2020年全日本ラリー選手権が京都で再開。鎌田卓麻WRXが今季初優勝を飾る

レポート ラリー

2020年8月17日

全日本ラリー選手権は、4カ月半のインターバルを経て、シリーズ2戦目となるRALLY丹後が7月31日~8月2日、京都丹後半島を舞台に開催された。

2020年JAF全日本ラリー選手権第5戦
2020年JAF中部近畿ラリー選手権第2戦
2020年JMRC近畿SSラリーシリーズ第1戦
NISSIN Rally丹後2020
Supported by Sammy/YUHO

開催日: 2020年7月31日~8月2日
開催場所: 京都
主催: SYMPHONY

 今年の全日本ラリー選手権は、3月に実質的な開幕戦となる新城ラリーが開催された後、新型コロナウイルス感染拡大を受けて、その後の3大会が延期され、2大会が中止を余儀なくされるという状況が続いていた。

 今回のラリー丹後は当初、5月開催の第5戦に組み込まれていたが、8月第1週の週末に延期することを決定。今回の大会の前後に位置する7月上旬開催予定だった第7戦及び8月下旬開催予定の第8戦が中止に至っていただけに、その動向が懸念されたが、無事、開催の運びとなった。

 ただし第2派到来ともいえる感染再拡大の状況も踏まえて、感染防止対策は万全が図られた。選手を始めとする関係者には大会2週間前からの検温を報告する問診票の提出が求められたほか、大会初日には医師によるメディカルチェックを受けることも義務付けられた。

 酷暑の中、サービスでも選手、メカニックがマスク着用を徹底するなど、大会関係者が一丸となった取り組みがなされた。前回の新城ラリー同様、残念ながらギャラリステージが設定されない無観客ラリーとして開催されたが、通常の形への復帰が近々に訪れることを、切に願いたいものだ。

 ラリーの内容も当初の予定から縮小され、SSで使用するステージも「Tsunotsuki」、「Nariai」の2つに絞られた。土曜のLEG1はこのふたつのステージを3ループする計6本のSSが設定され、日曜のLEG2では逆走で2ループする4本を設定と、計10本のSSにより競われた。

 LEG1では9.32km、LEG2では11.35kmと距離が伸びる「Tsunotsuki」は道幅も広く、コーナーの形状も多岐に渡るテクルカルなステージ。一方、LEG1では13.19km、LEG2では12.27kmを走り込む「Nariai」は、ナロー&ツイスティなセクションと「Tsunotsuki」同様、速度の乗るセクションの両方を併せ持つステージだ。

 梅雨明けのタイミングに重なったこともあって、ラリーウィークは終始、酷暑の中でのバトルとなった。SSトータルも100kmを超えたため、クルーやマシンにも消耗を強いる一戦となった。

 JN1クラスでは前戦新城を制した奴田原文雄/佐藤忠宜組のランサーエボリューションXが今回も好タイムを連発するが、それを上回るペースを見せたのが鎌田卓麻/鈴木裕組のWRX STI。LEG1は鎌田組が「Tsunotsuki」の3本を、奴田原組が「Nariai」の3本をともに完全制圧する展開となったが、「Tsunotsuki」でもぎ取ったマージンが効いた鎌田組が4.7秒差をつけてラリーを折り返した。

 明けたLEG2最初のステージは「Nariai」の逆走。ここでベストを奪ったのは前日マシントラブルでデイリタイヤとなった勝田範彦/石田裕一組。鎌田組は0.3秒差で2番手に続いたものの、奴田原組は前日好タイムが出せたこのステージで苦戦、鎌田組に6.1秒の遅れを取ってしまう。

 それでも奴田原組は続く「Tsunotsuki」の逆走のSS8では鎌田組に0.4秒差で食らいつき、望みを繋げたが、SS7の再走となるSS9では鎌田組が7.9秒差で奴田原組を突き離し、とどめを刺す格好に。最終的に17.7秒にマージンを広げた鎌田組が今季初優勝を飾った。

 今回から新車を投入した鎌田選手は「やはりクルマの動きが違いました」とその成果を実感した様子。「勝てるときはいつもなんですが、ドライバーが無理をしなくともクルマが本当によく動いてくれる。今日の1ループ目が勝負所だったと思いますが、そんなに無理はしていない。昨日のフィーリングのままで走れました」。ここ数年、舗装でも時折、図抜けた速さを見せているが、昨年のセントラルラリーに続く舗装での優勝で、安定感も身に着けてきた印象だ。舗装勝負が続く後半戦の速さが注目されるところだ。

