栃木・丸和オートランド那須の改修工事が終了し「つくるまサーキット那須」が誕生!

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2020年3月19日

日本を代表するダートコースである栃木県の「丸和オートランド那須」が、3月から「つくるまサーキット那須」というネーミングライツを冠した新しい施設に生まれ変わった。この度、施設がメディア向けに公開されたので、ここでは新施設の概要を解説しよう。

コース入口の看板もリニューアルされ、このたびネーミングライツを獲得したGRガレージ宇都宮つくるま工房の喜谷辰夫代表や西野洋平選手、山野哲也選手や坂本光代表が集まった記念写真撮影も実施。
3月9日に行われたメディア向け試走会で公開された順走レイアウト。基本的には旧丸和オートランド那須「Aコース」後半の走路を踏襲しているが、1コーナーは奥がキツい複合コーナーで、立ち上がりからヘアピンまで小さなS字コーナーが連続し、その後は再び大きなS字へと繋がる構成となっている。

 2019年9月29日のJAF東北ダートトライアル選手権第8戦/2019年丸和カップダートトライアルシリーズ第6戦を最後に、リニューアル工事に入っていた丸和オートランド那須。40年に及ぶ歴史を持ち、日本有数の規模を誇るダートコースだったが、この度、敷地の半分を舗装化して、ダートコースと舗装のミニサーキットを共有する、新たなモータースポーツフィールドとして生まれ変わり、この度、その実際が明らかになった。

 この新施設は、坂本光代表率いる新会社、サンライズサーキット合同会社が運営を担当し、新装オープンにあたりネーミングライツを募集したところ、トヨタカローラ栃木が展開するGRガレージ宇都宮つくるま工房が権利を獲得。3月には「つくるまサーキット那須」という名称が冠されることが発表され、3月9日にはメディア向け試走会が行われた。

 事実上のお披露目となったこの試走会では、坂本光代表を始め、コースのデザインに関わった山野哲也選手と、GRガレージ宇都宮つくるま工房を運営するトヨタカローラ栃木の喜谷辰夫代表が参加。新コースの成り立ちとコースレイアウトの解説、そしてネーミングライツに至った経緯が明らかにされた。

 コースデザイナーを務めた山野選手は、丸和オートランド那須の敷地を使った新コースの開発にあたり、レーシングドライバーとして国内外のサーキットを走った経験やアフターパーツメーカーの開発ドライバーを務めてきた知見を元にアドバイスをしたという。

「自分は『ドライビングパレット那須』のコースデザインを担当したこともあって、再び声を掛けていただいた次第です。このコースのデザインに際して、ハンドリングが楽しいな、でもちょっと難しいな、攻略するのが大変だな、でもやっぱりまた走りたいな……。そう思ってもらえるようなレイアウトを作ることが自分の仕事だと思ってました。コーナリングをどうやって攻略しようか、どう技量を上げると楽しく走れるようになるのか。そう感じられる要素をどうコースに落とし込むかを、かなり真剣に考えて作りました」。

「まずは連続するコーナーを作りたかったんです。これには二通りあって、一つは同じ方向に向かって連続する『複合コーナー』で、もう一つは逆側に続く『S字コーナー』です。これらをたくさん作ることによって、攻略の仕方が幾通りも出てくると考えています」。

「ただ、今回は使える敷地がダートコースの約三分の二であるという条件と、周回コースにしながら、ダートトライアルができるようにしておくこと、ラリークロスもできるようにすること、そしてドリフトやジムカーナができることも条件にありました。スペースに制限がある中でも、用途は広げておく必要があったので、作り込みには苦労しました。でも結果的には面白いコースができたと思ってます」。

 丸和オートランド那須の”顔”であった坂本光弘氏から、同敷地の将来を担う存在として新コースの運営を任された坂本光代表。新コースの概要と将来を語ってもらった。

「つくるまサーキット那須としては、ダートトライアルもそうなんですが、メインとしてはドリフトでの使用になってくると思います。あとはジムカーナやいわゆるタイムアタック、軽自動車の耐久レースなどもできればと考えています」。

