伝統の全日本ラリー選手権、日本の大地に挑み続ける王座獲得の記録
2020年4月29日
ドライバーとナビゲーターが息を合わせて勝負するラリー競技。その最高峰である全日本ラリー選手権において、現役クルーたちの全日本タイトル獲得回数を調査した。40年を超える歴史を持つ全日本ラリー選手権。選手たちの王座獲得の履歴を見直していこう。
全日本選手権におけるチャンピオンは、紙媒体として長年発行されている「JAFモータースポーツイヤーブック」の「資料」の項に「選手権保持者」として記録されている。
全日本ラリー選手権においては、1979年からの実績が記されており、記念すべき初代選手権保持者は、1979年A部門が勝田照夫選手、B部門は山内伸弥選手がドライバーチャンピオンを獲得。ちなみに、ナビゲーターについては1980年から記録されている。
スピード競技の全日本ジムカーナ選手権及び全日本ダートトライアル選手権では、多くのドライバーが十数回に渡って全日本選手権のタイトルを獲得しているが、ラリー競技においては、同じ選手が連続してタイトルを獲得している例はそう多くない。
その理由は、国内のみならず、世界ラリー選手権(WRC)やアジア・パフィシックラリー選手権(APRC)など国際シリーズが行われていることが影響していると考えられる。かつて国内で活躍した選手の多くが海外に挑戦してきた歴史を見ても、一定期間、国内で活躍した選手は、何らかのステップアップを果たしていることが言えそうだ。
全日本ラリー選手権では10回以上に渡ってチャンピオンに輝いている選手は、ドライバーおよびナビゲーターともに少ない状況となっている。
まず、ドライバー部門で最も数多くの全日本タイトルを獲得しているのが、ホンダ・シティ(GA2)で2003年の2輪駆動部門でAクラスを制し、初めて全日本ラリー選手権でチャンピオンに輝いた天野智之選手だ。
天野選手は2004年にクラス連覇を果たし、その後もマシンとクラスを変えながら2010年から2012年にかけて3連覇を果たすほか、2014年から2019年にかけて6連覇を果たすなど、これまで11回に渡ってチャンピオンに輝いている。
天野選手は2020年の事実上の開幕戦となった第2戦でもJN5クラスで今季初優勝を獲得。未だ最前線で活躍しているだけに、今後もタイトル獲得回数を更新するに違いない。
また三菱ミラージュ(CA4A/CC4A)を駆り、1993年は4勝したBクラスで初チャンピオンに輝いた奴田原文雄選手も長年に渡って活躍してきたタイトルホルダー。三菱ランサーエボリューション(CP9A)で1999年の4輪駆動部門Cクラスのチャンピオンに輝くと、その後は常に最高峰クラスでタイトル争いを左右した。
1999年および2003年にAPRC、2004年から2008年にかけてはプロダクションカー世界ラリー選手権(PWRC)に参戦しながらも、全日本ラリー選手権の活動を並行して、これまで通算10回に渡ってタイトルを獲得した。奴田原選手も2020年の第2戦でJN1クラスを制する抜群のパフォーマンスを持つだけに、タイトル獲得回数の更新が期待されている。
天野選手と奴田原選手の両名が二桁の全日本タイトル獲得数を誇っているが、1989年のAクラスで初めてチャンピオンに輝き、1999年の4輪駆動部門でAクラスを制した粟津原豊選手が通算9回で続いている。
さらに、2007年にJN4クラスで初めてチャンピオンを獲得し、近年では2017年にJN6クラスでタイトルを獲得している勝田範彦選手も通算8回を数えている。勝田範彦選手は、初代王者の勝田照夫選手を父に持ち、現在では愛息・勝田貴元選手がWRCに参戦中。三世代に渡って一線級のシリーズを戦っているラリー一族としても知られている。
ちなみに、2005年および2007年にPWRCのチャンピオンに輝くなど、長年に渡って国際ラリーを中心に活躍してきた新井敏弘選手は、全日本ラリー選手権でのタイトル獲得は少なく、初めてチャンピオンに輝いた1992年のCクラスを含めて計5回となっている。
同じく、1987年のCクラスで初めて全日本王者に輝いた桜井幸彦選手も、キャリア終盤ではWRCへの挑戦にシフトしたこともあり、全日本ラリーでのタイトル獲得回数は5回。となっている。桜井選手と似た道を歩んできた新井敏弘選手は、新たなライバルである新井大輝選手の成長を見守りながら、今後も記録を伸ばしてゆくに違いない。
初代Bクラス王者の山内伸弥選手、そして、現在は全日本ラリーと全日本ダートトライアルの二足のわらじを履く鎌田卓麻選手の父である鎌田豊選手も、1994年のBクラスで初めてタイトルを獲得して以来、通算5回に渡ってチャンピオンに輝いている。
一方、ナビゲーターに関しても10回以上に渡ってタイトルを獲得した選手は少なく、2019年を終えた段階で二桁の回数を超えているのは井上裕紀子選手ただ一人。
井上選手は、2003年に天野智之選手と共に2輪駆動部門Aクラスで初めてチャンピオンに輝いて以来、2019年のJN5クラスまで天野選手と11回のタイトルを獲得しているが、2013シリーズについては、接戦の末にドライバータイトルを川名賢選手に奪われており、天野選手はシリーズ2位に留まった。
2013年の川名選手は、複数のナビゲーターとコンビを組んでいたためナビのポイントが分散。天野選手と共にシリーズを追っていた井上選手がナビゲータータイトルを獲得することになり、井上選手は通算12回に渡ってタイトルを獲得する金字塔を打ち立てた。
井上選手は、2020年の事実上の開幕戦となった第2戦でも、天野選手と共にJN5クラスを制している。後進の育成を進めながら、さらなる記録の更新が注目されている。
二桁には届かなかったものの、1980年代から1990年代に活躍したナビゲーターの大溝敏夫選手も数多くのタイトルを獲得。大溝選手は、1982年に井上潔選手と共にAクラスを制して初めて全日本チャンピオンに輝くと、1997年に新井敏弘選手と第1部門のCクラスでチャンピオンに輝くまで、合計7回もの全日本タイトルを獲得した。
ナビゲーターにおいては、粟津原豊選手と1993年のAクラスで初めてタイトルを獲得した高橋昭彦選手が通算6回で続くほか、奴田原選手と共に1999年の4輪駆動部門Cクラスで全日本王者に輝いた故・小田切順之選手が通算5回のタイトルを獲得している。
ナビゲーターの石田裕一選手も通算5回のタイトルホルダー。石田選手は、石城健司選手とコンビを組んだ2000年2輪駆動部門Bクラスで、ラリー歴30年(当時)にして初タイトルを獲得(石城選手はシリーズ2位)。2003年及び2004年には飯泉忠男選手と2輪駆動部門Bクラス、2016年から2017年には現在のパートナーである勝田範彦選手とJN6クラスでチャンピオンに輝いている。
このようにラリー競技では10回以上のタイトル獲得者は少ないが、いずれも現役として最前線で活躍しているだけに、彼らレジェンドたちの動向に注目したい。
フォト/JAFスポーツ編集部 レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部
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