森岡泉美選手が待望の今シーズン初優勝、昨年に続き中山2連覇!

レポート カート

2020年9月9日

岡山県・中山カートウェイで9月6日に開催された全日本/ジュニアカート選手権西地域第4戦で、女性ドライバーが大活躍を演じた。全日本FP-3部門では、森岡泉美選手(Formula Blue Ash)がポール・トゥ・ウィンで自身全日本選手権2勝目。またジュニア選手権FP-Jr部門では、佐藤こころ選手(チームナガオ)が前戦の神戸大会に続く逆転優勝で同部門デビュー2連勝を飾った。全日本で女性ドライバーが2勝目を記録するのも、同一大会で複数の女性ドライバーが優勝するのも、日本カート選手権の歴史で初めてのことだ。

2020年JAF全日本カート選手権FS-125部門/FP-3部門 西地域第4戦
2020年JAFジュニアカート選手権FP-Jr部門/FP-Jr Cadets部門 西地域第4戦

開催日:2020年9月5〜6日
開催地:中山カートウェイ(岡山県和気町)
主催:株式会社山陽スポーツランド

 強力な台風10号ハイシェンが沖縄から九州西部へと迫ったこの日、中山カートウェイは朝から快晴に包まれていた。それが大会の最後に行われた全日本FS-125部門の決勝では、中盤戦に入った辺りでコース上空に不気味な黒雲が発生。

 そのレースがドライコンディションのまま規定周回数でのフィニッシュを迎えると、直後に雨粒が落ち始め、暫定表彰式が始まるころには数分前の青空が嘘のような土砂降りに。大会は間一髪で、すべての走行スケジュールを良好なコンディションのまま終えることができた。

大会当日は台風接近による影響が懸念されていたが、西地域第4戦の中山サーキットは絶好のカート日和となった。
FS-125部門の決勝レースが終わって暫定表彰式に移行する直前、雲行きが急変し、土砂降りの雨に見舞われた。

 この日行われた4部門のうち最多となる20台が参加した全日本FP-3部門では、森岡選手が予選で4つポジションを上げて決勝のポールを獲得した。

 前戦の決勝ではセカンドグリッドからのスタートで大きく順位を落とした森岡選手だったが、今回はしっかりスタートを決めて先頭のまま30周の長いレースを開始することに成功、背中に貼り付く4台を引き連れて序盤戦のラップをこなしていった。

 そのレースが中盤戦に入ると、森岡選手の後方で佐々木克行選手(DDT.HISTRY)、竹本優月輝選手(TAKAGI PLANNING)、坂上真海選手(TAKAGI PLANNING)、舟橋弘典選手(HIRAI PROJECT with Ash)の4台によるバトルが勃発。やがてこの集団に11番グリッドから挽回してきた関優成選手(TEAMぶるーと)も加わり、2番手争いは熱を帯びたまま終盤戦に突入していった。

 一方、トップの森岡選手は背後のバトルをうまく利して着実にアドバンテージを拡大、最後は3秒以上にリードを広げて30周の長丁場を走り切った。チェッカーの瞬間、両手を突き上げると天を仰ぎ、ヘルメットバイザーの上から目をぬぐった森岡選手。昨年第5戦での初優勝に続く、中山大会2連覇だ。これで森岡選手は、西地域のランキング首位に躍り出た。

 最後までポジションチェンジの応酬が続いた2位争いを制したのは関選手。前戦でオーバーテイクを躊躇してしまった後悔を発奮材料にして9台抜きを果たし、初表彰台をゲットだ。45歳のベテラン佐々木選手は「みんなでバトルを自制しながらトップを追って、最後の5周で勝負を」というプランは崩れてしまったものの、さすがの3位入賞を遂げ、やはり今季初めての表彰台に立った。

「今年はFormula Blueのサポートドライバーに選ばれて、勝たなければって気持ちもあったし、ポイントを獲らなければって気持ちもあって、ゴールした時は緊張とプレッシャーから解放された気分でした。(ウィニングランでは)泣いてました。単独走行になってからは「あと何周?」と何度も思って、すっごく長い30周でした。全日本初の女性ドライバー2勝目は、正直狙っていたところもあったので、勝ててうれしいです」と安堵した様子でレースを振り返った森岡泉美選手。
FP-3部門西地域の表彰式。左から2位の関優成選手、1位の森岡選手、3位の佐々木克行選手。

