救助・救出活動のポイントを追加した「基本的な感染対策のあり方の例 ver.2」を7月21日に発表。

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2020年8月7日

5月27日にJAFから発表された国内モータースポーツの活動再開ガイドラインにあたる「基本的な感染対策のあり方の例」が、身体的接触を伴う救助・救出活動時における感染防止対策のポイントを追記した「ver2」として、7月21日に改めて発表された。

 5月27日に公示された「国内モータースポーツ活動再開に関わる対応について」を受け、6月からJAF地方選手権が再開された国内競技。7月18日~19日には富士スピードウェイでスーパーGTが開催し、国内モータースポーツも2020年のシーズンが本格的に再始動した。

 そんな中、7月21日にJAFは「新型コロナウイルス完成防止対策を講じた公認競技会等の参加に係るお願い」を発表し、サマーシーズンを迎えるにあたっての注意事項に加えて、「基本的な感染対策のあり方の例 ver.2」を明らかにした。

 今回の発表で注目すべき点は、前述のとおり、夏場の競技会に対する注意事項で「関係する全ての皆様には熱中症対策を講じていただく」とした上で、新型コロナウイルスの感染防止の3つの基本である、「1.身体的距離の確保、2.マスクの着用、3.手洗いや、3密(密集、密接、密閉)を避ける」といった対策の実践を明記したことだろう。

 さらに、参加ドライバーに対しても「熱中症対策とともに、ヘルメット非装着時のマスク着用(少なくも2m以上の身体的距離が確保できない場合にはマスク着用。十分な距離が確保できる場合には、マスクを外す)」という記述を加えて、夏場におけるマスク着用の仕方を改めてアナウンスしている。

 そして5月27日版と同様に「基本的な感染対策のあり方の例」がPDF資料として添付され、その内容は「ver.2」へと進化。項目「3.」と「7.」に新しい要素が追加されている。

 この「3.」では「競技会の前後も含めた適切な感染予防対策の実施」を追加しており、その中に「(3)競技会で実施する感染防止策は、極力、競技会ウェブサイト等にて事前に公開し、情報共有とともに協力を求めるように努める」および「(4)感染防止対策に伴い、関係者の対応を求めることが必要となる場合は、適宜、公式通知やインフォメーション等を発行する」ことを明記した。

 モータースポーツは屋外で行われ、他のスポーツと比べると身体的接触を伴うスポーツではない、という前提はあるが、競技会における感染防止対策が対外的に無策であるように見えてしまっては、参加者や関係者、ひいては会場周辺の地域社会の理解は得られにくいものだ。そのため、主催者による感染防止対策の事前発信と情報共有を促したことは、競技会の継続的な開催可否に大きく影響するトピックだと言えるだろう。

 そして、5月27日版の「基本的な感染対策のあり方の例」の“ver.1”は6項目で構成されていたが、7月21日版の「ver.2」では、新たに7項目として「救助・救出活動等における身体的接触を伴う薬務に係る感染防止対策のポイント」が追記された。

 これは文字どおり、競技会における医師やオフィシャルたちの感染防止対策をまとめたもので、「事故発生時の救助・救出活動には医師、救命士、マーシャル、オフィシャル、競技者、その他の救助要員相互の濃厚接触、身体的接触を伴うが、そのような状況は比較的稀であり、したがって、COVID-19感染リスクを最小限に抑え、低減するための適切な運用について、医師団長等の指示等ならびにFIAガイドライン(GUIDELINES MITIGATION PLANNING AND RISK ANALYSIS “RETURN TO MOTOR SPORT“)に基づき、以下の対策例を参考とした感染防止対策を講じる」とした上で、詳細事例が紹介されている。

 具体的には、「(1)標準予防策の徹底」において「基本的に誰もがこのウイルスを保有している可能性があることを考慮して、全ての被救助者の観察において、被救助者の状況に応じて必要なPPE(注:個人保護具)を選択して適切に着用する」としている。

「(2)PPEの選択について」においては、競技車両内のドライバーは、フルフェイスヘルメットとグローブ、耐火スーツでほぼカプセル化されていることを前提として、「①救助活動に就く医師救命士、マーシャル、オフィシャル等は、グローブを装着すると共に目と鼻と口を覆うものとする」とした。

 また「②耐火炎スーツを着用している間は、プラスチック製または紙製のマスクを使用しないこと」、「④コース上のオフィシャル要員は、役務用車両内でマスクを使用し、耐火グローブを着用する」、「⑤すべてのコース上のオフィシャル(レッカー、救急車、清掃要員等)は、役務中およびドライバーと接触するときは、口と鼻を覆うマスクやフード(バラクラバ)を含む適切な耐火PPEを着用する」と明記している。

 救出活動時におけるオフィシャルが装備すべきPPEのポイントは、目と鼻と口を何らかの方法で覆うことで、PPEの種類については、マスクやフード(バラクラバ)、ネックゲーターフード、アイシールド付きサージカルマスク、ゴーグル/アイシールド/フェイスガード、感染防止衣、グローブ、手袋など、競技カテゴリーや緊急時の状況において最適なものを装着することを記述している。

 追加されたこの7項目には、上記(1)と(2)に加え、「(3)緊急出動車両等の待機について」、「(4)救急搬送車内等の消毒について」、「(5)メディカルセンター(スピード・カート競技の救護室を含む)について」、「(6)負傷しているドライバーを車両等から救出する手順」、「(7)救急蘇生の基本的な考え方」、「(8)救急蘇生法の具体的手順」、「(9)訓練」等、救助・救出活動時の注意点が詳細に記されている。

 これまでのガイドラインでは、競技会を運営するうえでの感染防止の対策方法のあり方が紹介されてきたが、今回の追記により救助・救出活動時における感染防止対策のポイントが明確になった。もちろん、新型コロナウイルス感染症に対する抜本的な解決策が世界的に見出せていない状況を鑑みると、これらの対策は感染を完全に防げるものではない。

 しかし、これらの事例が提示されたことで、競技中にアクシデントが発生した場合でも、医師や救命士はもちろん、マーシャルやオフィシャルも事象に対してスムーズに対応できるようになるはずだ。他のスポーツに比べると身体的接触が少ないモータースポーツにおける、唯一と言ってもいい「不安要素」を払拭できる指針が示されたことになる。

 感染拡大を防ぎつつ安全な競技会運営を両立させる方法は、世界的にも正解が見出だせていない状況で、モータースポーツに関わるすべての人々に突き付けられている難題だ。先が見えない状況を少しでも良くするための取り組みは、モータースポーツ関係者全員で、前向きに進めていく必要があるのだ。

フォト/JAFスポーツ編集部 レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部

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