 今回は、各クラスで勝負がLEG2の最後までもつれ込む好バトルが展開された。JN2クラスでは昨年のチャンピオン、眞貝知志/安藤裕一組のヴィッツGRMNがSS1で順調にベストを奪うが、SS2でリアをヒットしたことが響いてペースダウンを強いられてしまう。

 新城でも眞貝組を脅かすスピードを見せた石井宏尚/寺田昌弘組のレクサスRC Fが代わって主導権を握ると思われたが、グラベルスペシャリストとして知られる上原淳/漆戸あゆみ組が別人のごとく、鋭い走りを見せて3本のSSでベストを奪ってLEG1をトップで折り返した。

 LEG2では石井組がクルマの特性が生かせる「Tsunotsuki」で驚異的なタイムを叩き出して一時は首位に立つが、上原組も「Nariai」でスーパーベストを奪って応酬、首位を奪還する。上原組は最終的に1.1秒という僅差で逃げ切って、全日本のターマックでの初優勝を達成。石井組の全日本ラリー初優勝の野望を打ち砕いた。

ドライバーや大会関係者もサービス会場ではマスク着用で感染予防を図った。
選手をはじめ、すべての大会関係者は金曜日に医師の検診を受けることが義務付けられた。
サービスやメディア受付では飛沫防止のための、遮蔽対策がしっかりと採られた。
ヘッドクォーターが置かれたホテルでは入り口に体温測定器と手指消毒器が置かれ、感染防止が徹底された。
サービススタッフも炎天下の中、マスク着用で作業に務めた。
2018年開幕戦以来の勝利を飾った鎌田卓麻/鈴木裕組。舗装ラリーでは昨年秋のセントラルラリーに続く優勝を獲得した。
JN2クラスはこれまで舗装を苦手としていた上原淳/漆戸あゆみ組が全日本の舗装ラリーで初の優勝を飾った。「サーキットでレーシングドライバーの方から舗装の走り方を教えてもらったんですが、その成果が出せて自分でも驚いています。『コーナーでは(無用に)アクセルを踏んではいけない』など、目から鱗(うろこ)の連続でした(笑)」と上原選手。
JN3クラスは昨年の王者、山本悠太/山本磨美組が最終SSでベストを奪うも、新仕様の86のセットを合わせきれず精彩を欠く中、昨年までJN1を戦っていた福永修/齊田美早子組が86で参戦、LEG1をトップで折り返す。しかしLEG2ではベストを連発した竹内源樹/木村悟士組のBRZが逆転。新城から連勝を飾ってタイトルレースでも頭一つ抜け出した。
JN4クラスは、高橋悟志/立久井和子組が首位で折り返したが、新城の覇者、内藤学武/小藤桂一組がLEG2で猛追を見せ、SS8で遂にトップに立つ。しかしSS9では、「Nariaiのベストなラインが最後の最後で掴めた」高橋組がベストを獲って再逆転。最終のSS10は2台が同秒ベストで走り切るという最後まで目が離せない大接戦を制した。
JN5クラスでは、全日本デビューを果たしたヤリスを駆った小濱勇希/東駿吾組がSS1でベストを奪い、ライバルの度肝を抜くが、天野智之/井上裕紀子組、大倉聡/豊田耕司組の2台のヴィッツが底力を見せて小濱ヤリスを逆転。LEG2の4SSすべてを制した天野組が最後は大倉組を振り切った。
JN6クラスは新城を制した明治慎太郎/里中謙太組が今回もLEG1から大きなリードを築いて逃げ切り、盤石の2連勝を飾った。
OPEN-1クラスはAKIRA/木村裕介組が優勝(左)。併催のJAF中部近畿ラリー選手権第5戦DE-2クラスは廣嶋真/廣嶋浩組のセリカが優勝した(右)。
DE-5クラスでは田中潤/北田稔組(左)、DE-6クラスでは奥田道裕/阿部琢哉組(右)がそれぞれ優勝を飾った。
DE-1クラスでは中部近畿選手権総合ベストのタイムを叩き出した大江毅/田中大貴組が快勝した。

フォト/中島正義、山口貴利、JAFスポーツ編集部 レポート/JAFスポーツ編集部

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