PN2宝田ケンシロー選手、”後がない”2本目の逆転劇で今季2連勝を挙げる
2020年8月28日
3月の開幕以来、大会延期や中止が続いてきた全日本ダートトライアル選手権。北海道のオートスポーツランドスナガワで、ようやく今季2戦目の大会が行われた。コロナ禍の影響で最終的な出走は69台となったが、久々の本番では各クラスで熱き戦いが展開された。
2020年JAF全日本ダートトライアル選手権第4戦
「北海道ダートスペシャルinスナガワ」
開催日:2020年8月8~9日
開催地:オートスポーツランドスナガワ ダートトライアルコース(北海道砂川市)
主催:AG.MSC北海道
3月14~15日に京都コスモスパークで開幕しながらも、新型コロナウイルス感染症の影響により延期や中止が続いていた2020年JAF全日本ダートトライアル選手権が再始動した。
8月8~9日、北海道砂川市のオートスポールランドスナガワ・ダートトライアルコースを舞台にシリーズ第4戦の「北海道ダートスペシャルinスナガワ」が開催され、約5か月ぶりにダートトライアルの最高峰シリーズが復活した。
主催のAG.メンバーズスポーツクラブ北海道(AG.MSC北海道)では、公式通知のインフォメーションとして、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策を事前にホームページに公開。「新北海道スタイル宣言」を指針として、独自の感染拡大防止策を徹底した。
しかし、同じ時期に新型コロナウイルス感染症が再拡大傾向にあったことから、当日の参加を見合わせた選手も多く、今大会のエントリー台数は、当初の発表では84台だったが、実際に出走したのは69台に留まった。その影響でSC1クラスが不成立となっている。
そんな状況でも、参加した選手たちは、晴天の下で行われた公開練習からアグレッシブルなドライビングを披露。日曜の競技本番では、日差しはあったものの、徐々に曇り空に見舞われる状況ながら、各クラスで激しいベストタイム争いが展開されていた。
今大会の決勝コースは、スタートからストレートを経て下段へまわり、下段に広がる中高速コーナーを経て再び上段へ戻り、例年よりはややタイトなコーナーを複数クリアしてフィニッシュする構成。しかし、スタート後のストレートは中盤で曲げ、高い速度を維持したまま高速スラロームを攻略する設定となっており、高速領域におけるドライビングスキルの差が現れる大きな見どころとなっていた。
今大会でドラマチックなバトルが演じられたのがPN2クラスだった。主人公は地元ドライバーの宝田ケンシロー選手で、土曜の公開練習では何と1本目のコース前半でクラッシュ。車両修復が必要な状況となっていた。
マシンの修復が叶った日曜日、痛々しい傷跡が残った状態で本番に挑む事になった宝田選手だが、第1ヒートは「昨日のクラッシュの影響が合ってイメージどおりの走りができませんでした」とのことで、タイムは1分31秒250と伸び悩み、3番手に留まった。
これに対して好調な出足を見せたのが細木智矢選手で、1分30秒233で暫定トップタイムをマーク。1分30秒963をマークした徳山優斗選手が2番手に続いていた。
しかし、第2ヒートでは宝田選手が快心のアタックを披露。1分27秒954で暫定首位に立った。これに対して徳山選手、細木選手らも自己ベストタイムを更新するものの、いずれも1分27秒台の壁を破れずに徳山選手が2位、細木選手が3位と惜敗。2019年のチャンピオン、宝田選手が開幕戦の京都ラウンドに続けて2連勝を達成した。
「1本目が終わった後もずっとマシンを直していました。完璧ではないけれど、何とかイメージどおりに走れました。地元の大会で、何としても勝ちたかっただけに嬉しいです」。パルクフェルメでは自分の走りに納得していない様子だった宝田選手。逆転を果たしたことを知った瞬間、歓喜の表情に変わり、噛みしめるように心境を語ってくれた。
PN1クラスでは2019年のチャンピオン、上野倫広選手が第1ヒートで唯一の1分30秒台をマークするなど、序盤から圧倒的なパフォーマンスを披露した。
第2ヒートではライバル勢が1分28秒台までタイムアップを果たすものの、上野選手は1分27秒台で再び後続を引き離して開幕戦2連勝。「シリーズがどうなるか分からないので、1戦1戦を大切にしてベストを尽くしたいと思って走りました。1本目から全力で行けたので良かったですね」と上野選手は喜びを語った。
PN3クラスで幸先の良いスタートを切ったのは地元ドライバーの和泉泰至選手だった。唯一の1分32秒台で第1ヒートを制覇。その勢いは第2ヒートでも健在で、自己ベストを更新したが、この日、最後に笑ったのは最終出走の山崎利博選手だった。
第1ヒートは1分34秒台で2番手に留まった山崎選手だが、第2ヒートで1分31秒151をマークして僅差ながら逆転に成功。今季初勝利を挙げた。「3か所ほど行き過ぎた部分もあったけど地元選手に勝てたので90点をあげたいと思います」と満足げな表情で語った。
