スポット参戦で挑む、全日本カート選手権・東地域編

インタビュー カート

2020年9月29日

全日本カート選手権FS-125部門/FP-3部門は、東西に分かれて各5戦のレースが展開される。さまざまな地域で開催されているだけあって、転戦できないドライバーが最寄りのサーキットでスポット参戦できるのも魅力として挙げられる。そんなスポット選手が、何を目的に全日本選手権に参戦し、そして何を得たのかを調査してみよう。

 スポットでシリーズ戦にチャレンジするドライバーには、レギュラー参戦の選手とはまた違った楽しさがあり、難しさがあり、出場の意義がある。そんなスポット参戦ドライバーふたりの姿を、9月19~20日に千葉県・茂原ツインサーキットで開催された全日本カート選手権・東地域第3戦で追ってみた。

■蒲生尚弥選手(がもうなおや/30歳/のりものクラブ) 全日本カート選手権FP-3部門参戦
 タイムトライアル7位/予選3位/決勝1位

 この大会の大きなトピックスとなったのが、蒲生選手の参戦だった。なにしろ元全日本ドライバーという肩書だけでなく、2018年にスーパーGT・GT300クラスのチャンピオンに輝き、この大会の1週間前にも同クラスで優勝を飾ったばかりのビッグネームなのだ。

 蒲生選手がカートレースに復帰したのは今年のこと。FP-3部門・西地域のベテランドライバー・坂裕之選手がGR 86/BRZレースに出場した際、蒲生選手と同じチームになり、その誘いでカートレース再開となった。

 それも鈴鹿、もてぎ、瑞浪、APGと全国に足を延ばし、「出られるレースは全部出ようと思って」という熱中ぶりだ。坂選手に加え、元全日本ドライバーの澤田寛治氏がメカニックを担当する豪華な布陣のパドックには笑い声が絶えず、蒲生選手も実に楽しそうなレースウィークを送っている。

「目標は、まずクラッシュしないで走り終えること。トップ10には入りたいですね」という蒲生選手は、タイムトライアル7位、予選3位と上々の出だし。そして決勝では4台一丸の先頭集団に加わると、ラスト3周でトップに立ち、見事優勝を飾った。これは蒲生選手にとって全日本初優勝であり、KT100Sエンジンのレースでも初優勝。さらに2週間前のピレリスーパー耐久第1戦・ST-1クラスの勝利から続く3週連続優勝という、お目出度づくしの結果だった。

「今年のカートレースはこれが最後になりそう」とのことだが、その雄姿をカートコースでぜひまた見たいものだ。

「前も年に1、2回は練習でカートに乗っていたけれど、坂さんに誘っていただいて、またカートを買ってレースに出ることになりました。KTエンジンのレースにしたのは、まずお金がかからないこと。それと、KTでは坂さんが速いので、坂さんと勝負したかったというのもあります。カートはどんなエンジンでも関係なく、乗っていて楽しいですね。(4輪のドライバーには)トレーニングで乗っている人もいるけれど、僕にとってはあくまでも趣味。今回も仲間とチームを組んでワイワイやりながら走る楽しさを、改めて感じています。スポット参戦で感じたのは、いろんな土地に行っていろんなサーキットを走る気分の新鮮さ。その土地の美味しいものを食べに行くのも楽しみだと思いますよ」
「決勝は特にレースを組み立てることもなく走っていたんですが、優勝できてめちゃくちゃうれしいです。僕のカートはストレートが伸びたので、落ち着いてやれたのがよかったのかなと思います。走っていて楽しかったし、みんながいっしょにレースをやってくれて、この雰囲気がよかったです。できれば来年またやりたいですね」

■石原貴博選手(いしはらたかひろ/42歳/TMAUTO/IRS) 全日本カート選手権FS-125部門参戦
 タイムトライアル22位/予選DNF/決勝14位

 石原選手はカート歴約15年のベテラン。現在はもてぎのMAXマスターズクラスをメインにレース活動を行い、チャンピオン獲得経験も多いドライバーだ。実は石原選手、全日本ではいつもOK部門を戦う綿谷浩明選手のメカニック役。今回は地元の千葉県で行われる大会に、ドライバーとしてやってきた。全日本に出場するのは、2017年のスポット参戦(この時も茂原大会)以来2回目のこと。今回のレースには、ワンメイクのパリラX30エンジンをレンタルしての出場だ。

 この大会で、石原選手はひとつの問題を抱えていた。大会前週の練習走行でコースサイドのバリアに接触して転倒。骨折などの重傷はなかったものの、万全とは言えない体調でのレースだったのだ。

 大会初日のタイムトライアルでは、23台中22番手に。一夜明けて決勝日。「朝はリタイア届けを出そうかと思っていた」という石原選手だったが、仲間から痛み止めをもらって励まされ、出場を決意。予選は体を労わってヒート中盤に車検場へ戻り、決勝に備えた。

 そして迎えた24周の決勝。21番グリッドからスタートした石原選手は、体に厳しいといわれる茂原東コースで、慣れないX30エンジンを操りながら、着々と順位を上げていく。フィニッシュは15番手。前の1台にペナルティがあり、結果は14位となった。「家族が許してくれれば来年も出たいですね」と、厳しい戦いを7ポジションアップで終えた石原選手の顔には、充実の笑みがこぼれていた。

「長年MAXをやってきて、もてぎでは5回チャンピオンを獲ったので、自分がどのくらいできるかチャレンジしたくて参戦しました。刺激をもらいに来た感じですね。普段のレースより確実に緊張感があります。バイタリティのある若者たちを相手にするので、無理せず大人のレースをしたいなと思います。今回のため、1カ月半前から毎日5kmのランニングとプールでトレーニングしてきました。このコースを走るのは2017年のスポット参戦以来。違和感とか攻めづらさはないんですが、全日本になるとまた雰囲気が違ってきますよね。本当はトップ10が目標なんですが、先週ひっくり返っているので、怪我なく完走したいと思います」
「一週間前にはレースに出られる気がしないような体調だったところから、こうして完走できました。全日本はレースディスタンスが長いのが一番の違い。普段12周のレースをやっている自分が、24周のレースでどれだけもつのかのチャレンジでした。レベルが高いドライバーたちと走れるのも魅力でしたね。2017年に出た時より体力も集中力ももって、楽しむことができました」

フォト/小竹充 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

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