FS-125部門東地域の開幕戦を制したのはデビューウィンの山越ヒユウ選手

レポート カート

2020年7月30日

全日本カート選手権の東地域2020シリーズが、ツインリンクもてぎ北ショートコースで開幕した。FS-125部門では、山越ヒユウ選手(Formula Blue ガレージC)がポールからデビューウィンを達成。FP-3部門では、この部門初参戦の角陽向選手(FLAX motor sports)が独走優勝を飾った。

2020全日本カート選手権 FS-125部門/FP-3部門 東地域第1戦
2020ジュニアカート選手権 FP-Jr部門/FP-Jr Cadets部門 東地域第1戦

開催日: 2020年7月25~26日
開催地: ツインリンクもてぎ北ショートコース(栃木県茂木町)
主催: 株式会社モビリティランド、RTA

 2020年の全日本カート選手権は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、4~6月の大会がすべて中止か延期になり、6月末に再編されたシリーズ日程が改めて示された。これによって3月に第1戦が開催された西地域から4ヶ月後れで、東地域は開幕を迎えることとなった。

 このもてぎ大会は無観客で行われ、北ショートコースの入場ゲートより先は参加者と大会関係者以外の入場が禁止に。大会初日にはエントラントミーティングも設けられ、マスク着用の徹底など新型コロナウイルス感染症対策への協力が呼びかけられた。その他、全部門の参加者を対象に参加受付を時間割で区分けし、リザルトの紙面配布を中止してWEBでリザルト速報ページを公開する等の対策が講じられた。

 また今回の大会では、前年までのもてぎ大会とは異なり、ダミーグリッドがピットロードからトラックのホームストレート上に変更されていた。

 決勝日の空模様は、朝から雨。予選ヒートのスタート前にそれが止むとコースはみるみる乾き、ウェットで始まった計時セッションは、予選ヒート進行の途中からドライコンディションへと変わった。

 FS-125部門の予選も、全車スリックタイヤを装着してのレースになった。ここでは序盤から鈴木斗輝哉選手(DRAGO CORSE)がトップをひた走ったが、終盤にメカトラブルでリタイヤ。その真後ろに着けていた山越選手が替わって決勝のポールを獲得し、小林利徠斗選手(Formula Blue Super Racing Junkie!)が2番手に。やや遅れてチェッカーを受けた渡部智仁選手(SPS川口)と洞地遼大選手(K.SPEED WIN)が3・4番手で決勝グリッドの2列目に着くこととなった。

 空模様は時を追って移り、決勝はウェットコンディションに。30周のレースが始まると、先頭の座をキープして発進した山越選手の後方に、小林選手、洞地選手、渡部選手が続き、4台がやや間隔を空けて一列に連なる緊迫の戦いが続いていった。

 その先頭集団の状況に変化が起きたのは、レースが折り返し点を過ぎたあたり。タイヤが辛くなってきた小林選手が山越選手から遅れを取り、そこに洞地選手と渡部選手が接近して、2番手争いがにわかに熱を帯び始めた。

 対してトップ独走となった山越選手は、最終的にリードを約2秒まで広げ、高々とナンバー1サインを掲げてフィニッシュした。13歳の山越選手は、今回が全日本初参戦。「緊張で頭が真っ白だったけれど、(仕上がりのいい)マシンなりのペースで走れば大丈夫だろうと思っていました」と、堂々のデビューウィンに笑顔をこぼした。

 2番手争いには、残り4周でドラマが。ヘアピン立ち上がりでペースが鈍った小林選手を洞地選手が抜きにかかったところで、両車のラインが交錯。千載一遇のチャンスを逃さなかった渡部選手が、目の前でもつれ合う2台を一気にかわし、2位を手に入れた。

 洞地選手は3位となり、悔しい結果ながらもデビュー戦で表彰台に登壇。4位の小林選手に続いてゴールした佐野雄城選手(BirelART RAGNO Racing)はペナルティで9位に降格され、替わって22番グリッドから猛追の鈴木選手が5位となった。

優勝の山越ヒユウ選手は「勝てるとは思っていなかったけれど、決勝は序盤からペースがよくて、いい手応えでした。こういう路面は苦手だったけれど、結果的にいいレースができてよかったです」とコメントを残した。
FS-125部門東地域の表彰式。左から2位の渡部智仁選手、1位の山越選手、3位の洞地遼大選手。

