リアルドライバーがオンラインで真剣勝負! JAF認定スーパーフォーミュラ・ヴァーチャルシリーズ「スペシャルラウンド」開催

レポート レース

2020年5月25日

「JAF認定スーパーフォーミュラ・ヴァーチャルシリーズ」のスペシャルラウンドとして、SF19を駆る現役ドライバーがオートポリスで仮想レースに挑む、業界初の試みが開催された。決勝レースでは各所でバトルが勃発。リアルレースの開幕を心待ちにするファンや関係者たちを興奮の渦に巻き込んだ。

JAF認定スーパーフォーミュラ・ヴァーチャルシリーズ スペシャルラウンド
配信日:2020年5月17日
開催地:『グランツーリスモSPORT』内オートポリス
主催:株式会社日本レースプロモーション

 新型コロナウイルスの影響により世界中のモータースポーツがストップしている状況の中、レースを待ちわびるファンに少しでも楽しんでもらおうと、世界中のカテゴリーでオンライン・ヴァーチャルレースが開催され注目を集めている。

 そして、国内レースのトップカテゴリーであるスーパーフォーミュラでも、プロモーターである日本レースプロモーションが主導して「JAF認定スーパーフォーミュラ・ヴァーチャルシリーズ」の「スペシャルラウンド」を開催。

 昨年からスタートした「JAF認定スーパーフォーミュラ・ヴァーチャルシリーズ」は、参加者一般公募のオフライン形式で行われてきたが、今回のスペシャルラウンドについては、2020シーズン参戦予定のドライバーらがオンラインでバトルするという初の試みとなった。

 海外のレースでは本格的なレーシングシミュレーターのソフトウェアを使用した形でのヴァーチャルレースが主流となっているが、スーパーフォーミュラでは家庭用ゲーム機『PlayStation4』用の「グランツーリスモSPORT」を採用した。このソフトウェアには現在スーパーフォーミュラで使用されているマシン「SF19」が収録されており、それを使ってオートポリスを舞台にレースが行われた。

 今回は2020シーズンに参戦する現役ドライバーのうち15名がエントリー。残念ながら山本尚貴選手、大嶋和也選手、タチアナ・カルデロン選手、ユーリ・ビップス選手、シャルル・ミレッシ選手はスケジュールの都合で参加はできなかったのだが、THREEBOND DRAGO CORSEはカルデロン選手に代わって道上龍監督が参戦した。

 また新型コロナウイルスの感染対策として、各ドライバーは自宅からリモート出演し、オンラインレースという形で予選と決勝が行われた。そのため回線トラブルによる混乱の可能性も考慮され、レースは事前収録という形で5月14日に行われ、JSPORTS 2/J SPORTSオンデマンドで5月17日19時から放送。5月22日午後からスーパーフォーミュラ公式YouTubeチャンネルでも配信がスタートした。

 注目のレースだが、まずは予選からスタート。通常はノックアウト方式で行われるのだが、今回は1台ずつがタイムアタックをするスーパーラップ方式が採用。昨年のランキングが下位だったドライバーから順にコースインしていき、1周勝負のアタックに臨んだ。

 予選開始早々に、いきなり驚く速さをみせたのが2番目に登場した大湯都史樹選手(TCS NAKAJIMA RACING)。実際のコースレコードを大きく上回る1分23秒939を叩き出した。これに対してスーパーフォーミュラで経験のあるドライバーがタイムアタックに挑むも大湯選手のタイムを上回ることができなかったが、肉薄する走りを見せたのが坪井翔選手(JMS P.MU/CERUMO・INGING)だ。

「アタック前が緊張して手が震えた」という坪井選手だが、大湯選手に対して0.2秒差に迫る1分24秒135を記録。トップを奪うことはできなかったが暫定2番手につけた。12番目に出走した福住仁嶺選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)も1分24秒277の好タイムで3番手につけるが、大湯選手には届かなかった。

 結局、最終走者で昨年チャンピオンのニック・キャシディ選手(VANTELIN TEAM TOM'S)もトップタイムを更新することができずセッションが終了。今季デビューの大湯選手がいきなりポールポジションを獲得した。

 また今回のレースではほぼ全てのドライバーが“ステアリングコントローラー”を使用し、実際のコックピットを再現したものを設置してレースに臨んでいたが、野尻智紀選手(TEAM MUGEN)だけは純正のコントローラーパッドをあえて使用した。

「ステアリングコントローラーは決して安くはないですし、設置するには場所もとります“誰よりも速く走りたい!”というのであれば、ステアリングコントローラーが必要かもしれませんが、普通のコントローラーでも十分に楽しむことはできるというところを見せたくて、今回はこっちにしました」という野尻選手。予選ではステアリングコントローラーを使うライバルに全く引けを取らない走りを披露。トップから0.6秒差の1分24秒603をマークし6番手を獲得した。

