FIAが史上初の「eカンファレンス」開催。今季2回目のWMSCでは「COVID-19行動規範」が示される

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2020年6月24日

今シーズン2回目のFIA世界モータースポーツ評議会(WMSC)が開催された。一連の会議は史上初の「eカンファレンス」で開幕し、WMSCもリモート会議で行われた。7月のF1再開に合わせて、モータースポーツ活動再開に関するガイドライン等が明らかにされた。

 本来ならタイ・チェンマイでの開催が予定されていた、今年2回目のFIA世界モータースポーツ評議会(WMSC)。今回の会議は6月15日に史上初の「eカンファレンス」という形で開幕し、WMSCはオンライン会議で行なわれた。

 今回の決議事項としては、これまで延期や中止が続いていた主要国際シリーズの2020年の新たなカレンダーが承認されたほか、新型コロナウイルスの感染リスクを軽減する「COVID-19 Code of Conduct(COVID-19行動規範)」を作成。同規範を国際モータースポーツ競技規則に付則S項として加えることを承認した。この行動規範の適用範囲は、F1と同時開催のF2、F3、ポルシェスーパーカップ等にも適用される。

 再開後のカレンダーについては、ホンダの参戦で注目を集めるF1は、7月3日~5日のオーストリアGPを筆頭に、9月4日~6日のイタリアGPまで計8戦のカレンダーが承認された。いずれもヨーロッパ圏内のイベントで、残念ながら、10月9日~11日に鈴鹿サーキットで開催が予定されていた日本グランプリに関してはWMSCを前に中止が発表されている。

 そのほか、F1においては「空力のテスト制限の改善」といったスポーティングレギュレーションの変更やコスト上の理由から「1年間に使用できるソフトウェアバージョン」ならびに「1年間に承認できる燃料配合とエンジンオイル仕様」が制限されるなど、テクニカルレギュレーションの変更も承認された。

 そして、FIAシングルシーター委員会において、2021年1月から順次導入を予定していたFIAフォーミュラ4車両(Halo装着)だが、さらなるコスト削減の検討のため再び導入が遅れる見込みだ。

 一方、TOYOTA GAZOO Racingが参戦するほか、10月4日~6日には富士スピードウェイを舞台に富士6時間レースの開催が予定されていたFIA世界耐久選手権(WEC)では、2021年にトップクラスとしてル・マン・ハイバーカーの導入が決定されているが、その技術規定の変更が承認された。

 主な変更点はパワーと重量、空力性能の制御で、まず、ル・マン・ハイパーカーの最大出力が当初計画されていた585kWから500kWへ引き下げられた他、車両重量が1100kgから1030kgに変更。さらにル・マン・デイトナ“h”との均衡化も合意されており、独自のBOPシステムにより、同一のパフォーマンスウインドウで争われることが承認されたことも今回のWMSCのポイントと言えるだろう。

 今年は11月27~29日に鈴鹿サーキットで開催予定だったアジアン・ルマン・シリーズ2020/2021シーズン開幕戦については、今回のWMSC発表ではスケジュールに組み込まれていたが、6月1日発表のモビリティランドのリリースによれば、シリーズを主催するフランス西部自動車クラブ(ACO)の判断を受け入れ、今季の開催中止に合意している。

 一方、WRCに関しては、2020シーズンの再開を容易にするため、にコスト削減策を優先した選手権規定の変更が承認された。

 一例を挙げると、2020年の開催数が8戦以下になった場合、各チームが使用できるエンジン数が3基から2基に削減される他、欧州ラウンドにおけるワークスドライバーの事前テストを、各ドライバーにつき1日に制限することが承認された。

 併せて、今シーズンではなく2021年カレンダーに関する提案が承認され、日本を含めてモンテカルロ、フィンランド、ポルトガル、スウェーデン、ケニア、スペイン、イタリア、オーストラリアなど計9カ国のイベントを承認した。

 しかし、再編成が行われている2020年のWRCカレンダーに関しては未だ調整中で、11月のRally Japanの開催可否などについては、今回のWMSCでの発表には至っていない。

 また、今回のWMSCではFIA欧州ラリー選手権(ERC)の日程が承認され、中止を決定したポーランドを除く全7戦での開催が決定している。

 しかし、FIA及びWRCプロモーターはERCのラトビアでWRCの併催を検討するほか、2019年にWRCのプロモーショナルイベントを成功させているエストニア、55回の開催実績を持つベルギーのイプルーラリーのWRC昇格を検討中……と一部で報道されているだけに、2020年のWRCは変則的なシーズンとなる可能性が高そうだ。

 ちなみに、11月19日~22日に愛知県や岐阜県で開催予定のRally Japanに関して、ラリージャパン2020実行委員会は、WMSCと同日の6月19日、2020年大会のオフィシャルパートナーを追加で発表した。

 チケット販売を手がけるイープラス、プーマブランドでおなじみのプーマジャパン、旅行大手のJTBが新たに協賛して加わったことを発表した。合わせて中日新聞社、東海テレビ放送などメディアパートナーも発表するなど、11月下旬の2020年大会に向けて着実に準備が進められている。

 なお、今回のWMSCではFIAリージョナルラリー選手権における、当初のカレンダーの50%、最低3戦でのタイトル獲得の決定が承認されている。そして、FIAアジア・パシフィックラリー選手権(APRC)も2020年再開後の日程が発表された。

 APRCは10月16~18日にラリー・ロンユー(アジアカップ)とラリー・アデレード(パシフィックカップ)で再開する。アジアカップは合計2戦で南インドラリー、パシフィックカップは合計3戦でニュージーランドのファンガレイラリーで最終戦を迎えそうだが、アジアカップ及びパシフィックカップともに日程は調整中となっている。

 9月11~13日に開催予定だったラリー北海道は、すでにAPRCタイトル返上を発表しているが、アジアカップとパシフィックカップの維持が不安定な状況にあることから、資格基準を軽減してワイルドカードシステムの導入を承認した。ASNがシリーズ最終戦に参加する選手を指名できるようになったことも、今回の発表のトピックと言っていいだろう。

 また、リージョナル選手権では、安全性を高めるべく、スローパンクチャーの検出するために、2021年よりタイヤの空気圧と温度センサーを採用する可能性を示した他、ERCではRally2、Rally2-Kit、R-GT車両で参戦するドライバーの場合、使用タイヤの種類がターマックで3つ、グラベルで2つに制限されるなど、技術規定も変更点が明示されている。

11月19~22日に愛知・岐阜エリアで開催予定のRally Japan 2020だが、今回のWMSCでは今シーズンのWRC再開後日程は発表されず、2021年カレンダーの提案が承認された。
9月11~13日開催が予定されていた今年で19回目となるラリー北海道だったが、APRCを行なわず、全日本ラリー選手権を中心に9月12~13日の短縮日程により開催される予定。

フォト/JAFスポーツ編集部 レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部

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