Nクラスでは岸山信之選手が唯一の1分23秒台を叩き出し、第1ヒートを制した。しかし、第2ヒートでは京都ラウンドを制した矢本裕之選手が1分22秒709をマークして暫定ベストが1分22秒台に突入する。岸山選手もタイムアップを果たすものの1分22秒784で矢本選手に惜敗した。
そこで、第1ヒートでは3番手と出遅れていた最終走者の北條倫史選手が、第2ヒートで1分22秒548を叩き出し逆転に成功。「スナガワはホームコースですが、今回は地元ドライバーでも経験のないチャレンジングなコースでした。1か所ミスしたので95点ですが、勝ちたいと思っていたので嬉しい」と、地元での今季初優勝の喜びを語った。
SA・SAX1クラスでは、昨年はPN1クラスでスナガワを制している内藤修一選手が乗り換えたZC33Sスイフトスポーツで1分31秒306を叩き出し第1ヒートでトップに立つ。開幕戦ウィナー、葛西キャサリン伸彦選手が1分31秒317、山田将崇選手が1分31秒482に続くなど僅差の争いが展開されていた。
この混戦を抜け出したのが内藤選手で、ライバル勢が1分28秒台の壁を破れずにいる中で、第2ヒートでは唯一の1分27秒台をマーク。「クルマのセッティングを変えたので慣れるのに苦労したけど、上手く走り方を変えることができました。地元なので勝ちたいと思っていました」と語るように、内藤選手が全日本スナガワ2連勝を獲得した。
SA・SAX2クラスでは、開幕戦を制した荒井信介選手が唯一の1分22秒台をマークし、第1ヒートを制覇した。第2ヒートでは黒木陽介選手が1分22秒台をマークするも、僅かに届かず、自らタイムを更新した荒井選手が開幕2連勝を達成した。
「1本目はイメージ通りに走れました。2本目はタイムこそアップしたけれど、アンダーステアが強くて2か所ぐらい失敗したかな。スナガワはいつもダンロップ勢が強いけど、今回はヨコハマタイヤに合っていたので、勝ちを狙いに行きました。コロナウイルスが蔓延しているので参戦するのか悩んだけど、出場するからにはベストを尽くしたかった。ここで勝てたことは、選手権を考えると大きいと思います」と荒井選手は語った。
小出久美子選手の1台だけとなったSC1クラスとは対象的に、混戦のSC2クラスでは、第1ヒートからコンマ数秒が勝敗を左右する激しいタイム争いが展開された。1分23秒228で第1ヒートを制したのは大西康弘選手で、1分23秒594をマークした吉村修選手が2番手、1分23秒838をマークした亀田幸弘選手が3番手で続いていた。
しかし、第2ヒートで躍進したのは、第1ヒートは4番手と出遅れていた杉尾泰之選手。しかも、今シーズンからCZ4Aランサー・エボⅩを新造してのチャレンジで、まさにダークホース的な存在であったにも関わらず、1分22秒044で暫定首位に浮上。そのタイムはシード勢にも破られず、杉尾選手が待望の全日本初優勝を獲得した。
パルクフェルメで自分の勝利を知った杉尾選手は感情を抑えきれずに嬉し泣きを見せていた。ひとしきり、ライバルや仲間から祝福を受けた杉尾選手は「1本目は探りながらの走りでしたが、2本目はイメージどおり走れました。いろんな人になったのでやっと恩返しすることができました。最高の気分です」と笑顔を爆発させていた。
D部門で抜群のパフォーマンスを見せたのが、全日本ラリー参戦のため開幕戦を欠場した鎌田卓麻選手だった。「新城ラリーに参戦していたので、今年のダートラはまだ0ポイント。選手権を考えると勝っておきたいイベントでした」との言葉を実践するように、エンジン排気量アップを始めとした大幅アップデートを行ったBRZ 4WDで、部門唯一の1分19秒台を叩き出し、第1ヒートで首位に浮上した。
第2ヒートでは「1箇所、グリップしないところがあってミスをしたけれど、挽回するためにいつも以上に攻めました。上手くリカバーできたと思います」と語るように、鎌田選手は自己タイムの更新に成功。その後はライバルたちもタイムアップを果たすものの、逆転を果たせずに「ミスをした時は負けたと思ったけど、みんな同じところでミスをしたみたいですね。勝てて嬉しいと同時にホッとしました」と安堵の表情を見せた鎌田選手が2020年の緒戦を制した。
D部門ではフォード・フィエスタを駆る田口勝彦選手が2位入賞。ミラージュ4WDを駆る2019年チャンピオン炭山裕矢選手は「鎌田選手はコース設定の読み方が上手かったですね。自分も完璧に走れたつもりだけど、あのタイムは厳しかったですね」とのことで3位に惜敗した。今季の挽回を誓う谷田川敏幸選手は約コンマ8秒差の4位に留まっている。
フォト/加藤和由、廣本泉、JAFスポーツ編集部 レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部
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