オートテストが奈良県で再開! 感染拡大防止策を講じて参加20名限定の大会に

レポート オートテスト

2020年7月13日

JAF公認オートテストも他の競技と同様に、これまで感染拡大防止策の一環で中止や延期が続いていたが、6月27日、奈良県大和郡山市の自動車ディーラー駐車場で、来場者の感染拡大防止策を講じた上で開催され、20名の参加者が久々のスポーツ走行を堪能した。

「オートテスト2020 IN奈良スバル」
開催日:2020年6月27日(土)
開催地:奈良スバル自動車大和郡山店駐車場(奈良県大和郡山市)
主催:RC NARA

 この春以降、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策の一環として、JAF公認モータースポーツは中止や延期等の措置が採られてきていたが、この度、JAF公認オートテストが奈良県大和郡山市で開催された。

 この大会は関西の老舗クラブ「RC NARA」が主催したもので、奈良スバル自動車大和郡山店の全面協力により6月末の開催が実現した。20名という参加人数限定での開催ではあったが、久々のスポーツ走行ができるとあって、参加者の表情は明るいものだった。しかし、コロナ禍におけるイベント参戦のため、感染拡大防止策を実施しながらの参戦とあって、これまでのスタイルとは異なる形での参戦に、より真剣な表情も見られた。

 全国に先駆けてオートテストを再開させたRC NARA。代表の小西俊嗣氏はこう語る。

 「本来は、7月上旬に別のオートテストを県内で開催する予定でしたが、その大会は、昨年実施した大会をさらに充実させて、規模を大きく開催する予定だったんです。ですが、こういう情勢となってしまったため、開催を見送ることにしました」。

 「ですが、オートテストはモータースポーツ振興に欠かせない大切な存在ですし、感染拡大防止策を施した主催の在り方を模索する必要もあるので、今回は密集を避けるために20名という限定の募集となりましたが、オートテストで活動再開することになりました」。

 今大会では数々の感染拡大防止対策が採られていたが、会場に入場する時点からその実例を確認することができた。場内入場時の検温や体調確認、場内におけるマスク着用、各所における手指消毒は当たり前として、今大会の対策は、密集しがちな競技会の各状況において、如何にソーシャルディスタンスを確保するかというところに特徴が見られた。

 今回は20名限定という、他の大会に比べて少ない参加人数に限定していたが、開場時には、20名をさらに10名2グループに分けて、時間をずらして入場させている。そして、接触のリスクが高い参加確認受付や競技車検でも、ユニークな試みを実施していた。

 そもそもこの大会は、参加申し込みをJAFの電子システムから行い、参加費の収受は電子決済。厳正な抽選の結果、当選した20名には二次元バーコードを埋め込んだ参加受理書を電子文書として発行し、当日はその電子文書をスマートフォンで表示してもらい、主催者が参加者と接触することなく機器で読み込み、参加確認受付としていた。

 この参加確認受付と車検については、すべてドライブスルーで行い、受付に続いて車検を実施し、参加者がクルマを降りることなくパドック駐車までシームレスにもっていける流れを構築していた。受付と車検時のコミュニケーション方法についても、乗車中の参加者に対して、あらかじめ用意していたボードに伝達事項を書いておき、乗車中の参加者に見せることで、担当者の唾液の飛散を最小限に抑える工夫がなされていた。

 今大会では慣熟歩行の時間も10名2グループ毎、別に割り当てられ、スタート地点から1名ずつソーシャルディスタンスを確保できる間隔を開けてコースを歩くようになっていた。その後は大会スタッフによるドライバーズブリーフィングが行われるのだが、車外のパドックエリアで聞くこともできるし、ブリーフィング内容をFMラジオに乗せているため、車内のラジオから聞くことも可能となっていた。

 実際の競技走行においては平時と変わらぬ運営がなされていたが、6月27日の天候は曇り空ながら「蒸し暑い」状況となったため、コース内でペナルティをジャッジする競技オフィシャルについては、蒸し暑い状況における運動量の多さを考慮して、参加者に確認の上でマスク非着用とされていた。

 そして、走行終了後には表彰式も行われたが、メダルや賞典の手渡しは実施せず、賞典を配置した場所に表彰対象者を呼び込んで、ソーシャルディスタンスを確保した間隔で整列してもらい、ほかの参加者からの称賛を受けるといった方法も採られていた。

 ちなみに、RC NARAのオートテストでは、オートテストの開催趣旨を勘案して大会の運営規模をコンパクトにするため、計時に光電管を使用していない。計測はストップウオッチなのだが、計測ライン通過の合図にホイッスルを使っている。今大会ではこのホイッスルを「電子ホイッスル」に変更。唾液の飛散を抑える配慮の徹底ぶりが伺える対応だ。

 当日の運営を取り仕切った競技長の工藤哲裕氏は、大会終了後にこう語った。

 「大会を終了できてホッとしているのが正直なところです。開催前にRC NARAのクラブ員とはオンライン会議でミーティングしたんです。そこでどうやって開催していこうかという綿密な打ち合せをして、クラブ内で意識の共有はできていたと思います。そのおかげで、今回はオフィシャルの動きとしてはトラブルなく運営ができたと思っています」。

