新生「丸和オートランド那須」で関東地方選手権が開幕。降雪ながらも新コースを体感
2020年4月14日
シーズンオフのリニューアル工事、そして「つくるまサーキット那須」のお披露目を経て、新生「丸和オートランド那須」のこけら落としとなった関東ダートラ開幕戦。大会当日は季節外れの積雪に見舞われたが、参加者たちは新たなミックス路面の感触を掴んでいた。
2020年JAF関東ダートトライアル選手権第1戦/JMRC関東ダートトライアルシリーズ/
JMRC全国オールスター選抜戦「FSCダートトライアル」
開催日:2020年3月29日
開催地:丸和オートランド那須(栃木県那須塩原市)
主催:FSC
2019年末のシーズンオフに大改修を行い、舗装コース「つくるまサーキット那須」が誕生したサンライズサーキット。JAF公認ダートトライアル競技を行う際は「丸和オートランド那須」の名称が引き続き使用されるため、この新生「丸和」で初の公式戦となる、JAF関東ダートトライアル選手権第1戦「FSCダートトライアル」が開催された。
新生「丸和」におけるダートラ競技では、敷地の奥に残されているダートコースと、つくるまサーキット那須の舗装路面、そして、つくるまサーキット那須のランオフエリア(砂利&土)を組み合わせたレイアウトになることは、事前から噂されていた。
今回の決勝コースは、スタートこそ、つくるまサーキット那須のスタート部分の舗装路面を使っていたが、それ以降はほとんどが未舗装路。奥に残されたダート部分は「象の鼻」エリアを二分割する回し方で使い、つくるまサーキット那須の最終コーナー付近では、舗装コースを横断して、以前の丸和と同じ位置にゴールする設定となっていた。
エントリーは95台だったものの、当日は87台で競われた今大会。主催者は感染拡大防止策を実施し、参加者も感染機会を減らす工夫を徹底して大会に挑んだ。
ところが、当日は何と季節外れの降雪があり、朝からコース一面が雪景色。シャーベット状の雪と水溜り、そして降雪による視界不良で、第1ヒートは様子見の走りとなった。この降雪は、午後にかけて弱まったことと、コースに慣れてきたこともあり、仕切り直しの第2ヒートでは、各クラスで雪を溶かすような熱戦が繰り広げられた。ここからは、各クラスの勝負の展開とウィナーによる新しい丸和の印象をお届けする。
N1500&PN1クラスは今大会最多の17台での戦いとなった。柿澤廣幸選手が第1ヒートのトップ。第2ヒートではタイムダウンするも、川島靖史選手が約1秒差にまで迫るのが精いっぱいとあって、逃げ切りの優勝を飾ることになった。柿澤選手は「第2ヒートがショボ過ぎました。何とか逃げ切れましたが、もうちょっと練習してきます。ただ、丸和は一昨年に勝って以来、ずっと入賞すらできなかったので、優勝はまったく予想してませんでした」と。新コースの印象については「思ったより違和感もなく、スタートが舗装なんで掘れないし、舗装も好きなんで、結構楽しく走れました。ただ、舗装とダートの継ぎ目はグリップ変わっちゃうので、難しかったですね」と語っていた。
PN2&PN3クラスは8台の勝負。第1ヒートトップだった武石裕二選手も自己タイムをコンマ9秒更新したが、クラス先頭走者の大須賀智史選手の逆転。武石選手はコンマ6秒届かず2位に終わった。今年25歳の大須賀選手は何と地区戦初優勝の大金星。クスコとダンロップの若手育成プログラムに抜擢された直後に、幸先の良いスタートを切った。
大須賀選手は「地区戦は3戦目で、優勝どころか入賞も初めてです。1本目は2か所ぐらいで大きく失敗して5~6秒ロスしました。そこを2本目で修正して丁寧に走れたのが勝因かなと」。新コースの印象は「まだ未完成な感じですが、コースレイアウト的にも、今までの丸和だなと。丸和の魂は残っていたので、楽しく走れました」と語ってくれた。
N1クラスは12台での戦い。ストーリアを駆るチャンプ杉谷永伍選手のパーフェクトウィン。第1ヒートは後続に約3秒差を付けてトップに立ち、第2ヒートは同秒台に迫られるものの暫定トップのまま最終出走を迎え、自己タイムをさらに更新したウイニングランとなった。最終的に1秒以上の差を付けられた2位は、EP82スターレットの峯岸伸也選手が獲得。しかし、当の杉谷選手は不満そうだった。
