自動車メーカーやサプライヤーによる「ものづくり」のノウハウを活かした感染拡大抑制と医療現場の負担軽減への取り組みが進行中

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2020年5月20日

世界的な感染拡大に伴い日本の製造現場でも一時休業や減産等の措置が採られているが、モータースポーツ活動を展開する国内外の自動車メーカー及びパーツサプライヤー等は、医療現場等への支援を表明している。ここでは4月までの各企業の取り組みをまとめた。

トヨタ自動車が試作型などで内製し医療現場へ提供するフェイスシールド。
本田技研工業が生産するフェイスシールドを自治体を通じて医療現場に提供。
日産自動車も各事業所やグループをあげて医療用フェイスシールドを製造。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、活動休止を余儀なくされている2020年のモータースポーツ。この驚異の感染症の対策として、多くのドライバーがSNSを通じて“ステイ・ホーム”を呼びかけ、最前線で活動する国内外のチームも医療アイテムの製造支援やエンターテイメントの提供など独自の活動を行っている。

 そして、積極的にモータースポーツ活動を展開している国内外の自動車メーカー及びパーツ等のサプライヤーもまた、コロナ禍が世界に拡大した3月から4月末にかけて独自の活動を開始していた。

 まず、国内の自動車メーカーから見ていくと、WRCやWEC、スーパーGTやスーパーフォーミュラなど、国内外のモータースポーツで躍進するトヨタ自動車が、国内ではいち早く医療現場や医療用品への支援を表明した。

 3月27日にはトヨタ自動車の北米部門であるトヨタモーターノースアメリカが人工呼吸器や医療用フェイスシールドなどの生産支援を発表したほか、4月7日にはトヨタ自動車も方針を表明。

 マスクの品薄状態の解消に協力すべく、デンソーやアイシン精機、トヨタ紡織などのグループ会社と共にマスクを生産及び自給自足し、医療用マスクの生産、簡易ベッド台や消毒液容器など、医療機関への備品の供給等も発表した。そして、4月30日には重症患者向けの移送用車両として、トヨタ車体がハイエースをベースに開発した特別仕様車を医療機関へ提供している。

 またF1を筆頭にスーパーGTやスーパーフォーミュラで活躍する本田技研工業も4月13日、軽症者の移動用車両として、オデッセイやステップワゴンをベースに運転席と後部座席に仕切りを仕立てた搬送車両を自治体へ提供したほか、医療用フェイスシールドの生産を開始した。

 さらにフォーミュラEやスーパーGTで活躍する日産自動車も、4月16日に医療用フェイスシールドを製造し、日本の医療現場への提供を発表。NISMOやサプライヤーとの協業も行われており、他に人工呼吸器や人工心肺装置の製造メーカーに対する支援の検討開始も表明している。

 そのほか、スーパーGTやニュルブルクリンク24時間レースで活躍するスバルも北米の現地法人が北米のフードバンクに5000万食を支援したほか、IMSAで活躍するマツダも備蓄していたマスクを医療機関へ提供したことも、コロナ禍における日本の自動車メーカーの支援活動だ。

 一方、モータースポーツ活動を展開する海外の自動車メーカーに目を向ければ、4月17日、F1で活躍するフェラーリが人工呼吸器のバルブ製造を開始した他、アメリカの人気シリーズ、IMSAにキャデラックレーシングを送り込むGMも4月17日、アメリカ政府の要請で人工呼吸器の量産及び医療従事者向けにマスクの生産を開始。さらにウラカンGT3などを多くのカスタマーへ供給するランボルギーニも4月17日に人工呼吸器のバルブ製造を開始している。

 以上、医療用アイテムの製造や供給などの支援活動を中心に紹介してきたが、その一方で、多くの自動車メーカーが、自粛生活を過ごすファンへ向けて、エンターテイメント性の高いサービスを提供している。

 例えば本田技研工業が4月29日、自宅でモータースポーツコンテンツを楽しめる特設サイト“バーチャルモータースポーツランド”を開園した他、世界のカスタマーへ向けて911 GT3を供給するポルシェもミュージアムのバーチャルツアーを盛り込んだファミリー向けコンテンツ、“ポルシェ4キッズ”を公開するなど独自のプログラムを展開。その他、トヨタ自動車や日産自動車、スバル、マツダが塗り絵の素材を提供したことも自粛生活を余儀なくされたファミリー向けサポートと言えるだろう。

 また、これらの支援活動は自動車メーカーのみならず、積極的にモータースポーツ活動を行なうサプライヤーにも広がっている。

 まず、スーパーGTや全日本ジムカーナ選手権で活躍するタイヤメーカー、ブリヂストンが4月16日にマスク不足の緩和を目的にグループ内で使用する簡易マスクの自社生産を開始。4月24日には医療現場へ防塵マスクや雨ガッパの提供を開始した。

 WRCで活躍するフランスのタイヤメーカー、ミシュランが4月15日、マスクに続いて人工呼吸器や手の消毒剤の生産を開始した他、F1へタイヤを供給するイタリアのタイヤメーカー、ピレリも、救急車のドライバーを実施するなどイタリアでボランティア活動を実施している。

 その他、様々なシリーズやチームに協賛する自動車部品メーカー、ボッシュも3月26日、新型コロナウイルスの感染の有無を素早く検査できるキットを開発したことも、この状況におけるサプライヤーの活動のトピックスと言っていい。

 これらのようにモータースポーツで活躍する自動車メーカーおよびサプライヤーもCOVID-19の克服に向けて、様々な活動を実施しつつ、事態収束後の経済活動の復興に向けた態勢の整備等に取り組んでいるのだ。

トヨタ自動車東日本が開発しJPN TAXI(ジャパンタクシー)に架装した軽症者移送用の車両。
トヨタ自動車ではハイエースをベースとした感染症の重症患者の移送用車両の提供も開始した。
本田技研工業は北米において感染者搬送車両を仕立て、デトロイト市に10台を無償貸出した。
運転席と後部座席に仕切りを設けた搬送車両は、国内では埼玉製作所を中心に仕立て作業を実施中。
フランスのミシュランが製造するマスクは最大100回程度再利用可能なFMP1/FMP2規格準拠仕様。

フォト/トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、MICHELIN レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部

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