 「今までは対面でミーティングをやってましたが、今回初めてオンライン会議でミーティングして、小西会長以下、問題なく意思の疎通ができました。ウチのクラブは奈良だけじゃなくて、大阪や愛知にもメンバーがいるので、こういうミーティングに関しては有効なツールであることを改めて認識しましたね」。

 「今大会の感染拡大防止対策についてはクラブのメンバーで熟慮を重ねましたが、基本的には『密』を避けることと、オフィシャルが炎天下でも感染防止対策を採りながら、熱中症対策も採れる環境を整えることを念頭に置いてました」。

 「今回配布した手指消毒液(除菌抗菌液を魚型醤油入れに注入)などは、ご支援いただいている方々から『こういうのがあるよ』と教えて頂いたものでもありますし、奈良スバルさんにはトイレ等の施設を快く使わせて頂きました。私達の力だけではできなかった部分もありましたから、周りの皆さんの支えでイベントを終えることができたと思います」。

 今大会は、20名の参加者がすべて自身の愛車で参戦するスタイルを採用。車格とトランスミッション形式によって3クラスに分割され、「軽AT」のAクラスは5台、「MT車」のBクラスは8台、「軽以外AT」のCクラスは7台による戦いとなった。

 コースレイアウトはやや縦長の舗装の敷地をフル活用して、4本パイロンのスラローム、1本パイロンの180度ターン、右折90度の直進ガレージ、直進で進入するラインまたぎ、90度右方後退進入の二つ目のガレージ、90度右折でフィニッシュする盛りだくさんな設定。

 大会のインストラクターとして全日本ジムカーナ選手権の川脇一晃選手と久保真吾選手が来場したが、川脇選手は、今回のコースレイアウトを下記のように高く評価していた。

 「タテ長であまり広くない敷地だと聞いてましたが、現地でコースを見たらよく考えられたコースだなと思いました。こういう敷地の場合は、モータースポーツの醍醐味である『コーナーリング』できる箇所が少なくなりがちで、車格によっては不要なバックギヤが入ってしまうものなんです。でも、今回のコースではちゃんとコーナーリングできるし、勝負のポイントを2箇所のガレージに集中させているので、感心しましたね」。

 「ガレージが全く別の場所にあるのも興味深いですね。自分の経験では、90度対向の連続ガレージが一般的だと思ってましたが、スラロームとターンの後にガレージを置くことで速度を落とさせることができるし、よく考えられてるなと思います。勝負のポイントはやはりゴール手前の二つ目のガレージだと思いますが、実は、安全のためにラインまたぎの位置を少しガレージから遠ざけたんです。そしたら後退でのガレージ進入が難しくなってしまって(笑)。自分のデモランでも、そこは一番注意するポイントになりました」。

 第1ヒートのAクラスは、ミゼットⅡを持ち込んだ関西の有名人・ホウシユミ選手がペナルティなしの32.4という最小減点を獲得してトップに立つ。BクラスはS660を駆るシノハラケンジ選手が27.9というブッちぎりの最小限点をマークしてBクラス&オーバーオールトップに立つ。そしてCクラスはBMW Z4をオープンで走らせたウエダユウキ選手が暫定トップで折り返した。

 続けて出走した第2ヒート。Aクラスでは1号車のカナモノヤアキノリ選手が31.2、2号車のシモザトダイスケ選手が31.5と僅差の勝負が続く中、注目のホウシユミ選手は走行タイムは総合トップの速さを見せたがペナルティ5点を加算。Aクラスは第2ヒートで逆転したコペンのカナモノヤアキノリ選手が優勝した。

 Bクラスは第1ヒートでトップのシノハラケンジ選手が走行タイムをコンマ1秒短縮して、ノーペナルティで27.8の減点を獲得。アルトワークスのヒガシユウジ選手が約1ポイント差で迫ったが届かず。その後も暫定トップが覆されることはなく、クラス先頭走者のS660シノハラケンジ選手が、大会オーバーオールのオマケ付きで優勝した。

 Cクラスは広島県から参戦したイエローセリカのノヅツヨシ選手が快走。第1ヒートは15点ものペナルティを喫して下位に沈んでいたが、29.8という暫定トップでゴールした。後続の選手も自己ベストを更新するも、ノズツヨシ選手の30点切りには届かず、ノヅツヨシ選手が第2ヒートの逆転で優勝することになった。

 ソーシャルディスタンスを確保した大会の表彰式が終わると、会場を貸してくれた奈良スバル自動車から各参加者にお土産がプレゼントされた。雨予報を覆す天候に恵まれ、久々のモータースポーツ走行を堪能した参加者は、笑顔で家路に就いていた。

