各国のASNが「デジタルモータースポーツ」を積極推進!「リアル」との連動も

ニュース その他

2020年10月19日

FIAは10月8日、「デジタルモータースポーツが各国ASNで成功した」と題するレポートを発表。新型コロナウイルスの影響による活動休止後も各国のモータースポーツ連盟の働きかけによって、デジタルモータースポーツが発展している、とレポートした。

FIAレポートによれば、FIAが推進する「#Race At Homeプログラム」は、各国のASNがデジタルモータースポーツを立ち上げるためのサポートプログラムで、その効果は高く、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による活動自粛後も様々な国でデジタルモータースポーツが独自の分野としての地位を確立していると報じている。

トリニダード・トバコでは今年の「TTASA eスポーツ・GTスポーツ・デジタルカップ」に僅か3日間で60人以上の応募者が登録した。メキシコの自動車連盟が設立した「バーチャルNACAMラリーチャンピオンシップ」は、より広い地域をカバーしており、この地域の12か国から500人以上が参加している。

デジタルモータースポーツは若者に人気があり、参加にあたる初期費用も抑えられることから、各国のASNも参加費を安く設定している。その成功例が前述のトリニダード・トバコのデジタルカップやメキシコのバーチャル選手権で、その他にもアセット・コルサを使用したチェコの「チェコ・シムレーシング・シリーズ」やジョージアで開催された「デジタルモータースポーツシリーズ」が成功を収めたと報じている。

また、デジタルモータースポーツが成功した理由の一つとして、イベントのプロモーションが挙げられており、前述の各シリーズとも動画配信サイトやSNSでのライブストリーミングを設定。ジョージアのASNではシリーズの最後に実際の賞を授与する表彰式の開催を計画している。 これに加えて一部のASNではトップレベルの“レーサー”を輩出すべく、ステップアップのルートを確立しつつある。

例えばチェコのシリーズでは、チャンピオンが2021年開催予定の「FIAモータースポーツゲームズ」の代表となるほか、トリニダードトバコでも優勝者が「ポルシェTAGヘウアーEスポーツ・スプリントトロフィー・ラテンアメリカシリーズ」の代表となるなど、さらなるステージへのチャンスが与えられている。

またデジタルモータースポーツはリアルモータースポーツへの足がかりにもなっており、チェコのシリーズのチャンピオンは2021年のFIAモータースポーツゲームズへの参戦に加えて、1レースながら、ルノー・トゥインゴによる「VAT ESETカップ」への参戦を提供。さらにメキシコのバーチャル選手権も2021年にラリー参戦のチャンスが与えられるなど、各国のASNによってデジタルモータースポーツが着実に地位を確立しつつある。

ちなみに、日本のASNにあたるJAFも9月1日の施行で国内競技規則の一部を改正しており、8月28日の公示でデジタルモータースポーツの統括を表明。同時に2021年1月1日の施行でモータースポーツ専門部会規定の一部改定が行われており、第2条の専門部会の設置において「デジタルモータースポーツ部会」の追加も8月28日に公示されている。

これに加えて第3条の任務においても改正されており、デジタルモータースポーツ部会ではデジタルモータースポーツに関する事項として「1.調査および研究(デジタルライセンスに関するものを含む。)」、「2.デバイスおよびその付帯機器、設備に関する調査、研究」、「3.競技会およびイベントに関する事項」、「4.諸規則の立案および統一解釈」などを追加。さらに第4条の構成でも専門部会の委員の定員として「デジタルモータースポーツ部会:7名」という項目が追加されたことは記憶に新しい。

昨年は、日本国内でもSF19を使ったデジタルモータースポーツ・レースシリーズである、JAF認定「スーパーフォーミュラ・ヴァーチャルシリーズ」が全日本スーパーフォーミュラ選手権を運営する日本レースプロモーションにより全国規模で開催された。各大会の成績優秀者はスーパーフォーミュラ最終戦・JAF鈴鹿グランプリに集結して「グランド大会」に挑み、鈴鹿サーキットのポディウムで華やかなシリーズ表彰式も行われている。

また、今年はスーパーGTシリーズのタイトルスポンサーとして知られるオートバックスセブンが、国内最大規模の「eモータースポーツ大会」として開催予定の「JeGT GRAND PRIX」のメインスポンサーとなることもリリースされている。これは「AUTOBACS JeGT GRAND PRIX 2020 Series」として12月19日から開幕し、2021年2月にかけて予選、2021年3月にはラウンドファイナルが開催予定、ということで機運は高まっている。

各国のASNと同様に、JAFにおいても専門部会を設立してデジタルモータースポーツの推進を実施。今後は自動車メーカーなど関連企業の参入も予想されるほか、リアルモータースポーツとのリンクも期待されるだけに、2021年は世界各国と同様に日本でもデジタルモータースポーツが大きな飛躍を遂げることが予想される。

昨年のJAF鈴鹿グランプリで開催されたスーパーフォーミュラ・ヴァーチャルシリーズの鈴鹿グランド大会表彰式。鈴鹿サーキットの栄光のポディウムで賞典の授与が行われた。

フォト/堤晋一、吉見幸夫 レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部

ページ
トップへ