愛知・岐阜のWRC日本ラウンド、2020年の”開催断念”を発表。大会実行委員会が記者会見。

レポート ラリー

2020年8月25日

10年ぶりのWRC日本ラウンド、しかも、愛知・岐阜エリアを舞台に初のターマックイベントとして開催される予定の2020年のRally Japan。国内だけでなく世界的にも注目度の高い一戦だが、ラリージャパン2020実行委員会は8月19日、「開催断念」を発表した。

8月21日に行われたオンラインの記者会見では、ラリージャパン2020実行委員会の高橋浩司会長と渡辺文緒事務局長が登場し、開催断念の経緯を説明した。
オンライン記者会見にはRally Japan競技長の高桑春雄氏も参加。2021年大会に向けた使用コースに関する言及もあった。

 ラリージャパン2020実行委員会は8月19日、「FIA世界ラリー選手権“Rally Japan 2020”開催断念のお知らせ」をリリース。WRCの最終戦として11月20日~22日に愛知県および岐阜県で開催が予定されていた同大会のキャンセルを正式に発表した。

 2020年のWRCは新型コロナウイルスの影響により第3戦のメキシコ以来、中断を余儀なくされていたが、ラリー・エストニアの昇格で注目を集めた7月2日の再編成では、Rally Japanは当初の予定通り、最終戦となる第8戦としてカレンダーに残留。7月17日にはラリーガイド1が発表されるなど開催に向けて準備が進められる他、開催エリアの各地方公共団体では歓迎イベントが開催されるなど“本番”に向けて盛り上がりを見せていた。

 しかし、10月9日~11日に鈴鹿サーキットで予定されていたFIAフォーミュラ1世界選手権(F1)日本グランプリを筆頭に、10月30日~11月1日に富士スピードウェイでの開催予定のFIA世界耐久選手権(WEC)の富士6時間レース等、外国人に対する入国制限を理由に日本での国際イベントが相次いで中止や延期となっていた。

 それ故に、Rally Japanの開催についても懸念されていたのだが、海外のラリー情報サイト「DirtFish」が8月16日に「Rally Japanはパンデミックで、再び大会を失うことになるだろう」との推測記事を掲載する他、それを受ける形で日本のラリー情報サイトでも開催危機に関するニュースが報じられていた。

 そしてラリージャパン2020実行委員会は、8月19日に2020年大会の開催断念を発表。21日にはオンラインで記者会見を実施して、開催断念の経緯を説明した。

 キャンセルの理由に関してラリージャパン2020実行委員会の高橋浩司会長は「判断の根拠は海外からの選手や関係者の来日に目処が立たない事です。関係省庁にアプローチしてみましたが、Rally Japanには300名を超える外国人が来日する予定で、現時点でその受け入れは困難でした」とのこと。さらに「開催の3か月前という期限を念頭に調整してきましたが、物流やエントラント、運営側のロスを考慮して決断しました」と付け加える。

 また、運営事務局の渡辺文緒事務局長によれば、開催準備にも支障をきたしていたようで「現地での調査、開催地域に入っての活動が必要ですが、WRC有識者・経験者で組織したタスクフォースのメンバーが今年3月から来場できず、コミュニケーションで不十分な部分がありました」と語る。

 このRallyJapanの開催断念について、FIAのラリーディレクター、イブ・マトン氏は「JAF、主催者チームが懸命に取り組んでいただけに、パンデミックの影響により、今年Rally Japanが開催されないことは非常に残念に思います。日本の関係者には感謝しています」とFIA公式サイトでコメントを残している。

 ちなみに、ラリージャパン2020実行委員会によれば、2019年に行われた国際格式ラリー「セントラルラリー愛知・岐阜」のような独自イベント開催の予定もないという。最後の”奇跡”を願っていた日本のラリーファンにとっては残念なニュースとなった。

 ラリージャパン2020実行委員会は、すでに2021年の大会に向けて準備を進めているようで、前述の渡辺事務局長は「暫定ではありますが、2021年の11月11日~14日の日程で提出しています。関係者の健康を第一に、いわゆる”ニューノーマル”の中で新たなアイデアをできる限り反映させたい」と語る。

 さらに競技長の高桑春雄氏によれば、「2020年のルートをベースにしたいと思いますが、近年は災害も多いので、バックアップのコースを含めて修正していきたいと思います」とのことで、ラリーフォーマットに関しても改良されることだろう。

 渡辺事務局長によれば「多くのイベントが中止となっただけに、自治体の皆さんからは“Rally Japanだけでも開催して欲しい”という声が聞かれた」とのことだが、WRC日本ラウンドに対する期待が高いだけに、2021年の開催に注目したい。

 実行委員会がRally Japan開催断念を発表した19日、FIAとWRCプロモーターは、ベルギーのイプルーラリーをWRCとして開催することを発表。日程はRally Japanと同日の11月20日~22日で、1965年に初開催を迎えたイプルーラリーが2020年のWRC最終戦として開催されることとなった。

 1973年のシリーズ設立以来、34か国目のWRC開催国となったベルギーのイプルーラリーは、長年FIA欧州ラリー選手権(ERC)の一戦として開催されてきた。ラリーの拠点は歴史的な市場、グロート・マルクトで、3日間で約300kmのSSを設定している。路面はターマックで、最終日にはベルギーの名門サーキット、スパ・フランコルシャンが使用され、有名なオールージュ/ラディオンがパワーステージとして組み込まれる予定だ。

 WRCプロモーターのシニアディレクター、シモン・ラーキン氏は、このイプルーラリーのWRC昇格について「コンペティターにとって今年最も厳しいチャレンジになる。2020年の締めくくりにふさわしい。ナローな舗装路と排水溝というトリッキーな組み合わせで、ナイトステージが設定されるほか、悪天候も予想されるのでスリルと興奮をもたらすだろう」と高い期待を寄せる。

 さらに前述のマトン氏も「ベルギーにはラリーに対する素晴らしい伝統と情熱がある。それはWRCでもドライバーをはじめ、メカニック、チーム代表、ジャーナリストなど数多くのベルギー人が様々な役割で活躍していることにも現れている。今回のルートはイプルーからスパ・フランコルシャンというベルギーのモータースポーツを象徴するスポットを横断するもので、ラリーのDNAを紹介するショーケースになる」とWRC初開催のイプルーラリーに対して期待が高い。

 ちなみにイプルーラリーはヒュンダイのティエリー・ヌービル選手のホームイベントで、2018年の大会を制した実績を持つだけに、2020年の大会でもヌービル選手を中心にトップ争いが展開されることになりそうだ。

フォト/廣本泉、JAFスポーツ編集部 レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部

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