N1ウィナーの杉谷選手は「1本目はうまく走れましたが、2本目は水を吸ったのか途中から加速しなくなって……。四駆に有利な設定だったので、2~3秒差をつけたかったんですよね。晴れてたら勝ててないなって感じですね。来年はGRヤリス乗り換えを狙ってるし、今年は連覇して、チャンピオンがまぐれじゃないことを実証したかったので」と杉谷選手。新コースの印象については「ドライ路面では思いっきり踏めるという印象だったんですが、今はまだ路面を選ばなきゃいけないって感じでしたね」と語ってくれた。
N2クラスは8台の勝負。第1ヒートのトップは足立由夫選手。第2ヒートでは増田徹選手、安藤輝明選手、大橋邦彦選手が相次いでベストタイムを更新する激戦。そしてシードゼッケン032の足立選手が2秒半のタイムアップを遂げて再びトップに立つ。しかし、最終走者の影山浩一郎選手は、足立選手を約コンマ5秒上回って逆転優勝を飾った。
N2優勝の影山選手は「新コースは今日初めて走ったので1本目は様子見でしたね。トップとコンマ差だったから、2本目の修正点が見えて、色々考えて走ったのが良かったのかもしれません」ということで、苦手な第1戦を制して連覇の準備は万端だ。新コースの印象については「今日走った限りでは、舗装の部分は特に気を使わなくていいかな、と思いましたが、コースを横切る段差の部分では2本目の方がジャンプしたような感じがありましたね」と語る。
S1クラスは14台。平川慶一選手が第1ヒートのトップ。だが、第2ヒートはやや雪が弱まったこともあって、多くの選手が秒単位でのタイムアップを果たす展開。しかし、平川選手は「油断していました」と、約コンマ2秒の短縮に留まってしまう。そんな中、第1ヒートの最下位から大逆転を果たしたのは、丸和の”ヌシ”とも呼ばれる小山健一選手。前走車トラブルの再出走となったことも幸いしたという。「1本目はステアリングラックが動いちゃって、慌てて修理して何とか走れたんです。再出走したことで路面の状態も見られたし、いい方向に転がりました」とは小山選手。2位は深田賢一選手で、3位は松栄吉彦選手。平川選手は5位まで落とされてしまった。
S2クラスも14台での戦い。第1ヒートのトップは高橋昌宏選手だったが、第2ヒートでは決勝タイムがいきなり2秒程度アップ。前半ですでに逆転を許したばかりか、走行中にインテークのホースが外れてスローダウンとなる。その影響で再出走を強いられた平田満選手が逆転。自己タイムを約5秒更新し、最終的には大会オーバーオールタイムの1分41秒37を叩き出して優勝した。2位は序盤で決勝タイムを1分42秒58に引き上げた豊崎純任選手。高橋選手は第1ヒートのタイムで3位に踏み留まった。
S2ウィナーの平田選手は「最後の方のKYB(看板)まで来たら止められて、『嘘でしょ?』と思ったんですけど、それまで結構ミスもしていたので、これはリセットする機会だと思いました。水溜りがたくさんあって、絶対避けなきゃダメだと思っていたので、冷静にその通りに走れて結果がついてきたのかな、という感じです」と。新コースの印象については「舗装とダートのミックスはWRCでもよくあるし、それはそれでウデ次第。イコールコンディションなので、楽しんで走ろうと思っています」と語っていた。
Dクラスは10台で競われたものの、そのうち3台が第2ヒート不出走となった。その中には谷田川敏幸選手の全日本チャンピオンマシン(GDBインプレッサ)に乗り換えた星野伸治選手も含まれていた。第1ヒートはベテラン渋谷修一選手が奪取したものの、第2ヒートはアキマただゆき選手が渋谷選手のタイムを破ってトップに立つ。しかし、梅津立選手が「2008年の4月以来、12年ぶり」と語る久々の優勝を飾った。「2本目は守りに入って(笑)、クルマを前に進める走りをしたのが良かったんだと思います。久しぶりすぎて、めちゃくちゃ気分はイイです!」と梅津選手。2位はアキマただゆき選手が獲得した。
Dクラス優勝の梅津選手による新コースの印象は、「そんなに変わっていない印象がありますが、砂利が以前より少し大きい感触ですね。舗装をまたぐ部分はちょっと気になりますが、ダート路面を走る競技ですから、ずっと平らなわけではないですからね」という。 第2ヒートの走行を諦めた星野伸治選手による新コースの印象は「丸和の最初の頃のイメージに近くて、これからどんどん良くなっていくだろうなと感じてます。以前に比べると、やっぱり路面が変わっていて、石が結構入ってるんですが、それがまだ固まり切れていない感じです。舗装とダートが混在するコースなので、クルマの各部への負荷の掛かり方とか、セッティングも変わりそうです」と語ってくれた。