「ジムカーナについては、いわゆるコースジムカーナになりますね。最終コーナーの手前に設けた『ハーフムーン』と呼んでいる場所はパイロンターンを想定したジムカーナ専用エリアですし、他のサーキットにはないような、上から見える環境にもなっていますので、それらがポイントになるかと考えています。ジムカーナコースとしてのコース公認はできれば年内に申請を検討したいと考えてますが、今年はあくまでも準備期間としていますので、公式戦を行うとすれば来年以降になると思います」。

「ラリークロスですが、スタート付近のコース幅を始め、FIAの規格も考慮した作りにしていますので、最終的には世界選手権の誘致したいという夢もあります。現段階では、ラリークロス用のレンタル車両を準備していますので、ルール作りと車両制作が間に合えば、2020年末開催を目標に、ラリークロスの模擬的なイベントができればと考えています」。

 ダートコースやミニサーキットいおいては珍しく、かつ「GRガレージ」の名を冠する事例も稀となるネーミングライツに関しては、喜谷代表が至った経緯を語ってくれた。

「GRガレージ宇都宮つくるま工房では、以前から隣にありますドライビングパレット那須にてお客様向けのイベントを実施したり、140ATというお子様向けの体験プログラムを支援させていただいておりました。今回ネーミングライツのお話をいただきまして、両者のクルマ好きを増やしたいという思いが合致したこともありまして、実現に至りました」。

「また、当社ではやはりクルマ好きのお客様を増やしたいという思いがあります。当社でクルマをカスタマイズしていただいたお客様にとっても、クルマを思いっきり走らせる場所はなかなか限られているため、こういったサーキットに来ていただくことによって、クルマを操る楽しみをもっと味わっていただける機会になるといいですよね」。

コースデザイナーとして関わった”100勝王者”山野哲也選手がコースレイアウトを解説。
GRガレージ宇都宮つくるま工房を運営するトヨタカローラ栃木の喜谷辰夫代表も試走。
全日本ジムカーナ選手権PN3を戦う、GRガレージ宇都宮つくるま工房の西野洋平選手。
サンライズサーキット合同会社の坂本光代表社員CEO。ここから新たな挑戦が始まる。
スタートにはラリークロス開催を意識したコース幅を持つ、10台分のグリッドを設置。
旧丸和Aコースの最終コーナーの外側には、パドックにアクセスする通路が設けられた。
旧丸和では砂利だったパドックはご覧のようにすっかり舗装され、駐車枠も描かれた。
試走会にはゲストとして全日本ダートラの谷田川敏幸選手も招待。カラーリングを一新したダートラD車両BRZで舗装のコースを走行し「攻め甲斐のあるコースだね」と評価した。

 ここからはコースデザイナーの山野選手に、つくるまサーキット那須の攻略法を伺った。

「第1コーナーは、ブレーキをいつまで残すのか、いつからアクセルオンするのかが分かりにくようになってます。むやみには突っ込めないけど、突っ込んでみないと走りの組み立てができない。そういうところを考えながら走ってもらう構成になってますね」。

「S字コーナーは一つ目でいかに向きを変えられるかが大切で、そこで向きを変えられないと、次のコーナーで失敗するようになっています。それを一発で決めるための姿勢作りや、姿勢作りのための操作をどうすればいいかを、楽しく探れるようになってます」。

「ヘアピンの進入ですが、通常のアウト・イン・アウトのラインを取ると、横Gが残って苦しくなるところがあるんです。ブレーキングポイントをどこに定めるのかを見付け出すのも楽しいと思いますよ。このヘアピンは、クリップ以降の立ち上がりが意外と難しいんです。普通のヘアピンだと思って立ち上がると、コース幅が足りなくなるんですよ。いかにクルマをイン側に付けておけるかが、ヘアピン攻略のキモになると思います」。

「そして、ヘアピンの立ち上がりに成功すると、次の左、左と連続する複合コーナーも成功する光明が見えてくるようになってます。それを見出すためにはたくさん走らないと分からないかも知れません。自分は丸和オートランド那須をダートトライアルで走った経験もあって、その際に、ヘアピン以降のレイアウトをとても面白く感じていたんですよ。なので、あえてその線形は残したかったという思いもありましたね」。

