スポット参戦で挑む、全日本/ジュニアカート選手権・西地域編

インタビュー カート

2020年9月15日

カートの楽しみ方は千差万別。シリーズにフル参戦でチャンピオンを目指す選手もいれば、スポット参戦で一戦限りの勝負に挑む選手もいる。そこで今回はスポットドライバーたちに焦点を当て、全日本/ジュニアカート選手権にかける意気込みと、参戦する意義、スポットの魅力について尋ねてみた。

 全日本カート選手権とジュニアカート選手権は、東は宮城県から西は岡山県まで、全国各地のサーキットを転戦するシリーズ戦だ。その価値は、シリーズ全戦に参加してチャンピオンを目指すことだけではない。

 普段ホームコースのローカルレースに出場しているドライバーにとって、地元近くのサーキットで行われる大会は、日本一のレースに手軽にチャレンジできる貴重な機会にもなるのだ。

 そんな“スポット参戦ドライバー”たちの姿を、9月5~6日に岡山県・中山カートウェイで開催された全日本/ジュニアカート選手権・西地域第4戦の会場で追ってみた。

■下田桃也選手(しもだとうや/15歳/Fiore Motor Sports) 全日本カート選手権FP-3部門参戦
 タイムトライアル19位/予選17位/決勝14位

 現在は全日本が開催されていない九州から、もっとも近くのサーキットで行われる中山大会へチームメイトとともに遠征してきたのが、福岡県在住の下田選手だ。カートを始めて3年目、うち1年間は受験で活動休止だったというフレッシュな15歳。ハキハキとした受け答えが印象的なドライバーだ。九州以外のコースへの参戦は、今回が初めてだという。

 ホームコースの中九州カートウェイ(熊本県山鹿市)では今季、ヤマハSSクラスで開幕戦優勝、第2戦も3位入賞と快進撃を続けている下田選手だが、練習日からホームコースとの路面グリップの違いに戸惑っていたこともあり、タイムトライアルでは20台中19番手。17周の予選は17位でゴールとなった。

 そして迎えた決勝。厳しい暑さの中のレースで、下田選手はスピンを喫する場面もあったが、体力面の不安を克服して30周の長丁場をしっかり走り抜き、14位完走で初の全日本参戦を締めくくった。自身のレースを終えて、スタンドから他の部門の戦いを観戦するその顔には、充実の笑顔が浮かんでいた。

「ホームコースのレースではちょっとずつトップの人たちと絡めるようになって、成績もだんだん残せるようになってきたので、自分が全国ではどの程度の位置にいるのかを知りたくて今回参戦しました。ただ、このコースの路面はホームコースに比べてすごくグリップするので、体力面が少し不安でした。台数が多い中でのバトルやレースの長さに慣れる必要も感じています。目標はトップの集団から離されずに走ること。楽しみな気持ちと不安の両方がありました」

■大倉魁人選手(おおくらかいと/13歳/Rush with WINNER) ジュニアカート選手権FP-Jr部門参戦
 タイムトライアル5位/予選4位/決勝4位

 まさに地元の大会に兄弟そろってスポット参戦してきたのが、岡山県在住の大倉魁人選手と正真選手だ。走行後はいつも自分たちで清掃しているというマシンは、新車以上とも思えるほどピカピカで、レースに対する真摯な姿勢がうかがえる。兄弟おそろいのシルバークロームカラーのヘルメットは、陽に照らされたサーキットで美しく輝き、目立ち度抜群だった。

 FP-Jr部門に出場する兄・魁人選手は、同じ中山カートウェイで行われた昨年の西地域第5戦に続き、2度目のチャレンジ。最初の参戦が14台中10位と悔しい結果に終わり、今回はそのリベンジを期しての参戦だ。

 予選では6台中5番手からのスタートで3番手に上がり、中盤にはさらに1台を抜いて一躍2番手に浮上。だが、後続とのアクシデントでスピンを喫し、ゴールは5番手となった。前のマシンのペナルティで4番グリッドからのスタートとなった決勝では、背後に貼り付くマシンとの長いマッチレースとなったが、魁人選手はこの追撃を最後まできっちり封じ込め、ポイント獲得まであと一歩の4位でレースを終えた。

「去年、初めてジュニア選手権に出たけれどダメだったので、今回こそやってやろうと思って参加しました。普段のローカルレースとは雰囲気も違うし、同じ年代の選手たちと走れるのが面白いと思います。目標は優勝。勝って次につながるレースをしたいです。将来は、いい流れをつかめたら4輪のレースにも出てみたいと思うし、そうならなかったとしても、カートで経験したことを大人になった時に活かせたら、と思っています」(魁人選手)

■大倉正真選手(おおくらしょうま/9歳/Rush with WINNER) ジュニアカート選手権FP-Jr Cadets部門参戦
 タイムトライアル9位/予選8位/決勝7位

 一方、元気いっぱいの受け答えでインタビューに応じてくれた弟の正真選手は、FP-Jr Cadets部門に出場。ジュニア選手権は今回が初めての参戦だ。

 タイムトライアルではトップと0.7秒弱の差で最下位の9番手に留まったが、予選ではふたつポジションを上げて7番手でゴール。しかし、フロントフェアリングのペナルティで決勝のグリッドは8番手となった。そして決勝では、大きく離されていた前走車を追い詰め、レース終盤にはセカンドグループに加わって3台での接近戦を展開。7位フィニッシュでデビュー戦を終えた。

 台風10号が九州に接近して中山カートウェイも突然の大雨に見舞われたレース後、大倉家は急ぎ足での帰宅となったが、後片付けの手際の良さは見事。爽やかな印象を残してサーキットを去っていった。

「地元のコースでジュニア選手権の大会があるので、それに出たくて、勝てるように練習してきました。土曜日の仕上がりはまあまあ。もう一歩くらいのところですね。(全日本の大会でも)いつもと同じ感じで走れています。今回の目標は1位。全日本で表彰台に上がってチャンピオンになりたいです。将来の夢は、F1レーサーになることです。好きなドライバーは(OK部門の)佐藤凌音選手と佐々木大樹選手です」(正真選手)

フォト/遠藤樹弥、JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

ページ
トップへ