大会前日には開幕戦主催のフォレストスポーツクラブによる練習会が行われ、つくるまサーキット那須のダブルヘアピン外側のランオフエリアを走る、本戦とは異なるコース設定となっていた。また、日曜の開幕戦は降雪に見舞われたが、前日はドライ路面で走行できたこともあり、約1か月後に行われる予定だった全日本ダートラ第3戦を控えた週末とあって、全日本選手もテスト走行に訪れていた。
ここからは、3月9日に行われたつくるまサーキット那須の試走会で舗装コースを走っていて、かつこの週末に丸和を走行している3名のドライバーに、ダートトライアル競技における新コース「丸和オートランド那須」の感触を聞いてみた。
全日本ダートラSA1チャンピオンにして、関東のダートラFFマイスターの小山健一選手。ショップオーナーとしてミニサーキット走行も積極的にこなしているだけに、つくるまサーキット那須の試走会では、新サーキットの攻略法を多くの選手にリサーチしていた。
小山選手の主戦場はやはりダートコース。新生「丸和」の印象については「路面も変わって、土質やグリップも変わっているみたいですね。なので、頭を切り替えず、今までの感覚で走ると大変なことになりそうです。前日の練習会では大ヘアピンの外側を走ったんですが、最後に一瞬、舗装に乗るところが難しい。ダートから舗装に乗って、またダートに戻る感じだったし、舗装の上についても、砂利の乗り方でグリップ感が変わっていたので、その辺りがちょっと読みづらかったですね」と語ってくれた。
つくるまサーキット那須の試走会ではCR-Xで、今大会ではEG6シビックで参加していた島村茂選手に話を聞いた。島村選手は関東のジムカーナやダートラに参戦しながら大会の実況アナウンサーを務めることでも知られているが、関東ダートラチャンピオンという肩書も持つ。つくるまサーキット那須については「真面目な話、さすが山野哲也選手、と言いたいぐらい面白かったですね。コーナーも奥に行くほどキツくなっていたので、山野選手がよく言っているように、かなり攻め甲斐のあるレイアウトでした」とのこと。
そして新しい丸和の印象については、アナウンサー目線で語ってくれた。「新しい丸和は、実況するのが難しくなったかも知れませんね。奥で何が起きているのかは、昔から見えないんですけど、新コースだと、どうしても奥のダート部分で変化をつけるしかないでしょう。広場でターンセクションも作れるでしょうし。だから、スタート付近からの細かい状況把握が難しくなりそうですね。でも、何より、ダートコースを残してくれたのが嬉しい限りです。きっと色々なことができるコースになると思いますよ」と期待を寄せる。
昨年の全日本ダートラD部門にD車両BRZをデビューさせた谷田川敏幸選手。今シーズンは伝統のアドバンカラーを纏って、全日本ダートラ開幕戦に参戦。そこから2週間後となった丸和の練習会にも本番車で参戦。土曜の練習会ではBRZで走行を重ねていた。 「まずは、これまで大会や練習会など、長年いろんな機会で丸和を走ってきた身としては、やっぱりコースの見た目が全然違っちゃったのが印象的だよね」。 「練習会のコース設定については、ストレートが長いので、5速まで入っちゃってました。だから、なかなかブレーキングが怖い(苦笑)。でも、早めにブレーキングすると残っちゃうんで、できるだけ遅らせて、いかにしっかり制動させられるかがポイントでしたね」。 「改修された部分には、まだ砂利が多い所もあるので、クルマをいたわりながら走らせないと、と感じる部分もありましたね。舗装をまたぐところの段差は、坂本光社長がしっかり対策していて、段差になっていないので大丈夫だと思いましたよ」。
フォト/小竹充、はた☆なおゆき レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部
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