 FP-3部門は今季ミドルティーンの参加が急増して、年齢層が一気に若返った。その第1戦のウィナーは、16歳の角選手だ。決勝をポールから発進した角選手は、5周で約1秒のリードを築くと、周回ごとに後続を引き離し、圧巻の独走劇で勝利を飾った。

 角選手は昨年FS-125部門に一度のスポット参戦を経験しているものの、全日本では準ルーキーといえるドライバー。「カートは楽しいので、いろんなクラスのレースに出てみたいです」と今後の目標を語ってくれた。

 2位はジュニア選手権FP-Jr部門からステップアップしてきた14歳の女性ドライバー、富下李央菜選手(カローラ新茨城レオンキッズレーシング)。ドライの予選では一時先頭を走り、決勝でも1台をパスして表彰台というデビュー戦の活躍にも、「トップに追いつけなくて悔しかった」と貪欲なコメントだ。

 3位には8番グリッドから5台を抜いてきた14歳の中村仁選手(Formula Blue TKC)が入り、表彰台には平均年齢14.7歳というフレッシュな顔ぶれが並ぶこととなった。

 今回一番の注目株だったのは、かつて全日本のトップカテゴリーで優勝経験のある28歳、箭内優樹選手(TEAM WOLF & 後藤エンジン)だ。その箭内選手は、ドライコンディションの練習走行では絶好調だったのだが、決勝では雨にいささか不利をかこい、グリッドからふたつ順位を下げて4位という結果に。それでも「勝てるレースだっただけに残念だけれど、今後に向けて大きな収穫があったレースでした」と手応えを語った。

「(FP-3部門デビュー戦での)ポールスタートには少し緊張もあったけれど、雨は得意なので、焦らず走れました。ゴールの瞬間はすごく嬉しかったです」と優勝した喜びをあらわにした角陽向選手。
FP-3部門東地域の表彰式。左から2位の富下李央菜選手、1位の角選手、3位の中村仁選手。

 同時開催のジュニアカート選手権。FP-Jr部門では、濡れた路面で行われた予選でスリックタイヤを選ぶギャンブルが外れ、ポールから10番手スタートに落ちた五十嵐文太郎選手(チーム エッフェガーラ)が、決勝ではオープニングラップで4番手まで上がると、5周でトップに立って以降を独走。無敵の速さで2019年第3戦以来の2勝目を果たした。

 4台が連なったセカンドグループの戦いは、二転三転の順位交代劇の末、豊島里空斗選手(HRT)が2位に。ポールから5番手まで後退した村田悠磨選手(SPS川口)が、終盤の挽回で3位フィニッシュを遂げた。

 FP-Jr Cadets部門では、大集団によるトップ争いがスタート直後から続いたが、酒井龍太郎選手(ミツサダ PWG RACING)が終盤にここを抜け出しデビューウィンを飾った。

 ポールスタートの佐藤佑月樹選手(RT.WORLD)は、単独走行の2位フィニッシュに。吉岩泰選手(ミツサダ PWG RACING)が松井沙麗選手(BEMAX RACING)の追撃を凌いで3位となった。

 併催レースとして行われたもてぎカートレース MAX Masters第3戦では、加藤雅規選手(Triple-K)が残り2周の逆転劇で優勝。石原貴博選手(TMAUTO/IRS)が僅差の2位、丸田恭平選手(レーシングチーム オビ)が3位に入賞した。

決勝ではローリング中にスピンを喫して最後尾スタートとなった五十嵐文太郎選手が見事優勝。「去年は先輩たちにバトルで揉まれて苦戦したけれど、その経験があったから今回勝てたんだと思います」と語った。
FP-Jr部門東地域の表彰式。左から2位の豊島里空斗選手、1位の五十嵐選手、3位の村田悠磨選手
「トップ争いの中では、ここから1位を目指すにはどうしたらいいだろうと考えながら走っていました。思ったとおりに前を抜いて引き離すことができて、よかったです」と優勝に笑顔を見せた酒井龍太郎選手。
FP-Jr Cadets部門東地域の表彰式。左から2位の佐藤佑月樹選手、1位の酒井選手、3位の吉岩泰選手。
併催のMAX Mastersは予選2番手スタートの加藤雅規選手が先頭集団で安定した走りを見せて優勝した。
もてぎカートレース第3戦Max Mastersの表彰式。左から2位の石原貴博選手、1位の加藤選手、3位の丸田恭平選手。
2019年のFP-3部門でシリーズ上位の2選手に、振興策としてヤマハエンジンが贈呈された。東地域の対象者は川福健太選手と半田昌宗選手。

フォト/小竹充、JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

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