FS-125部門の激闘は洞地遼大選手に軍配が上がる

レポート カート

2020年8月11日

2020全日本カート選手権シリーズ・東地域第2戦がGOLDEX本庄モーターパークで開催された。FS-125部門では大集団による激闘の末、洞地遼大選手(K.SPEED WIN)が初優勝。やはり熱戦となったFP-3部門では、中村仁選手(Formula Blue TKC)が初勝利を挙げた。

2020年JAF全日本カート選手権 FS-125部門/FP-3部門 東地域第2戦
2020年JAFジュニアカート選手権 FP-Jr部門/FP-Jr Cadets部門 東地域第2戦

開催日:2020年8月8~9日
開催地:GOLDEX本庄モーターパーク(埼玉県本庄市)
主催:T.KBF、SPH

 戦いの舞台は、7月に本庄サーキットから改称されたGOLDEX本庄モーターパーク。元々は四輪が走るミニサーキットで、カートレースとしては異例のコース幅とストレート長を持つハイスピードコースだ。

 新型コロナウイルス感染拡大によるシリーズ開催日程の再編により、東地域は開幕戦からわずか2週間で第2戦を迎えることに。8月初旬のサーキットはむせかえるような暑さに包まれ、レースはフィジカル面でもタフネスさが要求される戦いとなった。

 FS-125部門では、予選で波乱が起きた。15周レースの最終ラップ。フロントロウから3番手以下を大きく引き離して並走を続けてきた鈴木斗輝哉選手(DRAGO CORSE)と洞地選手が、ゴール目前の9コーナーで接触してともにクラッシュ、リタイアしてしまったのだ。このアクシデントが、決勝のドラマの伏線となっていく。

 代わって1番手でゴールして決勝のポールとなったのは、13番グリッドから追い上げてきた佐野雄城選手(BirelART RAGNO Racing)。浅見謙心選手(RT-APEX)が2番手、小田優選手(Formula Blue BEMAX)が3番手。開幕戦のウィナー・山越ヒユウ選手(Formula Blue ガレージC)は8番手に留まった。

 決勝は25周。ポールから先頭を行く佐野選手にまず襲いかかったのは山越選手だった。2周で3番手まで上がってきた山越選手は、3周目に前の2台を相次いでかわしてトップに立つと、レース中盤までラップリーダーとなって戦いを牽引していった。

 山越選手の背後には小田選手、田中風輝選手(TAKAGI PLANNING)、佐野選手、浅見選手がピタリと続き、序盤の先頭集団は5台一丸。そこに驚異的なペースで追い付いてきたのが、18番グリッドからスタートした鈴木選手だ。11周で16台をパスした鈴木選手は、トップ山越選手の後ろに着けて逆転の機をうかがう。

 すると、徐々に苦しくなってきたマシンの動きを走りでフォローしてきた佐野選手が、前方のバトルの隙を突いてトップを奪還。先頭集団の戦いがにわかに熱気を帯び始めると、19番グリッドと17番グリッドから挽回してきた酒井仁選手(LUCE MOTOR SPORTS)と洞地選手がそこに追い付き、優勝争いの集団は7台に膨らんだ。

 レースが残り5周を切り、鈴木選手がトップを奪うと、戦いはいよいよクライマックスへ。マシンの群れはコーナーのたびに左右へ散ってあちこちで攻防を繰り返し、ひとつのコーナーでいくつもの順位変動が発生する。そんな大混戦の中、鈴木選手は必死にトップの座をキープ。洞地選手も目の前のバトルにチャンスを見出してグイグイと順位を上げ、3番手で最終ラップを迎えた。

 さながらバトルロワイヤルのような優勝争いは最後の最終コーナーに至っても止まず、大集団はもつれ合うようにフィニッシュラインへなだれ込む。その先頭で歓喜のガッツポーズを披露したのは、鈴木選手だった。

 しかしレース後、鈴木選手はプッシングがあったとして10秒加算のペナルティを課され、無念の13位という結果に終わる。代わってウィナーとなったのは、2番手でゴールした14歳のルーキー、洞地選手だった。

 2位は田中選手。続いてフィニッシュした佐野選手もフロントフェアリングのペナルティで11位に降格され、山越選手が繰り上がって3位。ルーキーたちが表彰台を独占する結果となった。トップから2秒強の間に12台がチェッカーを受ける、まれにみる大接戦だった。