 6台が出走したジュニア選手権FP-Jr部門では、ポイントリーダーの宮本颯斗選手(TEAMぶるーと)が決勝のポールに。前戦優勝の佐藤選手はタイムトライアルでトップを獲ったものの、予選ヒートで4番手まで下がったところで前2台の接触に巻き込まれてスピン、決勝は3番グリッドからのスタートとなった。

 すると佐藤選手は、決勝が始まるや2番手に浮上、さらにレース中盤に宮本選手を抜いてトップに立った。ここからレースは、佐藤選手と宮本選手が0.5秒ほどの間隔を保ったままチェイスを続ける緊迫の展開へ。この厳しい局面を、佐藤選手はミスのない走りで乗り切って勝利のチェッカーをくぐった。

 元々は1戦のみのスポット参戦予定だった神戸大会でデビューウィンを飾ったことで、急きょ今回の出場が決まった佐藤選手。次戦以降の参加については未定とのことだが、今後の活躍にますます期待が高まるところだ。

優勝した佐藤こころ選手は「前回勝った時はホームコースで抜き方も分かっていたけれど、中山は抜くところが少ないしミスも許されないコースで、難しかったです。2回連続で勝てて自信がつきました。もし次も出られたら、3連勝を目指します」とコメントした。
FP-Jr部門西地域の表彰式。左から2位の宮本颯斗選手、1位の佐藤選手、3位の落合蓮音選手。

 全日本FS-125部門では、快進撃が続く津野熊凌大選手(Scuderia Sfida)が破竹の開幕4連勝を遂げた。しかも、今回はタイムトライアル1位から予選ヒートを制して初の決勝ポールを獲得し、一日を通じて一度もトップを譲らず走り切るパーフェクトウィンだった。

 しかし、このレースは厳しい戦いだったと津野熊選手はいう。レースウィークの練習では不調に悩み、マシンが納得できる状態に仕上がったのはレース本番直前のこと。さらに決勝では、前戦の最中に折れたフレームを溶接で修復した箇所がレース中に再び折れ、一時は1.5秒近く引き離していた後続集団に0.5秒強の差まで迫られる事態となった。

 こんなピンチにも動揺することなく、痛手を負ったマシンをゴールまできっちり運んだ戦いぶりは、津野熊選手の精神面での充実を証明するものだったといえるだろう。今後の東地域の戦況次第では、東西統一競技会を待たずして津野熊選手がチャンピオン争いに決着をつけることもありそうだ。

 大集団のセカンドグループを率いて2位となった宮島昊雅選手(ATEAM Buzz Motorsport)は、開幕戦以来2度目の表彰台登壇。好調が伝えられていた安藤哉翔選手(ONE POINT)は、2番グリッドからのスタートでのポジションダウンを悔やむも、3位入賞で初表彰台獲得となった。

「練習日には今年いちばん苦しいレースになりそうだと思っていました。そういう状況の中で勝ててうれしいです。決勝で後ろのマシンに接近されてエンジン音が間近に聞こえてきた時はヒヤヒヤでした。チャンピオンはもちろん獲りたいけれど、(東西統一競技会で)東地域の選手たちとの戦いに勝たなければ意味がないので、今はひとつひとつのレースに勝つことだけに集中しようと思います」と、目下4連勝の津野熊凌大選手。
FS-125部門西地域の表彰式。左から2位の宮島昊雅選手、1位の津野熊選手、3位の安藤哉翔選手。

 ジュニア選手権FP-Jr Cadets部門では、ポールからトップを行く城優輝選手(ERS with SACCESS)が、真後ろに貼り付いた楠本誠真選手(ERS with SACCESS)に逆転のチャンスを与えることなく25周を走り切って初優勝。逆転ならず2位となった楠本選手も、チームメイトとの1-2フィニッシュに喜びのガッツポーズだった。

 序盤戦で3番手を走った白石麗選手(HRS JAPAN)は、無念のリタイアに。金子准也選手(ラムレーシング)が最後尾からの挽回で3位入賞を果たし、ポイントリーダーの座をキープしている。

ポール・トゥ・ウィンを決めた城優輝選手。「調子は良くなかったし、(楠本)誠真君が速かったけれど、優勝できてよかったです。最後は接近されたけれど、絶対に優勝するぞ、と思って走りました。表彰台の真ん中からの眺めは、すごく綺麗です」と優勝を喜んだ。
FP-Jr Cadets部門西地域の表彰式。左から2位の楠本誠真選手、1位の城選手、3位の金子准也選手。

フォト/遠藤樹弥、JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

※掲載内容に不十分さがあったため、修正して再公開しました。

ページ
トップへ