英国のASN「Motorsport UK」が、ラリー競技のリスタートに”青信号”を灯す

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2020年7月21日

英国のASN「Motorsport UK」は独自の活動再開ガイドライン「Getting Back to Track」を5月18日に発表しているが、ラリー競技については慎重な姿勢を見せていた。それがこの度、ラリー競技の活動再開に青信号が灯る、ガイドラインの改訂を発表した。

 FIAがモータースポーツ活動再開に向けて起こした一番最初のアクションは、5月14日、モータースポーツ再開へ向けての12のキーアクションだった。

 英国のASNであるMotorsport UK(以下MSUK)は、この指針に即応する形で独自のガイドライン「Getting Back on Track」を発表。MSUKによるガイドライン策定は非常に素早く、指針発表からわずか4日後、5月18日のことであった。

 5月中旬に存在した活動再開に向けたガイドラインとしては、かなり現実的かつ具体的な提案を行っていたのが特徴で、カテゴリー別に対応したガイドラインを設定する等、オーガナイザーのハンドブックとしての機能が強く意識されたものだった。

 ただし、5月18日時点では、英国政府の新型コロナウイルス感染症に対する感染抑止策は厳しい接触制限を行っており、モータースポーツの中でもラリーの開催は競技の性格上、不可能という状況とされていた。

 そのためガイドラインで提唱される感染抑止対策は「もし政府の制限が緩和され、開催が可能になった暁には……」という但し書きが冒頭文に記されるものとなっていた。逆の見方をすると、MSUKは英国政府の制限緩和に先立ってラリーイベントの再開と、具体的な実現の可能性を探っていたとも言えるだろう。

 7月8日、MSUKはこのガイドラインをアップデートさせた。最も大きな変更は英国政府の緩和を受け、先に述べた「制限が緩和された暁には」という内容の但し書きが消滅したことだ。

 もともとのガイドラインが実際のオペレーションをかなりの部分でカバーしていたため、新版でも大掛かりな追加項目や変更点は存在せず、あくまでマイナーな変更に留まっている。つまり基本路線は旧版も新版も全く変わらないということだ。

 まず最も重要と思える変更点は、レスキューについての記述だ。新版ではレスキュー時に「ドライバーのサムアップ」を車外から確認することが求められている。

 サムアップが確認できる場合はドライバー、コドライバーともにレスキューの必要はない。逆にサムアップが確認できない場合はすぐにメディカルとラリーコントロールに連絡、レスキュー対応を要請するよう求められている。

 これによりコース・ポストマーシャルによる競技者との接触を避けることが可能となる。

 また、ポストマーシャルについては、旧版の『ポストあたり人数』から『ソーシャルディスタンスの遵守』に表現が変更されている。マーシャルの配置にあたり、無用な集合やミーティングを避けるため、事前にマーシャル配置の指示を済ませることが必要であるとも明記されている。

 明示的な変更はこの程度で、実オペレーション上では微修正にとどまる内容ばかりとみて間違いないだろう。

 MSUKの提唱するガイドラインは、もちろんラリー以外の4つのジャンルについてもそれぞれ設定がなされているが、基本的な部分は、ほぼ内容を同一にしているため今回は「ラリー」を題材に紹介させていただいた。

 北米ではすでに複数のモータースポーツが再開しているが、欧州ではようやくF1が再開した状態。FIAがF1を中心とするシングルシーターを強く意識する現状で、グラスルーツ(草の根)モータースポーツの再開を意識したMSUKのガイドラインは、英国外の国や地域、もちろん日本においても大いに参考になるはずだ。

フォト/JAFスポーツ編集部 レポート/JAFスポーツ編集部

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