レスキュー訓練も開催。JAF中四国ラリー選手権は天王山の一戦が白熱!

レポート ラリー

2020年9月23日

8月29日、愛媛県久万高原町を舞台とするJAF中四国ラリー選手権の一戦、MACラリーが開催された。全日本ラリーのフィールドとしても知られるグラベルロードで、タイトルレースへの生き残りを賭けたホットバトルが展開された。

2020年JAF中四国ラリー選手権第4戦
2020年JMRC中国・四国ラリーシリーズ第4戦

MACラリー in 久万高原
開催日:2020年8月29日
開催場所:愛媛
主催:MAC

 JAF中四国ラリー選手権は例にもれず、大幅なスケジュール変更が行われているが、日程的には当初の予定通りとなる8月29日に、「MACラリー in 久万高原」が開催された。シリーズとしては第4戦目となるが、実際には8月8日に開催された「てっぺんラリー」に続くシーズン2戦目の開催となる。

 今回も新型コロナ感染拡大防止のため、2週間前から関係者全員の検温を実施し、WEBにて問診票を送付するシステムが採られたほか、当日も受付で検温が実施された。また、今回はそれぞれのチームが独自で炊事をすることによる感染拡大を防ぐ目的から、サービスの時間は設けられず、昼食も弁当が配布される形となった。

 コースは過去、全日本久万高原ラリーでも使用された、下りの林道1本6.6KmがSSとして設定され、この林道を3回走行する約20kmでの戦いとなった。路面状況は完璧な補修がされていたが、土を入れて轍を埋めただけのような柔らかい路面に、水切りのためのギャップ(盛り土によるグレーチング)が到る所にある難しいステージとなっていた。これが幸いしたか、SS1よりもSS2、SS2よりもSS3の方がタイムアップするという、グラベルでは珍しい路面状況となった。

 残念なことに前戦から2週間のインターバルしかなかったためか、エントリーは17台。FG-2クラスは不成立となってしまった。ただFG-1クラスは、前回とほぼ同様の10台がエントリーしていた。前戦のウイナー長江修平/中岡和好組は、ラリースタート直後に、『センターデフを確認して下さい』とのアラームメッセージが点き、SS1ではそのセンターデフのトラブルに見舞われて、思うような動きにならず、早くも戦線離脱となってしまう。

 続く寺川和紘/美野友紀組は、2番手のマクリン大地/大橋正典選手組に4.6秒の差を付けるベストタイムを出し、上々のスタートを切る。「凄く滑る路面でしたが、他の選手がついてこれないだろうと、思い切り踏んだ結果です」と作戦成功なった寺川選手だったが、続くSS2ではマクリン組がベストタイムを奪い、その差は3.2秒に縮まった。最終SSとなるSS3でもマクリン組はベストを叩き出したが、寺川組に僅か0.8秒届かず、2位に終わった。

 優勝した寺川選手は「勝ったことは嬉しいですが、SS2以降、マクリン選手にベストを獲られたのは悔しいですね。反省の多いラリーとなりました。でも次の一戦に向けて方向性が見えたので、そこも勝ってチャンピオンを決めたいです」と自信のコメントを残した。

 一方2位に甘んじたマクリン選手は、「SS1でリアを引っ掛けて、転倒しかけたんです。それが敗因かもしれませんね」と悔しさを滲ませた。「でも久しぶりにタイムが出て、最後まで壊さずに走れたので良かったです。2本もベスト獲れたというのは、クルマに慣れてきた結果だと思うので、次はもっと頑張ります」と期待の持てるコメントを残した。

 3位にはSS3でマクリン組から遅れること0.6秒のセカンドタイムを出した堀江拓/馬瀬耕平組が入賞した。「ショックの減衰を毎回調整して走って、走る度にタイムアップできたので、最初から硬めで行った方が良かったのかもしれないですね。今までの経験から最初のセッティングを出しましたが、トラクションが掛からなかったSS1で遅れたことが、すべてですね」と肩を落としていた。

 FG-3クラスは松原久/廣瀬香織組と小川剛/梶山剛組の全日本対決となったが、終わってみれば松原組のワンサイドゲームで終わった。小川選手は「今回はタイヤも変わったし、ラリー北海道に向けたテストですから」と鼻から勝負はせずテストに徹した走りだったようだ。優勝した松原選手は「SS1は怖かった。タイヤがまったく食わんかった」と話すが、小川選手とは30秒の差。「SS2からはタイヤの空気圧を調整して、大きな岩をよけて走りました」と余裕の走りで2連勝を飾った。

