全日本カート選手権・西地域で活躍する女性ドライバーたち

インタビュー カート

2020年8月25日

2020シーズンのレーシングカートは女性カーターたちが自身の持つポテンシャルを存分に発揮し、タイムトライアルから決勝まで目が離せないアツい走りを展開している。そこで東地域に続き、西地域の女性ドライバーたちをピックアップ。

 8月22~23日に兵庫県・神戸スポーツサーキットで開催された全日本/ジュニアカート選手権・西地域第3戦では、ジュニア選手権FP-Jr部門にスポット参戦した佐藤こころ選手が優勝を飾り、記念すべき同選手権初の女性ウィナーとなって祝福を浴びた。

 その佐藤選手に限らず、近年の全日本/ジュニア選手権では東西両地域でウーマンパワーの躍進が続いている。そこで、今シーズンの全日本FP-3部門・西地域にレギュラー参戦するふたりの女性ドライバーを、神戸大会での戦いぶりとともに紹介しよう。

■坂上真海選手(さかうえまみ/18歳/TAKAGI PLANNING) 全日本カート選手権FP-3部門参戦
 タイムトライアル7位/予選5位/決勝3位

 小学校5年生の時、初めて乗ったレンタルカートでサーキットを走る楽しさに目覚め、以降はモータースポーツ一直線。2017年はジュニア選手権FP-Jr部門で2位表彰台にも立って全国ランキング10位を獲得し、鈴鹿選手権ではSSジュニアオープンクラスのチャンピオンに輝く。翌年はX30エンジンの上級クラスにステップアップした。

 プロのレーシングドライバーを目指し、福岡県の実家を出て独り暮らしを開始。2019年はSRSに入校してカートとフォーミュラのトレーニングを積み、タイで行われたツーリングカー耐久レースにも参戦して、四輪レーシングマシンの経験も重ねつつある。しかし、2019年の全日本FS-125部門の初戦でアクシデントに遭い、その負傷の影響で以降のカートレースは欠場を余儀なくされていた。

 負傷の癒えた2020年は心機一転、FP-3部門・西地域に参戦。第2戦APG大会で3位入賞を果たし、初表彰台に上った。そして迎えた第3戦神戸大会、予選ヒートを2ポジションアップの5位で終えると、決勝も厳しい暑さの中でさらにふたつ順位を上げ、2番手を走るマシンの真後ろに迫った。ここは逆転ならなかったものの、18台中3位でフィニッシュして2戦連続の表彰台をゲット。目下64ポイントを獲得し、西地域のポイントランキングではトップと6ポイント差の2番手に着けている。

「去年カートで走れない期間に、同期のドライバーたちが活躍している姿を見るのは、悔しさとかいろんな感情がありました。今年、全日本で走れると決まった時はすごくうれしかったです。ここまでいい流れで来てはいるけれど、ブランクも感じていて油断はできません。自分の長所は負けん気の強さ。タイムトライアルがダメでも、そこから這い上がってやるっていう気持ちは誰にも負けないと思っています。短所は負けん気が強すぎるところです(笑)。将来の最大の目標はスーパーGT。自分の限界をどんどん上げてステップアップしていきたいです。好きなドライバーは星野一義さんと、所属チームのオーナーの高木虎之介さん。星野さんはトップにいても攻め続ける走りが好きです」

■森岡泉美選手(もりおかいずみ/18歳/Formula Blue Ash) 全日本カート選手権FP-3部門参戦
 タイムトライアル2位/予選2位/決勝5位

 自動車やバイクが大好きな両親の影響で、初めてカートに乗ったのは3歳の時。物心がつく頃には、すでにカートドライバーだった。そこからレース経験を重ね、2018年は地方選手権として行われていたFP-3部門に参戦、西地域ランキング2位を得た。

 彼女の名前が大きくクローズアップされたのは2019年。第5戦中山大会でポールから独走優勝を飾り、全日本カート史上5人目の女性ウィナーとなった。その活躍が認められ、2020年はヤマハのドライバー支援プログラム『Formula Blue』のサポートドライバーに選出されて、3年目のFP-3部門を戦うことに。ホワイト/ブルーのヤマハ・オフィシャルスーツに身を包んでの初戦、鈴鹿大会では4番グリッドから一躍トップに立ち、4位フィニッシュとまずまずの結果を残した。

 第3戦神戸大会ではタイムトライアルと予選を2位で通過したが、決勝ではスタートでポジションを落とし5位にとどまった。とはいえ、第2戦APG大会でもドライの決勝こそ不調に終わったものの、ウェットのタイムトライアルではトップタイムをマークしており、少なくとも速さに関する“上位安定”ぶりは、昨年より明らかに大幅アップしている。全日本カート史上初の女性ドライバー2勝目に、今もっとも近い存在といえそうだ。

「これまで周りから(カートで自分より速かった)お兄ちゃんの妹としてしか見られていなかったのが、去年優勝したことで、ひとりのドライバーとして見てもらえるようになったし、学校や親戚の人たちも(レース活動に)興味を持ってくれるようになりました。Formula Blueのサポートドライバーになって、プレッシャーも感じるけれど、それは将来四輪を目指す上で、とてもいい経験になっていると思います。今年の自分は、バトルの面でもセッティングのフィードバックの面でも、去年より成長できていると思います。FP-3部門はレベルの高いバトルを経験できるので、本当にやってよかったと思います。去年勝った時はトップのまま逃げ切ったので、今度は混戦の中でバトルして優勝して、“獲ってやった”感のある勝ち方をしてみたいですね」

フォト/遠藤樹弥、JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

<関連リンク>
全日本/ジュニアカート選手権・東地域で活躍する女性ドライバーたち

ページ
トップへ