第104回大会で20人目の快挙! 佐藤琢磨選手が2度目のインディ500制覇!!

レポート レース

2020年8月25日

8月23日、アメリカ・インディアナポリスモータースピードウェイを舞台に開催された第104回インディアナポリス500マイルレースで、日本人ドライバーの佐藤琢磨選手が躍進。予選3番手のフロントローからスタートし、自身2度目のインディ500制覇を達成した。

2020 インディカー・シリーズ第7戦
第104回インディアナポリス500マイルレース

開催日:2020年8月22~23日
開催地:インディアナポリス・モータースピードウェイ(アメリカ合衆国インディアナ州)

終盤でスコット・ディクソン選手をパスしてトップに立った佐藤琢磨選手。パックになったバックマーカーを慎重に処理して後続との差を広げる最中、クラッシュが発生した。
地域の安全のために初めて無観客レースを実施した第104回インディ500。昨年は3位フィニッシュとなった佐藤琢磨選手が、キャリア11回目の挑戦で自身2度目の勝利を挙げた。
マイケル・ラニガン氏やデビッド・レターマン氏、ボビー・レイホール氏と第104回大会の勝利を分かち合う佐藤琢磨選手。グラハム・レイホール選手が3位に入り、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングとしても最良の日となったに違いない。

 8月23日、アメリカ・インディアナポリスモータースピードウェイを舞台に開催された第104回インディアナポリス500マイルレース(以下インディ500)で、日本人ドライバーの佐藤琢磨選手が躍進。予選で3番手を獲得、フロントローからスタートした佐藤選手はレース終盤でトップに浮上し、日本人ドライバーとして初優勝を獲得した2017年の大会以来、自身2度目のインディ500制覇を達成した。

 1911年に初開催を迎えたインディ500マイルレースは世界で最も長い歴史を持つ四輪レースで、現在はインディカーシリーズの名物イベントとして定着している。

 例年は5月末のメモリアルデイ(戦没将兵追悼記念日)の週末に開催され、決勝日には30万人を超える観客が来場するが、104回目の開催となる2020年の大会は新型コロナウイルス感染症の影響で、シリーズ第7戦として8月12日~23日の開催へとスケジュールを変更した他、インディ500史上初の無観客で開催されることとなった。

 今大会には過去に3度の優勝経験を持つエリオ・カストロネベス選手を筆頭に8人のウイナーが集結した他、F1王者のフェルナンド・アロンソ選手が3度目の参戦を果たす等、豪華な顔ぶれが集結。中で最も注目を集めたドライバーが佐藤選手だと言えるだろう。

 佐藤選手はこれまで10回に渡ってインディ500に参戦した経験を持つベテランで、アンドレッティ・オートスポーツから参戦した2017年には日本人ドライバーとして初めてインディ500を制覇した経験を持つ。

 2018年にレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングに移籍してからも佐藤選手の実力は衰えることなく、2019年のインディカーシリーズで2勝をマークしたほか、インディ500でも3位に入っている。そして2020年の大会でも佐藤選手の勢いは健在だった。

 8月12日に行なわれたプラクティス1こそ13番手に止まったが、13日に行われたプラクティス2では2番手タイムをマーク。14日のプラクティス3は再び8番手タイム、15日に行われた1日目の予選では9番手タイムと伸び悩んだが、予選1日目の上位9名で争われた16日の予選2日目「ファストナイン」では、マルコ・アンドレッティ選手、スコット・ディクソン選手に続いて佐藤選手が3番手タイムをマークしてみせた。

「フロントローからスタートする権利を獲得したのですから、とても大きな成果を挙げられたことと喜んでいます」と語るように、佐藤選手が日本人ドライバーとして初めてインディ500のフロントローを獲得する快挙を成し遂げていた。

 その後も佐藤選手は好調で、決勝を後に控えた最終プラクティス「カーブレションデイ(カーブデイ)」でも4番手タイムをマーク。「計画していたメニューはすべてこなすことができ、レースに向けた準備が整いました。もう後は決勝で頑張るのみです」と語る。

 そして200周で争われる23日の決勝でも、その言葉を実践するように佐藤選手は素晴らしい走りを披露した。

 ポールポジションのアンドレッティ選手は3番手に後退し、トップに浮上したディクソン選手に続いて佐藤選手が2番手に浮上。その後は後続にアクシデントが続出し、コーションが出される事となったが、佐藤選手はコンスタントに上位争いを展開していた。

 そして、142周目に2番手に浮上した佐藤選手は158周目にレースリーダーのディクソン選手を交わして、ついにトップへ浮上した。168周目に最後のピットストップを終えていた佐藤選手は、翌周に最後のピットストップを終えたディクソン選手の先行を許すものの、佐藤選手がディクソン選手を交わして再びトップへ浮上してみせる。

 その後も佐藤選手とディクソン選手が激しいトップ争いを展開したが、残り5周となったところで、後続のスペンサー・ピゴット選手がクラッシュ。フルコースコーションからペースカーが入る展開に。クラッシュの規模から赤旗が出される可能性もあったが、コーションのままチェッカー。こうして佐藤選手が自身2度目のインディ500制覇を達成した。

 インディ500において通算20人目の複数ウイナーとなった佐藤選手はこのリザルトについて「第104回インディ500に勝つ事ができ、言葉にならないくらい、多くの方々へ感謝の気持ちでいっぱいです」とのこと。

 その上で佐藤選手は「終盤の燃料戦略でディクソン選手に1周の遅れをとっていて、ゴールまでの燃費は少し厳しかったのですが、出来る限り燃料をセーブする走りを続けて、最終的には最後のバトルが激しくなったとしてもフルパワーで戦える燃料を確保できていました。シリーズの最後までチャンピオンを目指して頑張ります」とも語る。

 さらにエンジンを供給する等、佐藤選手をサポートする本田技研工業の代表取締役社長、八郷隆弘氏は下記のようなコメントを寄せた。

「世界3大レースの一つであるインディ500で2度目の勝利を挙げ、世界のモータースポーツの歴史に新たな足跡を残すことになった琢磨選手と、チームおよび関係者の方々、そして、琢磨選手を応援して下さっているファンの皆様に心から感謝申し上げあると共に、この快挙達成の喜びを分かち合いたいと思います。またこのニュースが、新型コロナウイルス感染拡大の影響が続く世の中にとって明るい話題となることを願います。琢磨選手、本当におめでとう!」。

 コロナ禍により閉塞感が広がる日本のモータースポーツ界において、関係者やモータースポーツファンに対して一筋の光を照らしてくれる、忘れられない大会となったはずだ。

フォト/本田技研工業、INDYCAR レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部

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