だからカートは面白い!【カート基礎知識Part.5】「カートレースの“疑問”に答えます!」

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2020年5月13日

 レ-シングカートのレースには、他のレースにはない独自の決まりやシステムがあります。カートレースを観戦していて、「コレってどういうこと?」と感じたことはありませんか。今回はそんな疑問にお答えしましょう。


Q.全日本カート選手権を観に行った時、予選ヒートの時間帯に、同じ部門のヒートを何度もやっていました。あれってどういうことなのですか?

A.それはたぶん予選落ちの出るレースだったのでしょう。カートコースには全長に応じて一度にレースができる最大の台数が決まっていて(最長のコースで34台)、レースでそれ以上の参加があった場合は、予選ヒートで決勝に進める選手を決めることになります。では、日本カート選手権を例に挙げて、そのシステムを説明しましょう。

 最大出走台数が34台のコースで行われるレースで、ある部門の出走が40台だったとします。この場合、タイムトライアルの結果に応じて40台をAグループ/Bグループの各20台ずつに分け、それぞれで予選ヒートを行います。カートレースが独特なのはここから。それぞれの予選ヒートの上位17台ずつが単純に決勝進出、とはならないのです。

 予選ヒートで決勝進出を決められるのは、“コースの最大出走台数-6台”まで。今回の場合では各グループの上位14位までが、決勝のスターティンググリッドのポールから28番手に着きます。残る12台は、セカンドチャンスヒートと呼ばれるレース(つまり敗者復活戦)に再び出走。このセカンドチャンスヒートの上位6台が決勝のスターティンググリッドの29~34番手を獲得し、以下7位から最下位が予選落ちとなる仕組みです。ひとつの部門で、セカンドチャンスヒートを含めて3つの予選ヒートが行われるわけですね。


Q.あるカートコースで、最終コーナーからメインストレートの最初の部分にかけて、進行方向に4本の白線が引かれていました。あの線は何のための線なのですか?

A.それは、「ローリングスタートの進行中、2列縦隊のフォーメーションラップでは、この内側を通りなさい」という範囲を示したラインです。この範囲やラインは「コリドー」と呼ばれるもので、一部のカートコースで採用されています。

 レーススタートの合図が出される前にこの白線をはみ出すと、ペナルティの対象となります。ただし、コリドーが適用されるのは、それが特別規則書などで公示されているレースのみ。コリドーのあるコースでも、それがレースで適用されない場合もありますから、レース参加の際は事前に規則をしっかりチェックしておいてください。


Q.2019年の全日本選手権で「ニュートラリゼーション」という言葉が話題になっていましたが、その意味がよく分かりません。

A.ニュートラリゼーションは2019年から日本カート選手権に採用された新しい規則です。これは簡単にいうと、レース中にコース内でアクシデントなどが発生した場合、黄旗での対応では安全性が不十分だけれど、赤旗でレースを止めるほどではないと判断された際の対処法。

 ニュートラリゼーションの開始が告げられると、コース上の各車は自主的にスピードを抑えて隊列を組み、走行を継続したままレース再開を待ちます。F1のバーチャルセーフティカーと似たシステムですね。

 競技長からニュートラリゼーションの指示が出されると、「SLOW」と書かれたボードがコースに示され、同時に全ポストで黄旗が振られます。この間、追い越しは禁止。ニュートラリゼーション中の周回も、レースの周回数としてカウントされます。

 黄旗が振動から静止に変わったら、次のスタートラインで緑旗が振動提示され、ここからレース再開です。ニュートラリゼーションのままヒート終了、という場合もあります。


Q.全日本選手権でレースが終わった後、車検場に入ったドライバーたちがしばらくマシンに座ったままでした。あれはなぜですか?

A.それはフロントフェアリングのチェック終了を待っているのです。全日本/ジュニアカート選手権では、カートの前端にあるフロントフェアリングは、フロントバンパーと一定以上の隙間をもって装着されていなければなりません。

 この隙間は、レースを終えた全車がゲージを使ってチェックされます。ドライバーは不正防止策として(自分で直したりしないように)、このチェックが済むまでシートに座ったまま待つのです。

 隙間が規定より狭くなっていた場合は、前のマシンに接触したと判断されて、5秒加算のペナルティが課されます。レースをフィニッシュしても、車検場でフロントフェアリングと重量のチェックを終えるまで、ドライバーたちは安心できないのです。


Q. 【カート基礎知識Part.4】の中で、「ミススタート旗(緑地に黄色の山型)はカートレース独自のもの」と書いてありました。カートレースでしか使われないフラッグって、他にもあるのですか?

A.カートレース独自のフラッグにはもうひとつ、青地に赤のバッテン(2重対角線)を描いたものがあります。この通称“青・赤旗”は、全日本カート選手権OK部門とジュニアカート選手権(FP-Jr部門・FP-Jrカデット部門とも)の決勝だけで使用されるもの。

 レース中、周回遅れになったか周回遅れになりそうなドライバーに対して示されます。このフラッグを示されたドライバーは、速やかにピットロードから車両保管所に入ってレースを終了しなければなりません。

 もうひとつ、フラッグではないのですがカートレース独自のサインとして、白地に赤のバッテン(2重対角線)を描いたボードがあります。これはローリングスタートの進行中、フォーメーションラップに大きく遅れたドライバーに対して示されるもの。これを示されたドライバーは自分のスターティンググリッドに戻ることはできず、隊列の最後尾に着いてスタートしなければなりません。

フォト/JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

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