だからカートは面白い!【カート基礎知識Part.2】「カートってどんなマシン?」シャシー編

その他 カート

2020年4月21日

 レーシングカート(カート)は、素人目には遊園地のゴーカートと大差のない乗り物に見えることでしょう。でも、これは速さを競うことのみを目的に作られた純粋なレーシングマシン。ちっぽけなサイズからは想像できないようなスピードでサーキットを駆け抜け、時には4輪のレーシングカーを上回るタイムを叩き出します。

 では、カートとはどんなマシンなのか、その速さの秘密をメカニズムの面から解き明かしてみましょう。まずはカートの車体、つまりシャシーのお話からスタートします。

剛性としなやかさ併せ持つパイプフレーム

 カートの車体=シャシーの基本骨格は、金属製のチューブ(パイプ)を曲げて溶接した簡素なパイプフレームで、これはメインフレームと呼ばれています。このチューブは、「磁気に感応する材質(=鉄製)」で「円形(=丸断面)の鋼管」と規則で決められています。

 メインフレームの役割は、それぞれのパーツを繋いで車体を構成することだけではありません。サスペンション機構を持たないカートのシャシーは、レーシングマシンとしての高い剛性を持つと同時に、コーナーではしなやかにしなってタイヤをしっかり路面に接地させる必要があります。つまりメインフレームは、剛性としなやかさを両立させるものでなくてはならないのです。

 メインフレームは、左右を縦方向に走る2本のチューブがシート取り付け部の前で内側へ絞られた形状をしており、そのデザインは現在、どのメーカー製のカートでもほぼ似通ったものになっています。

 ホイールベースも1040~1050mmで、各メーカーほぼ共通。これは(規則上の制約もあるのですが)、剛性としなやかさの両立を追求する長年の開発を通じてカートの世界が到達した、いわばひとつの完成形なのです。

 とはいえ、どのメーカーのシャシーも性能が同じというわけではありません。チューブの材質や太さや肉厚、その曲げ方、各チューブの角度や溶接位置など、メーカーごとに細やかなデザインの差異があり、これが運動特性の違いを生みます。速さは各メーカー同等であっても、ドライバーによって好みが分かれたり、コンディションごとの得手不得手が生まれたりするのは、そのためです。

 カートには通常のシャシーだけでなく、子供用の小型シャシーもあり、各メーカーはこれを積極的に製造・リリースしています。ジュニアカート選手権のFP-Jr Cadets部門では、ホイールベース900~950mmの小型シャシーが使用されています。

すべては速さと安全のために!

 シャシーのほぼ中央に取り付けられるシートは、FRP製の一体成型で、クッション性はゼロ。これは、シートがシャシーの重要な剛性部材であると同時に、ドライバーの荷重を4つのタイヤに漏れなく伝えてトラクションを発生させるため、硬くなければならないからです。

 コーナリング中、強烈な横Gを受けたドライバーの脇腹は硬いシートに強く押しつけられ、時には肋骨にヒビが入ることも……。タイヤのグリップ性能が高くなった現在、脇腹を守るリブプロテクターは、ドライバーの必須アイテムとなっています。

 メインフレームの前部からシートに渡って“床”を形成するのが、フロアパネル。これはかかとの置き場や燃料タンクの取り付け場所となるだけでなく、メインフレームの剛性を補完する大切なパーツでもあります。通常はアルミニウム製なのですが、ドライバーによってはこれをカーボンファイバー製などのアフターパーツに交換してシャシー剛性を変更している人もいます。

 メインフレームの前端と左右に取り付けられるプラスチック製のボディ状パーツは、空力性能を向上させる“カウル”ではなく、他車とのタイヤ同士の接触を防ぐための安全装備。前端のパーツはフロントフェアリング、左右のパーツはサイドボックスと呼ばれます。

 シャシーの後端に取り付けられるパンパー状のリアプロテクションも、タイヤ同士の接触を防ぐための装備。また、ステアリングシャフトを覆うパーツはフロントパネルと呼ばれ、これも他のボディパーツと同様に規則で装着が義務付けられています。

 左足のペダルで操縦するブレーキは、油圧式のディスクブレーキ機構。そのブレーキローター/キャリパーは、リアにひとつしかありません。一般的なカートにはフロントブレーキがないのです(変速機装備のカートにはフロントブレーキ付きのものもあります)。これは、カートを安価で楽しめるものにするための決まりだとされています。

 駆動輪である左右後輪のホイールは、リアアクスル(リアシャフト)と呼ばれる1本のチューブで固くつながれ、ベアリングを介してメインフレームの後部に取り付けられます。つまり、カートにはデフ機構がありません。このことがカートのドライビングに大きな影響を及ぼすのです。

フォト/JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

<関連リンク>
だからカートは面白い!【カート基礎知識Part.1】「カートってなに?」

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