愛知県のモリコロパークで「第2回FIA基金助成によるJAFラリー安全訓練講習」開催

ニュース ラリー

2020年8月7日

6月27~28日にオンライン講習会として行われた「第1回FIA基金助成によるJAFラリー安全訓練講習」の続編となる「第2回」実技講習が、2020年WRC日本ラウンドの拠点となる予定の愛知県長久手市にある愛・地球博記念公園(モリコロパーク)で開催された。

第2回FIA基金助成によるJAFラリー安全訓練講習
2020 JAF Rally Safety Training Seminar with FIA Grant Program Round 2

開催日:2020年7月19日
開催地:愛・地球博記念公園/モリコロパーク(愛知県長久手市)
主催:JAF 運営:AG.MSC北海道 現地対応:MASC

午前中はAG.MSC北海道による模範演技の観察と実技講習。要救護者のヘルメットやHANSを外し、KEDを装着する。
バキュームスプリントを使用して要救護者を搬出できる状態に持ち込むまでが一つのループ。
午後は実際の競技車両を使用した要救護者の搬出訓練を実施。風通しのいい屋外で行われた。
第2回実技講習の運営は、6月27~28日の第1回に続いて田畑邦博氏率いるAG.MSC北海道が担当。
この講習自体の感染対策も徹底され、マスクやフェイスシールド、医療用グローブ着用で挑んだ。
講習会場にはゴム手袋やマスク専用のゴミ箱も設置。汗だくになる訓練ではこのような処置も大切。

 年間約80回開催されている国内ラリーおよびFIA国際ラリーのレスキューに係る競技団のスキルアップを目指し、国内ラリー競技の安全性向上を目的とした「第2回FIA基金助成によるJAFラリー安全訓練講習」が、7月19日に愛知県のモリコロパークで開催された。

 この訓練講習は、すでに第1回の座学が6月27~28日が行われており、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策の一環としてオンライン講習会として開催。

 内容はFIA国際競技規則付則H項および2020 FIAラリー安全ガイドを教材として、安全策全般および競技中に発生した事故を想定した救出作業全般の講習およびテストというもので、27日に約3時間、28日に約4時間の講習が行われた。

 7月19日の第2回は、第1回の座学講習に対する実技講習編で、国内ラリー競技会競技役員約50名を対象として、競技中に発生した事故を想定した模範救出作業の後、受講者による救出訓練を複数回実施して、作業時間を計測するという内容で、約5時間に渡る講習がモリコロパークにある地球市民交流センター周辺で開催された。

 第1回、第2回共に主催はJAFで、かつてのWRCラリージャパンやAPRCラリー北海道など、国際ラリーを長年主催してきている、田畑邦博氏率いるJAF公認クラブ、AG.メンバーズスポーツクラブ北海道(AG.MSC北海道)が運営を担当。第2回については、地元のJAF加盟クラブのモンテカルロ・オート・スポーツ・クラブ(MASC)が協力した。

 受講者の基本構成は、競技長を始め、コース委員および委員長、救急委員および委員長、コース・救急委員、ドクターの参加となっており、JAFラリー部会やJAFメディカル部会が評価委員として名を連ねることになった。

 当日は参加受付以降、ソーシャルディスタンスを確保しながらの開催となり、午前中は椅子に着席した要救護者に対する救出器具の装着方法の模範演技とその実技、午後は実際の競技車両を使った要救護者の引き出し訓練というスケジュールとなった。

 受講者の感染拡大防止策についてはAG.MSC北海道が担当。講習会運営側のPPE装着や事前の検温や体調確認書の提出は、プレスを含む出席関係者も当たり前とされ、受講者にはフェイスシールドやマスク、医療用ゴム手袋といったPPE装着が義務付けられた。

 また、午前中は広い室内での講習となったが、受講者の手指消毒、各器具の消毒は徹底され、入退室時の靴の消毒や、スマホアプリの通知システムへの登録なども必須とされた。

 開会にあたり、JAFメディカル部会にも名を連ねる紙谷孝則氏から、救助活動時等における身体的接触を伴う役務に係る感染防止対策についての説明があった。

 実は、これまで救助・救出活動時におけるオフィシャルが採るべき感染防止対策の具体例は示されていなかったが、この説明の際に、ラリー競技の救助・救出活動時においては、「マスクとゴーグル装着」という現実的なPPE装備の見解が明らかにされた。

