国内外のモータースポーツ関連組織に社会貢献の動き。医療支援活動への参入や新たなエンターテインメントの創出へ

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2020年5月12日

新型コロナウイルス感染症の影響で活動が停止状態にあるモータースポーツ業界。そんな状況でも各国のファクトリー、サプライヤーでは感染拡大防止への取り組みに協力する動きも活発になっている。ここでは4月30日までの情報を元にそれらの活動をまとめた。

「プロジェクト・ピットレーン」でメルセデスAMGが製造する「CPAP」デバイス。
英国メルセデスAMG HPPファクトリーでは、ソーシャルディスタンスも確保している。
国内のファクトリーでもフェイスシールドを始めとした個人防護具等の開発製造が進む。

 世界に蔓延する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、国内外でモータースポーツ活動が休止している2020年の4月末現在。モータースポーツ再開の目処が立たない状況にも関わらず、多くのドライバーたちがSNSを通じて「ステイ・セーフ」「ステイ・ホーム」をテーマにメッセージを呼びかけている。

 そして、国内外でモータースポーツ活動を行っている主力チームもまた、この状況に立ち向かうべく、4月末の段階まで実に様々な活動を行っている。

 中でも素早い動きを見せたのが、イギリスのコンストラクター「プロドライブ」だった。3月23日、イギリス政府の要請を受けた同社は人工呼吸器の部品製造の支援を行うことを発表。モータースポーツ業界における社会貢献の在り方をいち早く示す格好となった。

 続いて3月29日には7つのF1チームが「プロジェクト・ピットレーン」と題して、人工呼吸器及び呼吸補助具の製造に着手。「マクラーレンF1チーム」、「メルセデスAMGペトロナスモータースポーツ」、「ROKiTウイリアムズレーシング」、「アストンマーチン・レッドブル・レーシング」、「ルノーDPワールドF1チーム」、「BWTレーシングポイントF1チーム」、「ハースF1チーム」らが賛同している。

 また、フォードの有力チームとしてWRCで活躍する「Mスポーツ」は、4月18日より医療用のフェイスシールドの製作を開始したほか、北米のラリー選手権、ARAでスバルモータースポーツUSAの活動を担う「バーモントスポーツカー」も、4月3日より自社の3Dプリンターを使用して医療用のフェイスシールドの生産を開始している。

 さらに同じく北米の大人気レース、NASCARシリーズで車両等の開発を担う「NASCAR R&D Center」が、4月5日よりフェイスシールドの製作を開始するなど医療用アイテムの制作支援が後を絶たない状況となっている。

 もちろん、国内のチームもスーパーGTで活躍する「NISMO」が4月22日に医療用フェイスシールドのフレーム制作に取り掛かるほか、スーパーGTおよびスーパーフォーミュラなど国内トップシリーズで活躍する「TOM’S」も4月23日、マスクの再利用を実現する除菌コーティングスプレー、TOM’Sクリーンコーティング36の発売を開始。

 同じく国内のシリーズで活躍する「B-MAXレーシングチーム」もキャップやヘルメットに装着することのできる飛末拡散防止用のバイザー、B-MAXバイザーの販売を開始した。

 さらにスーパーGTで活躍する「ゲイナー」が4月24日にミセスミストとのコラボレーションで除菌効果の高いルームスプレーを発売するなど、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐべく、様々なアイテムがリリースされた。

 一方、COVID-19の感染拡大を防ぐべく、世界各国で「ステイ・ホーム」が提唱されていることから、自粛生活を過ごすファンのために様々なエンターテイメントを提供していることも、このコロナ禍におけるモータースポーツチームの取り組みといっていい。

 具体的には4月2日、WRCで活躍する「ヒュンダイモータースポーツ」が“Stay Home,Think Motorsport”をテーマに、自宅にいながらモータースポーツを感じられるオンライン・コンテンツを実施。毎週木曜日にホームシェイクダウンと題する記事でドライバーの自粛生活を紹介するほか、日曜日にはパワーステージ・ライブと題するチャットトークを実施。3月24日には「Mスポーツ」がSNSを通じてファン参加型のカラーリングコンテストを実施している。

 4月2日は「TOYOTA GAZOO Racing」もSNSを通じて塗り絵の素材を提供。これに加えてTOYOTA GAZOO Racingは4月17日、トヨタが所有する事業所内に、グランツーリスモSPORTに対応したレーシングシミュレーターとネットワーク配備を持つ“e-Motorsports Studio supported by TGR”を設置。4月29日にオンラインイベント、TGR e-Motorsport Fesを行ない、同チーム所属のドライバーによるレースやトークライブが動画チャンネルで配信されたことも独自のファンサービスと言えるだろう。

 そのほか、4月2日に「ヒュンダイモータースポーツ」がバーチャルサイン会を実施したほか、3月28日には「ジャガーレーシング」、4月2日は「ポルシェモータースポーツ」が塗り絵用の素材を提供。

 さらに国内のモータースポーツで活躍する「ARTA」も4月13日、“ARTAエアーGTタイムアタック Rd1 岡山”と題する動画を配信したこともファンサービスのひとつで、同チームの所属ドライバーたちがイメージでのタイムアタックを繰り広げる様子を紹介した。

 このようにモータースポーツ業界でも国内外のチームが様々なサポートを行っているが、F1がバーチャルGP、WTCRがeシリーズ、IMSAがiRacingプロシリーズ、DTMがeスポーツを開催するほか、フォーミュラEがeスポーツを開催すると共に、ユニセフと提携して子供たちの支援を実施するなど各シリーズでも独自の活動を展開。まさにモータースポーツに携わる多くのチーム、各シリーズの関係者が、COVID-19が蔓延するなか、様々な取り組みを行っている。

フォト/Mercedes AMG PETRONAS Formula One Team、Mercedes-Benz Grand Prix Ltd、James Tye/UCL、JAFスポーツ編集部 レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部

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