宇野学ランサー、最終SSの大逆転で、JAF東日本ラリー再開初戦を制す

レポート ラリー

2020年10月19日

長らく中断を余儀なくされていた今年のJAF東日本ラリー選手権が10月3日、長野県で再開され、最終SSまでバトルが白熱したBC1クラスは宇野学/原田直人組が逆転優勝を飾った。

2020年JAF東日本ラリー選手権第9戦
JMRC関東ラリーカップ/長野県ラリーシリーズ第4戦
FRC RALLY MOUNTAIN CROSS 2020

開催日:2020年10月3日
開催場所:長野
主催:FRC

10月3日、JAF東日本ラリー選手権と長野県ラリーシリーズのダブルタイトル戦である「FRC Rally Mountain Cross」が開催された。コロナ禍の影響で今シーズン東日本戦は実質2戦目、長野県戦では初戦となった。

7月にはJAFからイベント開催に際しての感染対策のガイドラインが出されたが、それに準拠する形でラリーは運営された。具体的にはラリー当日の検温や会場でのマスク着用の徹底、受付・開会式・表彰式の簡素化、サービスの設定を削除、TCカードの受け渡しの簡素化などが行われた。また主催者は、リエゾンを減らして周辺地域へ配慮することなどについても、地元自治体へ説明を行った。

こうした対策の影響から、SSは1本の林道のみを使用。最初の往復では林道を2分割して、3.4kmと2.1kmを2度ずつ走り4SSをクリアする。その後は分割した林道を通しで使用してこちらも2往復してフィニッシュするトータル8SS、約36kmのステージ距離が確保されていた。

ただし今までのラリーと違う様式での開催となり、サービスを挟まない設定のために、タイヤ交換やマシンセッティングの変更は大きく制限された。また、オールターマックの林道とはいえ、8回もラリー車が走ることから、泥などによる路面状況の悪化が勝負の行方を左右することも考えられた。

BC1クラスは、まずはSS1で鈴木歩/遠藤竜太組が幸先のいいスタートを切るが、SS2, SS3と連取した宇野学/原田直人組が逆転、しかしSS4で再び鈴木組がベストを出してトップを奪い返すというシーソーゲームが展開される。しかし、SS5になると今度は内藤学武/小藤桂一組がトップタイムを叩き出して一気に首位へと躍り出た。

今年の全日本ラリー選手権の開幕戦、新城ラリーのJN4クラスをスイフトスポーツ(ZC33型)で制している内藤選手が、父親が所有のランサー・エボVをラリー仕様に仕立てて、東日本戦へとエントリーしてきていたのだ。「ランサーでラリーに出るのが子供の頃のちょっとした夢だったんです。全日本ラリーのインターバルが大きく空いて余裕のあるいま、叶えてしまおうと思って」と話していた内藤選手だったが、クラスが違うとはいえ全日本戦で優勝するだけの地力を持つだけに、ステージ距離が伸びてくると一気に優勝争いへと絡んできたのだった。

この後はSS6で宇野組が、SS7では内藤組がベストタイムをマークし、目まぐるしくトップを入れ替えながら最終SSを迎えた。今回のラリー、SSスタート前に競技車がプールするために、走り出すまでにかなり時間がある。そのため、お互いに正確にタイム差をチェックできていたのだが、再度トップを明け渡していたのを知った宇野選手は、「差が3.7秒と聞いて、内藤君に『勝負なッ!』と言ってスタートしました」。

結果は内藤組に8.1秒の大差をつけるベストタイム。土壇場で大逆転を果たした宇野選手は、「ステージごとにトップが入れ替わるラリーで結構疲れましたけど、ゴール後、内藤君のタイムを聞いて逆転で優勝を手にできたと知った時は、久しぶりにイイ歳こいて嬉しかったです(笑)」と喜びを爆発させていた。

BC2クラスはヴィッツCVTで全日本ラリー選手権JN6クラスに参戦中の明治慎太郎選手が86でエントリーしてきた。「今年からラリーを始めたいというコ・ドラの立久井大輝選手の実践経験を積むために出場しました。ペースノートはもう普通に読めるので、あとはマネジメントなどを覚えてもらえれば」と明治選手が話したように、その走りは破綻を来たすことはなかった。

各ステージでクラスベストはもちろんのこと、総合でもトップ争いを演じて、終わってみれば総合優勝も勝ち取ってみせる速さで優勝。2位にはこれまで乗っていたインテグラからスイフトスポーツ(ZC33型)にスイッチした森岡大次郎/伊藤克己組が入った。「今日はクルマの感触を確かめたかったので参戦しました。パンチは前に乗っていたインテグラの方がありますけど、このスイフトの方が軽快に感じられました」とマシンの手応えを感じられたようだった。

BC3クラスはチームメイトの細谷裕一/蔭山恵組と藤田勝正/阿部琢哉組が各SSでコンマ差の争いを演じていたが、SS3で細谷組が姿を消してしまうと、藤田組の一人旅となった。「ステージ全部ではないですが、自信を持って走れる部分も出てきました」と振り返った藤田組がそのまま優勝。元全日本ラリーチャンピオンの川名賢選手を横に乗せた水貝澄花選手が、川名選手のアドバイスで徐々にペースを掴み、初めてのラリーを2位で完走。元D1レディスチャンピオンの実力の片鱗を見せている。

オープンクラスは昨年、全日本ダートトライアル選手権にデビューした若手の三枝聖弥選手が石田裕一選手をコ・ドライバーに迎えてラック・ラリーチームからエントリー。「暗くなり始めてからのタイムダウンが大きくて」と反省しきりながら首位を守り続けたが、最終SSでコースオフを喫してしまい、コンマ1秒ながら優勝は逃す結果に。このSSでベストを奪ったベテランの中村一朗/迫田雅子組が勝利を手にすることになった。

主催者、選手、関係者等、ラリーに携わるすべての人々にマスク着用の徹底が図られた。
タイムカードの受け渡しは行われず、オフィシャルから提示されたタイムをクルーが自ら書き込む方式が採られた。
BC1クラス表彰の各クルー。
BC2クラスは今年、全日本ラリーでヴィッツCVTを駆って負けなしの速さを見せている明治慎太郎選手が立久井大輝選手と組んで86で参戦。見事、オーバーオールウィンを達成した。
BC2クラス表彰の各クルー。
BC3クラスはベストタイム連発の藤田勝正/阿部琢哉組が最終SSで「右コーナーで砂利に乗ってしまったようで、法面にぶつけてしまいました」と大きくタイムロスするも、それまでのマージンが効いて優勝を果たした。
BC3クラス表彰の各クルー。
オープンクラスでは、ベテランの中村一朗/迫田雅子組が0.1秒という僅差で優勝に輝いた。
オープンクラス表彰の各クルー。

フォト/佐久間健 レポート/山中知之

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