優勝の洞地遼大選手は「決勝ではフレームがちょっと曲がった状態だったけど、意地でも上がってやろうと思っていました。最後に自分の力を見せることができて良かったです。でも、今日は2位が精一杯だったと思います。1位でチェッカーを受けられなかったことは悔しいけれど、1位という結果を獲れたことは嬉しいです」と語った。
FS-125部門東地域の表彰式。左から2位の田中風輝選手、1位の洞地選手、3位の山越ヒユウ選手。

 FP-3部門の決勝は、フロントロウに並んだ中村選手と半田昌宗選手(TEAM WOLF & 後藤エンジン)、そして4番グリッドから発進した佐久間宇宙選手(YRHKS With BRIOLY)の3台による優勝争いとなった。

 3台は2周目から4番手以降を引き離してトップグループを形成すると、何度となくポジションを入れ替えながらピタリ一丸で周回を重ねていく。

 その三つ巴の戦いが終盤戦に入ると、エンジンが不調に陥った半田選手が先頭集団から脱落し、ズルズルとポジションを下げていく。これでレースは中村選手と佐久間選手の一騎討ちとなった。

 最終ラップを真っ先に迎えたのは中村選手。1コーナーでは佐久間選手が逆転。それを読んでいた中村選手は、3コーナー進入で佐久間選手のインを急襲して先頭に戻り、12度に及んだトップ交代劇に決着をつけた。佐久間選手は2位に終わるも、デビュー2戦目で大活躍を演じての初表彰台獲得。中村選手とのタイム差は、わずか100分の3秒だった。

 先頭集団の約5秒後方では、箭内優樹選手(TEAM WOLF)、角陽向選手(FLAX motor sports)、富下李央菜選手(カローラ新茨城レオンキッズレーシング)がバトルを展開。ここは最終ラップに角選手と富下選手がアクシデントでストップし、箭内選手が表彰台の最後の一席を手に入れた。

「スタート前に警戒していたのは(半田)昌宗君だったんですが、昌宗君が途中から落ちていって……。最終ラップは(佐久間選手が)インに入ってくるのが分かっていたので、あえて抑えず、コースの後半でまた抜き返す作戦でした。終盤のトップ争いで一番速いのは自分だと思っていました」と、優勝して安堵の表情を見せた中村仁選手。
FP-3部門東地域の表彰式。左から2位の佐久間宇宙選手、1位の中村選手、3位の箭内優樹選手。

 同時開催のジュニアカート選手権・東地域第2戦。FP-Jr部門の決勝では、レース中盤になっても出走9台の全車が一列に連なり、実力伯仲の接近戦を繰り広げた。

 この熱闘を積極的に牽引していったのは、Osamu選手(Bulldog99/茂原ツインサーキット)と豊島里空斗選手(HRT)。何度となくオーバーテイクを重ねた両者の戦いは、終盤戦を優位に進めたOsamu選手の初優勝で決着した。

 たびたびトップ争いに割り込んだ五十嵐文太郎選手(チーム エッフェガーラ)は、終盤のバトルでポジションを下げて4位に。3位表彰台は熱海瑛達選手(ガレージC)のものとなった。

 FP-Jr Cadets部門の決勝では、序盤から酒井龍太郎選手(ミツサダ PWG RACING)、佐藤佑月樹選手(RT.WORLD)選手、松井沙麗選手(BEMAX RACING)が3台一丸のトップ争いを展開。最終ラップに背後の2番手争いを利してリードを広げた酒井選手が、開幕2連勝を飾った。

 松井選手とのほぼ横一線のフィニッシュに先着した佐藤選手も、2戦連続の2位獲得。松井選手は、女性ドライバーによるジュニア選手権初優勝のチャンスこそ逃したものの、一時は先頭を走って3位となり、自身初めての表彰台に上った。

「ゴールの瞬間はマジで嬉しかったです。最初は豊島君とふたりでバトルしようと思っていたんですが、他の人に抜かれ始めたので、バトルに応じようと気持ちを切り替えました。僕はバトルが得意なので、ここが抜きやすいコースだったことも有利に働いたんだなと思います」と、勝因について振り返ったOsamu選手。
FP-Jr部門東地域の表彰式。左から2位の豊島里空斗選手、1位のOsamu選手、3位の熱海瑛達選手。
開幕戦に続きトップでフィニッシュした酒井龍太郎選手は「今年初めて参加したジュニア選手権で2連勝できて嬉しいです。バトル中はどうやったら抜け出せるかを考えながら走っていました。最終ラップに後ろを見たら離れていたので、これで勝てると思いました。この調子でシリーズ全勝を目指します」と残り3戦の抱負を語った。
FP-Jr Cadets部門東地域の表彰式。左から2位の佐藤佑月樹選手、1位の酒井選手、3位の松井沙麗選手。

フォト/古閑章郎、JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

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