 FG-4クラスは前戦ではスピンが致命傷となり、2位に終わった松岡竜也/縄田幸裕組が今回は好調だった。SS1こそオーバーステアに悩まされたが、SS2ではセッティングを変えたのが功を奏しベストタイム。SS3は安藤恭平/原野雅子組にベストタイムを譲るも逃げ切って優勝。次回は両クルーがチャンピオンを賭けて、一騎討ちすることになった。

FG-1クラスは寺川和紘/美野友紀組がSS1で作ったマージンを守り切って、今季初優勝を達成した。
前戦では3位に甘んじた寺川/美野組だが、今回はリベンジを達成、タイトルレースでも優位に立った。
FG-3クラスは、2週間後のラリー北海道に向けたセッティングテストも兼ねて参戦の松原久/廣瀬香織組が快勝した。
FG-4クラスでは、松岡竜也/縄田幸裕組が、今年からドライブする86に初優勝をもたらした。
全日本チャンピオンコンビでもある松岡/縄田組が息の合ったコンビネーションを見せて優勝。

万全の感染防止対策を施して、「JAFラリー競技における救急活動訓練」が同日に開催

 今回はラリー競技でのクルー・レスキューマーシャルのスキルアップを目的とした、「JAFラリー競技における救急活動訓練」が実施された。講師には全日本ラリーではお馴染みの紙谷孝則医師や救命救急士の吉田恵助氏らが務めたが、今回は、救急隊が実施している新型コロナウイルス感染予防についての内容も含まれていた。

 受講対象は選手はもちろん、オフィシャルやサービスのスタッフも含まれていた。密になることを避け、合計5回に分けて少人数で実施された。毎年、全日本ラリー選手権唐津で実施されていたこの訓練では、クルマからの救助については、負傷者を想定したダミー役の人物を救助する形が採られていたが、今回は人同士の接触を避けるため、ダミー人形を使用しての訓練とされた。そのダミー人形についても、一人が使用するごとに消毒を実施するなど、感染対策を徹底した訓練となった。

 訓練の内容は前述したように、クルーが負傷して自力で車外に脱出できず、なおかつ火災等によりクルーの生命に危険が差し迫った状況を想定して、負傷したクルーをもう一人のクルーが単独で車外に引き出す際の身体の保持方法及び引き出す方法を、FIA INSTITUTEセミナーに基づいた救出訓練で取得するというもの。今回はこれまでの訓練に加えて、独自に作成されたビデオも使用して、胸骨圧迫による心肺蘇生術を学ぶ訓練も含まれていた。

 訓練の内容については、新型コロナウイルス感染予防を踏まえた措置も盛り込まれたことで、参加者からは確認の質問が多く出されていたのも、今回の訓練の特徴のひとつになった。受講者は、講習終了時にアルコール消毒を実施した後、会場をあとにした。

「ラリーにおいては、起こってはいけないことですが、万が一起こった場合は参加している選手の皆さんが一番に発見し、アクシデントに出くわすことになります。そういう意味でも今回学んで身につけて頂いたことをその時に確実に実践できるようにして下さい」と当日、挨拶したJAFモータースポーツ部杉田崇仁課長の言葉通りに、競技参加者がまず最初の救護者となり得るのが、ラリーという競技が他のモータースポーツと大きく異なるところだ。

 しかし、このような訓練は一度受けただけで、すべてを確実に覚えられるとは限らない面もあるのもたしか。そのためにもリピートして受けることにより、自分自身のものになるはずだ。今後も、多くのラリー関係者の受講を期待したい。

全日本ラリー選手権久万高原ラリーではHQとなる白銀荘で訓練は行われた。参加者は検温・手指消毒などが義務付けられた。
主任講師を務めたのはJAFメディカル部会委員でもある紙谷孝則氏(左)。救急救命士である吉田恵助氏を中心とした講師陣が訓練の指導役を担当した(右)。
まずは吉田氏が救出の見本を示すとともに、注意点等を講師陣とともに解説した。感染防止のため、今回はレーシングスーツを着たダミーの人形が使われた。
続いて参加者が一人ずつ、単独での救出作業を体験した。
ビデオ映像を用いて胸骨圧迫による心肺蘇生術を学ぶ訓練も行われた。
ラリー競技における単独で行う救出作業の重要性を語ったJAFモータースポーツ部の杉田崇仁課長。参加者は皆、真剣な表情で訓練に臨んでいた。

フォト&レポート/山口貴利

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