だからカートは面白い!【カート基礎知識Part.1】「カートってなに?」

その他 カート

2020年4月16日

 レーシングカートの話をすると、クルマ好きを自認する人ですら「あれは子供のオモチャじゃないの?」といった言葉を口にすることが少なくありません。カートというものの存在は知られていても、カートが実際にはどんなものなのか、まだまだ知られていないようです。

 そこで、カートとはどんな乗り物でどんな魅力を秘めているのか、そのエッセンスを改めて紹介しましょう。なお、カートの要点を簡潔にまとめると、こういったところです。

・シンプル/軽量/コンパクトを極めた本物のレーシングマシン
・操作のレスポンスはダイレクトでクイック、コーナリング性能は4輪中ナンバー1
・操縦そのものは簡単だが、速く走らせることは簡単ではない
・体感速度は実際のスピードの約2~3倍
・レースではオーバーテイクが頻出
・低予算で楽しめる
・年齢層は、下は小学校入学前からできて、上は上限なし

 カートは基本的に、簡素なパイプフレームにエンジンとタイヤを取り付けただけのマシン。変速機もサスペンションもドライバーを覆うボディもありません。あるのは、走るためにどうしても必要なパーツと、いくつかの安全装備のみ。

 エアロパーツの装着やエンジンの排気量アップで速さを得るのではなく、不要なものをいっさい削ぎ落として小さく軽くすることで速さを磨き上げた、いわば“引き算”で生まれたレーシングマシンがカートなのです。

 構造が簡潔で軽量なカートでは、あらゆる操縦のレスポンスが極めてダイレクトでクイック。ドライバーの操作にタイムラグなく反応して、素早く止まり、向きを変え、加速します。意のままに動くマシンを操ってサーキットを駆ける楽しさや爽快感は格別なものです。

 加えてカートは、強力なグリップ性能を発揮する純レーシングタイヤを装着。最高速度こそ100km/h+α程度のものですが、コーナーでの俊敏さは4輪中最速を誇ります。

 カートで操作するのは、基本的にステアリングホイール(ハンドル)/アクセルペダル/ブレーキペダルの3つだけ。遊園地のゴーカートと同じです。ただ走らせるだけなら、こんなに簡単な乗り物はないでしょう。ただし、これをレーシングスピードで走らせることは容易ではありません。

 第一の関門は、スピード感の高さです。シートに座ったドライバーの目の高さは、立っている人の腰あたり。アイポイントが非常に低いため、走行中の体感速度は実際のスピードの2倍とも3倍ともいわれます。ドライバーはこの異次元のスピード感の中で、俊敏に動くマシンを繊細にコントロールしなければなりません。

 第二の関門は、身体への負荷です。コーナリングが極めて速いカートでは、ドライバーに強烈な横Gが襲いかかります。さらに、サスペンションもクッションもないカートでは、路面からの振動や衝撃がドライバーに直接伝わります。

 真剣に5分も走れば、初心者はへとへとになるはず。カートは掛け値なしの“フィジカルスポーツ”なのです。トップカテゴリーのプロドライバーの多くが、体力とスピード感のトレーニングにカートを取り入れていることが、このちっぽけなマシンが秘めた実力の凄さを証明しています。

 そんなマシンを乗りこなす楽しさは、飛び切りのものです。そしてレースになると、カートの楽しさはさらに輝きを増します。俊敏に止まって動くカートは、とてもオーバーテイクがしやすいマシン。抜きつ抜かれつのバトルの応酬を存分に楽しめるのです。初めてカートレースを観た人は、そのポジションチェンジの多さに驚くのではないでしょうか。

 さらなるカートの魅力は、少ない費用で本物のモータースポーツができることです。自動車より格段に簡素なマシンなので、その購入費用やメンテナンスなどの活動費用は、かなり安価。基本的な整備はドライバー自身でできるので、プロのメカニックを雇う必要もありません。カートなら一般的な社会人の収入でスポーツ走行やレース活動を楽しむことが十分に可能です。

 JAFが発給しているカートのドライバーライセンスは、8歳になる年から取得することができます。さらに、もっと低い年齢層を対象にした“キッズカート”では、4歳くらいから参加できるカートスクールやレース形式のイベントが各地で行われています。

 一方、カート活動に年齢の上限はありません。70代で元気にレースを楽しんでいるドライバーもいます。また、カートでは女性ドライバーも大活躍。2019年の全日本カート選手権では、女性ウィナーがふたり誕生しました。

 シンプルで簡単なのに、速くて難しくて奥が深い。カートのそんなところが、多くの人がハマる秘密なのでしょう。年齢性別関係なく楽しめて、ホビー指向の草レースから超ハイレベルなトップカテゴリーまでを網羅した、豊かな世界。それがカートなのです。

フォト/小竹充 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

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