だからカートは面白い!【カート基礎知識Part.4】「カートのレースはちょっとユニーク」

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2020年5月7日

 レーシングカート(カート)のレース方式は、フォーミュラレースやツーリングカーレース等の自動車レースとはいろんな点が違っています。その違いを、日本カート選手権を例に挙げて説明していきましょう。

レースは「タイムトライアル」から戦いに突入

 カートレースの流れを簡単に記すと“タイムトライアル→予選ヒート→決勝”となります。

 大会最初に行われる計時セッションが「タイムトライアル(TT)」です。「計時予選」や「クオリファイングプラクティス」とも呼ばれるこのセッションでは、一定の時間(日本カート選手権では7分間)内に各車がコースインしてタイムアタックを行い、もっとも速かった周のタイムで順位を着けます。

 つまり、やることは自動車レースの「予選」と同じ。このTTの結果で、続く予選ヒートのスターティンググリッドが決まります。

 国内カートレースの最高峰、全日本カート選手権OK部門では、このTTが他の部門以上に重要性を持ちます。その理由は、OK部門のレースシステムにあるからです。

 OK部門は1大会2レース制を採用しており、ひとつの大会で予選ヒートと決勝が2回ずつ行われるのですが、TTは1回のみ。ひとつのTTの結果によって第1/第2レース両方の予選ヒートのスターティンググリッドが決まるので、単純にいえば1大会1レース制で行われる他部門の2倍の影響力があるのです。

カートでは「予選」もレース!

 TTに続いて行われる「予選ヒート」は、決勝のスターティンググリッドを決めるためのセッション。「ヒート」の名のとおり、これもレース形式で行われます。ただし、一般的に予選ヒートの周回数は決勝より短く設定されています。

 レースの最終結果は決勝の着順(+ペナルティ)によって決まるのですが、全日本カート選手権でチャンピオンを狙うのであれば、予選ヒートもおろそかにはできません。それは、全日本では予選ヒートにも1位10点~10位1点のシリーズポイントが与えられるから。

 磨耗しやすいハイグリップタイヤを決勝に向けて温存するため予選ヒートを途中棄権する作戦は、チャンピオン争いの上ではかえってマイナスになってしまうのです。

 予選ヒート/決勝両レースの始まりにも、カートレースの大きな特色があります。それは、ローリングスタートでレースが始まること。これは、押しがけでエンジンを始動する部門もあるカートレースではスタンディングスタートができないことが主な理由です。

 各車は2列縦隊でダミーグリッドに並んだ後にエンジンを始動して走行開始。コース上で再び2列縦隊に整列して低速でフォーメーションラップを行い、スタートランプの赤信号の消灯でレースが開始されます。

 ローリングスタート自体はスーパーGTでもお馴染みのものなのですが、ここにもカートレース独自の決まりがいくつかあります。

 そのひとつが、スタートラインの25m手前に引かれたイエローラインです。最終コーナーを低速のまま立ち上がった各車は、このラインまで一定速度をキープ。イエローライン手前からの加速は違反です。イエローラインまでにフォーメーションが整っていないと競技長が判断した場合、赤信号は消灯されず、フォーメーションラップは継続されます。

 一旦スタートしても、セカンドグリッドの車両がポールより前に出てスタートした等、正規のグリッドどおりにスタートが切られなかったと競技長が判断すると、そのスタートはやり直しに。各車は合図に従ってコース上で再び2列縦隊を組み直してフォーメーションラップを再開します。この合図として掲げられるミススタート旗(緑地に黄色の山型)は、カートレース独自のものです。

 エンジン始動に手間取ったりして所定のスターティンググリッドから後れた場合、フォーメーションラップ中に自分のグリッド位置へ戻れるのは、コース後半に設けられた「隊列復帰禁止区間」まで。この区間に入ってから前走車を抜くと、そのヒートは失格になってしまいます。

東西に分かれてひとつの選手権を争う「2地域制」

 決勝を走り終えた各車はピットロードを通って車検場へ向かい、まず重量チェックを行います。ここにもカートレースのユニークなところが。各部門にはOK部門145kg、FP-Jr部門138kgといった具合に「最低重量」が定められていて、重量チェックでこれを下回ると、そのヒートは失格になります。

 カートレースの場合、この「最低重量」はマシンとドライバーを合わせた重さのこと。車検場でドライバーがマシンと一緒に重量計に乗っているのは、このためなのです。

 最後に、全日本カート選手権のFS-125部門/FP-3部門とジュニアカート選手権で採用されている「東西2地域制」の選手権システムについても説明しておきましょう。

 これらの部門の場合、各ドライバーはまず東西いずれかの地域で5戦のレースに参加します。ひとりのドライバーが両地域にまたがって参加することや、シリーズの途中で参加地域を変更することは許されていません。

 その後、東西両地域のドライバーがひとつのコースに集まって「東西統一競技会」を行い、全6戦のポイント(東西統一競技会は決勝ポイントが1.5倍)を集計して最終シリーズランキングを決します。

 このシステムでは、参加者が少ない地域のドライバーの方が大きなポイントを獲得しやすく、シリーズ争いの上では有利になりがちなのですが、2019年の全日本FS-125部門で参加台数がより多かった東地域のドライバーが最終ランキングのトップ3を占めたのは、なかなか興味深いところです。

フォト/小竹充 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

<関連リンク>
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