人の接触を避けるため、参加者を10名2グループに分けて入場。参加確認受付と車検はドライブスルーで行われた。
参加者に対して受理書を電子文書で発行。埋め込まれた二次元バーコードを読み取って参加確認受付が完了。
参加者の入場時には検温を実施。魚型醤油入れに除菌抗菌液を入れた手指消毒セットが配布された。
係員と参加者が対面して直接会話する必要がないように、受付や車検の必要事項をボードに書いて提示していた。
活動再開後初となるオートテストは、奈良県大和郡山市にある奈良スバル自動車大和郡山店の駐車場で行われた。
大和郡山店の名物は実物のグローバルプラットフォーム展示。参加者のために店舗スペースを全面開放してくれた。
密集を避けるため慣熟歩行はグループ毎に実施。ソーシャルディスタンスを確保して一人ずつ歩くことに。
開会式とドライバーズブリーフィングが屋外で行われたが、各自の車内でFMラジオを通じて聞くこともできた。
大会インストラクターは全日本ジムカーナ選手権の川脇一晃選手と久保真吾選手。実況アナウンスで盛り上げた。
敷地をフル活用して、スラロームとターン、2か所のガレージとラインまたぎを組み合わせた盛り沢山なコース。
今回のコースは2か所のガレージ攻略がキモ。2回目のガレージはラインまたぎから90度後退で進入する難関。
5台参加のAクラスは、コペンを駆るカナモノヤアキノリ選手が優勝。第2ヒートで見事な逆転勝利を見せた。
Aクラス表彰式。優勝はカナモノヤアキノリ選手、2位はアルトのシモザトダイスケ選手、3位はミゼットⅡのホウシユミ選手。
8台参加のBクラスは、S660を駆るシノハラケンジ選手が優勝。大会オーバーオールの好成績となった。
Bクラス表彰式。優勝はシノハラケンジ選手。2位はアルトワークスのヒガシユウジ選手、3位はS660のツジイヒロタカ選手。
7台参加のCクラスは、セリカGT-Rを駆るノヅツヨシ選手が優勝。第1ヒートの大量減点から逆転優勝となった。
Cクラス表彰式。優勝はノヅツヨシ選手。2位はBMW Z4のウエダユウキ選手、3位はプリウスのヒロノカズヨ選手。
Aクラス優勝のカナモノヤアキノリ選手。「奈良のオートテストは第1回大会から出てまして、川脇さんのレッスンにも参加させてもらってます。今回はパイロン間隔が狭くてハンドル操作が忙しかったです。自分は1本目も2本目もタイムが変わらないので、進歩がないというか(笑)。以前は鈴鹿サーキットでTSサニーとかで走ってたんですが、久々に走れるクルマを購入したので、オートテストやレッスンを中心に楽しんでます」。
Bクラス優勝のシノハラケンジ選手。「オートテスト専門で、奈良を中心に2016年から20回以上は出てます。一番遠くて茨城県、西は山口県まで遠征してます。サーキットとかは走らないんですけどハイグリップラジアルで挑んでます。今回のコースはタイヤが細いほうが有利だったかも知れません。3か月ブランクが空いてたんですが、この翌週に別のオートテストに出るので、感覚やドキドキ感を取り戻す、いい予行練習になりました」。
Cクラス優勝のノズツヨシ選手。「オートテストは15回ぐらい出てますね。ATクラスだと優勝経験はありますが、車格で分けられるとなかなか勝てませんね(笑)。今回はタイトなコースだったんですが、私のセリカは4WSなんですよ。だから少し有利な面があったかも知れませんね。4WSはかなり曲がるので全然違いますよ。現代のコンパクトカーと同じくらい曲がります。当時のCMに触発されて、このクルマはもう30年乗ってます」。
Cクラス3位入賞のヒロノカズヨ選手はモータースポーツ復活組。「オートテストは初体験なんですが、20代の頃にジムカーナを1年だけやってたんです。当時はEP71ターボでしたね。そこから街乗りしかしてなくて、たまたまこの大会を見つけて出てみました。久々に走ったら、いやーホント面白かったです。この緊張感っていいですね。当時は何でお金を払ってまでこんな緊張しないといけないのか、って思ってましたけど、改めてやってみると、このドキドキ感って、たまらないですよね(笑)。街乗りではこういう走りはできませんでしたけど、何とかノーミスでイケたので、昔取った杵柄ってヤツですかね」。
Cクラス5位のヨシムラナオユキ選手は、何と奈良スバル自動車代表として愛車で参戦。「昨年、RC NARAさんのイベントで車両展示をさせてもらったんですが、そこでオートテストを初めて見て、出てみたいなと思ったのがキッカケです。実際走ってみたら、意外と難しかったですね。クルマって、ハンドルをしっかり切らないと曲がらないんですね(笑)。オートマなのに焦ってシフト操作を誤ったり、いろいろと発見がありました。会場が自分の勤務地なので距離感は分かってるんですが、速く車庫に入れるとか、そういう操作はやってないので(笑)、こういう機会になると、やはり焦ってしまうものですね」。
RC NARAはオートテスト国内導入時から奈良県内の様々な場所でオートテストを開催。今後も定期開催を予定する。

フォト/JAFスポーツ編集部、RC NARA、JAF奈良支部 レポート/JAFスポーツ編集部

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