 決勝レースは32周で争われ、途中1度のタイヤ交換が義務。タイヤはソフトタイヤのみの使用となり、オーバーテイクシステムは実際と同様に100秒間を自由に使用できる(発動後の使用制限時間等はなし)。また燃料の消費やタイヤの消耗具合もゲーム内で設定され、タイヤや燃費のマネジメントも要求されるレースとなった。

 ポールポジションの大湯選手はスタート直後の混乱に巻き込まれ最後尾まで後退。逆に混乱をうまく利用して8番手スタートだった小林可夢偉選手(carrozzeria Team KCMG)がオープニングラップを制したが、2周目の1コーナーで坪井選手がトップに浮上しレースをリードしていった。

 その坪井選手の独走を許さなかったのが平川亮選手(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)だった。8周目に2番手に浮上すると坪井選手との間隔を少しずつ詰めていった。ここで平川選手は積極的にトップを攻略しようとせずに燃費をセーブしながら走行していた。これにより18周目に坪井選手と同時にピットインした際に給油時間を短縮することに成功し、実際のレースのようにピットストップで逆転してトップに躍り出たのだ。

 前半スティントとは全く逆の展開で後半スティントを迎えた坪井選手。ペースを上げようにも燃料が足りなくなる可能性があり、燃費を気にしながらの走行。それゆえに平川選手になかなか近づくことができなかった。

 一方、後方では各所で接近戦のバトルが繰り広げられていたのだが、その中で最も白熱していたのが大湯選手と山下健太選手(KONDO RACING)の3番手争いだった。スタート直後のアクシデントから挽回した大湯選手の背後に2ストップ作戦を選んだ山下選手が接近。10周近くにわたって抜きつ抜かれつのバトルを繰り広げていた。

 山下選手も1コーナーを中心に何度もオーバーテイクを試みたが大湯選手がしっかりとブロック。時折りわざとスリップストリームにつかせないためにストレートでラインを変えたり、コーナーの立ち上がりでアクセルオンのタイミングをずらすなど、山下選手を撹乱する巧みな走りを披露した。

 平川選手が有利な状態で進んでいたトップ争いだったが、最後の最後で予想外の展開が待ち受けていた。残り2周になって仕掛けるチャンスが少なくなった坪井選手は焦りが出たのか8コーナー出口でコースをショートカットするような形でコースオフ。これがペナルティ対象となり0.5秒間の減速が通達された。

 これで平川選手の勝利が確実かと思われたが、最終ラップに入る直前にまさかのピットイン。なんと燃料が1周分足りなかったのだ。短い給油を終えて2番手でコースに復帰したが優勝のチャンスは潰えてしまった。

 最終ラップのジェットコースターストレートでペナルティを消化した坪井選手は、そのままトップでゴールし優勝。2位は平川選手となった。

 そして3番手争いも最終ラップでドラマが生まれた。山下選手の猛追を何とか抑え込んでいた大湯選手だったが、残り半周でガス欠となりスローダウン。これで山下選手が3位を手に入れた。大湯選手はなんとかゴールにたどり着いたものの12位でのフィニッシュとなった。

 レースを終えた坪井選手は「後半スティントはタイヤと燃料が苦しくて『今日は2位だ』と思っていました。まさか平川選手があのタイミングでピットに入るとは思っていませんでした。タイヤと燃料のことを計算に入れてレースをしなければいけなかったのですごく難しかったですが、優勝できて嬉しかったです」とコメント。

 一方、平川選手はラスト2周になって燃料が足りないことに初めて気づいたとのことで「途中のピットストップでちゃんと最後まで走れるように給油したつもりだったんですが、思ったより燃料を使ってしまいました」と語った。

 今回は「JAF認定スーパーフォーミュラ・ヴァーチャルシリーズ」の特別戦ということで、JAFレース部会の委員であり、FIAデジタルモータースポーツ委員会の委員も務める飯田章氏がレースディレクターを担当。レース中の接触等については実際のレースと同様にリプレイ確認を行うなどの態勢が採られていた。

終始安定した走りでトップ集団を激走し、最後はまさかの逆転勝利となった坪井翔選手がスペシャルラウンドを制した。
終盤の大湯選手と山下選手の激しいバトルは、ヴァーチャルであることを忘れてしまうほど手に汗握る展開となった。

フォト/株式会社日本レースプロモーション レポート/吉田智弘、JAFスポーツ編集部

© 2020 Sony Interactive Entertainment Inc. Developed by Polyphony Digital Inc.
Manufacturers, cars, names, brands and associated imagery featured in this game in some cases include trademarks and/or copyrighted materials of their respective owners. All rights reserved. Any depiction or recreation of real world locations, entities, businesses, or organizations is not intended to be or imply any sponsorship or endorsement of this game by such party or parties. "Gran Turismo" logos are registered trademarks or trademarks of Sony Interactive Entertainment Inc.

ページ
トップへ