 午前中の実技では、室内で救出器具の装着方法が解説された。受講者を複数のグループに分けて救出時の役割を確定、椅子に座った要救護者に対して、ヘルメットやHANSの脱がせ方やネックブレースの取り付け方、KED(Kendrick Extircation Device/ケーイーディー/ケッド)の装着方法、バキュームスプリントの固定方法、そして要救護者の搬出までを1サイクルとして訓練。

 また、AED(自動体外式除細動器/Automated External Defibrillator/エーイーディー)の使用方法の解説や訓練もあり、最後には、火災など要救護者に大至急脱出が必要な時の緊急手段として知られる「抱きかかえ救出」の実技も行われた。

 午後には実際の競技車両を使った実技訓練が行われ、要救護者の搬出までを所要時間計測を行いながら実施した。競技車両にはMASCの協力により、勝田範彦選手が全日本ラリー選手権で使用する本番車を2台用意。実車はバケットシートや入り組んだロールケージにより救出に使える開口部が狭くなるため、午前の訓練とは勝手が異なる状況となった。

 そして国際ラリー競技には必須のMIV(緊急出動医療車両/Medical Intervention Vehicle)、TIV(緊急出動技術車両/Technical Intervention Vehicle)に搭載された装備品の説明も行われ、油圧式救助器具を使用した金属パイプの切断等も受講者が体験した。

 実技講習の最後には、車両を切り開いての救出訓練が行われた。訓練車両はホワイトボディ状態にされたトヨタ86に新品のロールケージを組んだ車両で、その車両に対してAピラーおよびロールケージを切断して要救護者を救出する模範演技が行われた。

 今回の各訓練ではJAFラリー部会の七田定明氏や高桑春雄氏が監督し、紙谷ドクターを始めとした講師陣には必要に応じて質疑応答の時間が設けられていた。当日は灼熱の気候に見舞われて、PPE装着が苦しい状況ではあったが、受講者は黙々と各訓練を実施。国内ラリー競技の安全性向上を目指して真摯な姿勢で取り組んでいた。

JAFメディカル部会の委員を務める紙谷孝則氏も参加。感染対策の最新情報を受講者に示した。
今回のラリー安全訓練講習ではJAFラリー部会の七田定明氏と高桑春雄氏が評価のために同席した。
受講者は複数のグループに分かれて、模範演技に従ってKED装着やバキュームスプリント装着、要救護者の搬出までを訓練した。
市街地にも設置されて一般的な存在となったAEDの操作方法も実体験できるようになっていた。
午前の講習の最後には、火災などの緊急時における抱きかかえによる引き出しの実演も行われた。
午後からは風通しのいい屋外に場所を移して、実際の競技車両を使用した要救護者の救出訓練に。
バケットシートやロールケージを装着したラリー本番車からの救出作業は形を留めていても困難を極める。
グループ毎に行われた実車での救出訓練は作業時間を計測。搬出まで10分程度を目安にするという。
要救護者をバキュームスプリントにくるみストレッチャーに載せるまでが午後の訓練となっていた。
国際ラリーでは必須のMIV、TIVもAG.MSC北海道が実際に使用する車両を持ち込んで解説された。
TIVには車両を切り開くための油圧式救助器具や破壊器具、車両固定資器材や救助備品等が満載。
電動油圧救助器具を使った金属パイプ(ロールケージ)切断実技も実施。受講者が体験した。
講習の最後には、写真のトヨタ86を使用した、車両を切り開いての救出訓練が行われた。
要救護者を毛布で覆い、Aピラーを切断してルーフおよびロールケージを切断して作業空間を確保する。
救出要員はPPE装着で、要救護者にもマスクを着用させKEDやバキュームスプリントを用いて搬出した。

フォト/中島正義 レポート/JAFスポーツ編集部

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