日本で活躍した大西選手。2010年代からは全日本ラリーと全日本ダートラに復活。2013年からは全日本ダートラSA2を戦い、2019年からはSC2に移行していた。2020年は長い競技歴で初の全日本タイトル確定となった。

 昨年から激しいタイトル争いを演じているDクラス。今シーズンも接戦となっており、最終戦を前に、2019年チャンピオン炭山裕矢選手をポイントリーダーとして、田口勝彦選手と谷田川敏幸選手、鎌田卓麻選手という4名のシードドライバーたちにタイトル獲得の可能性が残されていた。

 土曜の公開練習から圧倒的な速さを見せていたのは、開幕戦コスモスを全日本ラリー参戦で欠場していた鎌田卓麻選手。第4戦スナガワでは優勝したものの、第2戦恋の浦では優勝したとしても他の選手の成績次第ではタイトル獲得に及ばないという状況だ。

 公開練習の第2ヒートこそ炭山選手が勝利したものの、鎌田選手としては「2本目は本番のタイヤ選択を試しただけで、おかげでその選択はないことが分かった」と淡々。日曜の決勝では、Dクラスの路面状況がどう変化するかは未知数だったものの、第1ヒートの鎌田選手は、1分35秒616という後続に1

秒差を付けたタイムで暫定トップに立った。

 第1ヒートはタイトル争いを演じる4名がきっちり上位を争い、2番手に炭山選手、3番手に谷田川選手、4番手に田口選手が付けていた。今年のシードドライバーが最終戦でタイトル争いを繰り広げており、最高峰クラスに相応しい手に汗握る時間を与えてくれた。

 しかし、第2ヒートでは鎌田選手の1分35秒台をターゲットに各選手が必死のアタックを繰り広げたが、ノンシードでは1分39秒台に留まり、シードドライバーとして最初にスタートした鎌田選手は1分36秒台でタイムダウンとなった。続く3名のシードドライバーは、田口選手、谷田川選手とも1秒近くタイムを落としてしまう。最終走者の炭山選手は1分37秒台に留まった。この結果、第1ヒートのタイムで鎌田選手の優勝が決まった。

「開幕戦を欠場していたので、自力でタイトルを獲得するのは難しい。そういった意味ではタイトルを意識せずに勝ちを狙いに行きました。Dクラスはすべてのヒートが勝負なので、1本目から力を出し切りました」と語る鎌田選手が今季2連勝。「このタイトルを獲れなかった悔しさは、全日本ラリーで取り返す!」と次戦に頭を切り替えた。

 そして、Dクラスのタイトル争いは、第2ヒートの終盤では、鎌田選手が第1ヒートのタイムで暫定トップに立ち、炭山選手の前に出走した谷田川選手が3番手に終わった。この結果から、最終走者・炭山選手の走行中に、炭山選手の2020年タイトルが確定。炭山選手も中間ではタイムを落とし、そのままタイムダウンに終わったことから第1ヒートのタイムで2位。優勝では飾れなかったものの、炭山選手がDクラス2連覇を達成した。

難しい路面にもアクセル全開で挑んだ大西康弘選手が杉尾泰之選手を逆転して今季初勝利。
全日本ラリーの参戦経験も豊富な大西選手。全日本選手権では初のタイトル確定となった。
SC2クラス表彰式。優勝は今季初勝利の大西康弘選手。2位は杉尾泰之選手、3位は橋本和信選手、4位は上村智也選手、5位は吉村修選手、6位は亀田幸弘選手。
第4戦スナガワに続いて恋の浦でも観客を魅了する走りを披露した鎌田卓麻選手が2連勝。
全日本ラリーにも参戦する鎌田選手。「この悔しさはラリーで晴らす」と頭を切り替えた。
Dクラス表彰式。優勝は今季2連勝の鎌田卓麻選手。2位は炭山裕矢選手、3位は谷田川敏幸選手、4位は田口勝彦選手、5位は河内渉選手、6位はファビアR5で挑んだ福永修選手。
第2ヒートの出走中に2020年タイトルが確定した炭山裕矢選手。Dクラス連覇を達成した。
今回の表彰式では、今シーズンのPN3クラスに懸けられた「Moty's Challenge」の年間表彰も行われ、山崎利博選手と和泉泰至選手、河田富美男選手に賞典が贈られた。
また、Dクラスには「ORC Trophy Super D」が懸けられており、炭山裕矢選手と鎌田卓麻選手、同順位の谷田川敏幸選手と田口勝彦選手にシリーズ賞典が授与された。
今大会では発売されたばかりのGRヤリスがデモ走行。ダート走行に適した装備や安全装備を施した仕様で、特に最後の走行では今後に期待できるポテンシャルの高さを見せた。

フォト/西野キヨシ、廣本泉、JAFスポーツ編集部 レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部

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