海外で続々と開催! デジタルモータースポーツの普及と可能性

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2020年5月28日

新型コロナ感染症の影響でさまざまなモータースポーツが延期や中止に追い込まれている中、デジタルモータースポーツが急成長をみせている。そこで今回、海外で発展しつつあるバーチャルレースについて、さまざまなカテゴリーのモータースポーツでリサーチを行ってみた。

5月24日に行われた「F1 Eスポーツ・バーチャル・グランプリ」第6戦モナコ。プロサーファーのカイ・レニー選手がレッドブルから参戦、8人の現役F1ドライバーらを相手にレースに挑んだ。

 新型コロナウイルスの影響で、全ての活動が休止されている2020年のモータースポーツ。しかし、その一方で国内外の主要シリーズがファンサービスの一環としてバーチャルモータースポーツを開催しており、数年前からFIAによって推し進めてきたデジタルモータースポーツが大盛況を迎えつつある。

 なかでも、あらゆるジャンルのEスポーツが普及している海外では、多くのシリーズが本格的なプログラムとしていち早くデジタルモータースポーツを採用した。

 まず、F1を運営するFOWCがF1公式ビデオゲーム、F1 2019を使用した「F1 Eスポーツ・バーチャル・グランプリ」を実施し、延期および中止となっていたグランプリを開催。F1ドライバーがリアルレースさながらのバトルを繰り広げていることは、モータースポーツファンならご存知のことだろう。

 これに合わせてF1直下のカテゴリーであるF2もF1 2019を使用した「FIA-F2バーチャル・レーシング」を行い、F2ドライバーやF3ドライバーが参戦。さらにフォーミュラEもユニセフとのパートナーシップの一環としてEスポーツ大会「フォーミュラEレース・アット・ホーム・チャレンジ」を行っており、レーシングシミュレーターのrファクター2でフォーミュラEのドライバーが自宅から参戦するほか、プロゲーマーやインフルエンサーたちも同レースに挑戦している。

 そのほかの国際シリーズとしてはWTCRが活動休止の間に全4戦の「プレシーズンEスポーツWTCR」を行っており、公式シミュレーターのレースルームを使用してレギュラードライバーたちが激しいバトルを展開したほか、WTCRに次ぐリージョナル選手権のTCRヨーロッパシリーズもアセット・コルサを使用した独自のデジタルモータースポーツ「TCRヨーロッパSIMレーシング」を創設し、同シリーズに挑むトップドライバーが激しいレースを演じている。

 さらにGTワールドチャレンジを管轄するSROが公式ゲームのアセット・コルサを使用した「SRO EスポーツGTシリーズ」を立ち上げたこともポイントで、プロドライバーを対象にしたプロクラス、ゲーマーを対象にしたシルバークラス、ファンを対象にしたアマクラスの各クラスで迫力あるレースを展開。

 また、女性ドライバーを対象にしたWシリーズがiレーシングを使用した「WシリーズEスポーツリーグ」を設立したほか、ヨーロッパで人気のDTMもレースルームを使用した「DTM Eスポーツ・クラシックチャレンジ」を開催しており、新旧のDTMドライバーに加えて、他のシリーズのドライバーやゲーマーたちが各ラウンドで激しいバトルを展開していることも、コロナ禍におけるデジタルモータースポーツのトピックスだろう。

 もちろん、この波はアメリカにも及んでおり、インディカーがiレーシングと提携して全6戦の「インディカー・iレーシング・チャレンジ」を実施。さらにナスカーが「eナスカー・iレーシング・プロ・インビテーショナルシリーズ」、IMSAが「IMSA iレーシング・プロ・シリーズ」を開催するなど、人気シリーズがiレーシングとの提携でデジタルモータースポーツを開催している。

 一方、オフロード系の競技に目を向ければ、WRCが「eスポーツWRCシュートアウト」を設立し、サポートカテゴリーに参戦する若手ドライバーたちが公式ゲームのWRC8を使用して対戦形式のバトルを開催するほか、世界ラリークロス選手権が人気ソフト、DiRT Rally 2.0を使用した「RX Eスポーツ・インビテーショナル・シリーズ」を設立。さらにAPRCもDiRT Rally 2.0を使用した「デジタルAPRCコンペティション」を創設するなど、レース競技以外にもデジルタルモータースポーツが普及しつつある。

 また主要シリーズのほか、ジャガーレーシングが「ジャガーIペースeトロフィー」、シュコダ・モータースポーツが「シュコダ・チャレンジ」を展開するなど自動車メーカー直系のワークスチームがワンメイクでのデジタルモータースポーツを主催するほか、WRCで活躍するオリバー・ソルベルグが「ソルベルグ・ワールドカップ」、DTMで活躍するマイク・ロッケンフェラーが「#レースホーム」を開催するなど、多くのドライバーがシリーズを立ち上げていることもデジタルモータースポーツの特徴と言っていい。

 いずれもバーチャルとはいえ、そのグラフィックは迫力満点で、前述のとおり、プロドライバーが激しいバトルを展開するほか、シリーズによってはゲーマーやファンも参加。実に夢のある世界となっているだけに、コロナウイルスが収束した後もこれらのデジタルモータースポーツは発展していくに違いない。

 しかし、フォーミュラEレース・アット・ホーム・チャレンジにて、ダニエル・アプト選手がプロゲーマーにコントロールをまかせていた替え玉騒動が発生したほか、eナスカー・iレーシング・プロ・インビテーショナルシリーズではダレル・ウォレスJr選手が他者との接触に腹をたて、レースを棄権したことでスポンサーが離脱。さらに同シリーズではカイル・ラーソン選手がレース中に発した人種差別発言によりチームを解雇されるなどハプニングが後を絶えない。

 急成長を見せているだけに今後はデジタルモータースポーツにおいてもルール整備やスポーツマンシップを念頭に置いた教育も必要となることだろう。

5月24日に開催された「FIA-F2バーチャル・レーシング」第3戦モンテカルロ。ルイ・デレトラズ選手がフィーチャーレースを、アーサー・ルクレール選手がスプリントレースを制した。
5月18日に行われたWTCR世界ツーリングカー・カップの「プレシーズンEスポーツWTCR」最終戦。WTCRドライバーのエステバン・グエリエリ選手がプロゲーマーたちを抑えて初優勝。
5月17日に「SRO EスポーツGTシリーズ」第3戦ニュルブルクリンクを開催。ベン・バーニコート選手がマクラーレンを駆ってプロシリーズで優勝となった。

フォト/©Red Bull Racing、©FIA-F2、©WTCR、©SRO レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部

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