「最終コーナーに向けては、連続して左コーナーが4つ続くんです。しかも、その4つとも走らせ方が違う。周回するたびにこう走ろうと思って入るんですが、自分もなかなかうまくいかなかったんですよね。ここの組み立てができるようになるには、やはり経験を積むことと技量を上げること。そして、組み立て方を自分で変えていける挑戦が必要だと思います。組み立て方を変えていく過程も面白いので、ぜひトライしてみて欲しいですね」。

「コースを試走したときに、周回を重ねても納得いく攻め方がなかなかできなかったんですよ。自分でコースを描いておきながら、攻略にはまた別の難しさがあるんだなと驚いています。このコースをひと言で表現すると”スーパーハンドリングコース”。ハンドリング性能の高いクルマが欲しくなる。もしくは、ハンドリング性能が高いクルマを作りたくなる。そして、ハンドリングがうまいドライバーになりたくなる。自分の予想よりも、はるかにハンドリングの楽しさを感じられるサーキットができたと思ってます」。

2.9リットルV6エンジンから510馬力を発生させるアルファロメオ・ジュリア・クアドロフォリオを持ち込んだ山野哲也選手。「ハイパワーな後輪駆動なのに電子制御の介入を感じさせない、滑らかな立ち上がりができるクルマなんだ。新コースではこういう、よくできたクルマを走らせたくなるし、そういう方向にクルマを仕上げたくなるんだ」と語る。
新コースは各所に縁石が設けられており、積極的に使ったコーナリングが想定されている。
ミニサーキットはアタックの間合いを取るための待避スペースも必要だ。このコースではストレート部イン側と、中央に設けられたダブルヘアピン外側のアウト側で待避できる。
ヘアピンから最終コーナーに繋がる、旧丸和では「KYB看板」と呼ばれたセクションは、ダートコース時代のレイアウトを踏襲している。イン側の縁石が切れているが、ここはダートラ競技で使う際の交差路を想定しているそうで、舗装コースとしてこのセクションを攻めるラインとしてはミドルなラインを取ることになるため、あまり影響はないとのこと。
最終コーナーの手前には「ハーフムーン」と呼ばれる半月状の舗装スペースがある。これはジムカーナ競技で使用する際のターンセクションを想定しており、ご覧のように8の字ターンなどが設置できるスペースを持つ。

 丸和オートランド那須は「つくるまサーキット那須」に生まれ変わり、旧丸和オートランド那須のスタート&ゴール地点から「富士山」と呼ばれた周辺までの敷地は舗装のサーキットになった。しかし、富士山の南側から「象の鼻」と呼ばれる最奥のエリアまでは、既存のダートコースが、ほぼそのままの形で残されている。

 ダートトライアル競技も引き続き開催されることになっており、コースレイアウトは残されたダート部分に加えて、サーキットの一部やエスケープゾーンのグラベル部分の走行も想定している。つまり、ダートトライアルの大会については敷地の全体を使ったイベントになる模様だ。

 3月にはJAF関東ダートトライアル選手権が開幕し、4月には全日本選手権での使用も予定されているが、すでに常設の準1級格式でコース公認を申請しており、3月9日の時点ではコース査察も終了しているという。ただし、つくるまサーキット那須を含めた旧丸和オートランド那須の敷地においてダートトライアル競技を実施する場合、JAF公認競技会におけるコースの名称は「丸和オートランド那須」で申請を行っているそうなので、公認ダートトライアル競技に関しては「丸和」という慣れ親しんだ名称が継続されている。

「これまで丸和オートランド那須に関わってきた立場としては、ダートコースへの思い入れはやはり強いですし、従来のようなダートコースの維持を期待していたダートトライアラーの皆さんに申し訳ないという思いもあります。ですが、新たな施設ではラリークロスの開催を含めた新たな可能性を探るチャレンジも行っていきますので、引き続きご愛顧いただけますようお願い致します」とは坂本光代表。新コースの新展開に期待したい。

リニューアル前最後となる、2019年9月29日の競技会で撮影された集合写真と同じ位置で撮影した写真。右方にあった「富士山」が削られ、新たに巨大なクレストが誕生している。
舗装コースの1コーナーからダートコースを望む。従来の1/3程度のダートコースはそのまま残されており、練習会やフリー走行などが行われる際は、このスペースが使われる。
舗装の1コーナーとダートコースが接するエリア。旧丸和Aコースを走る場合、「象の鼻」を立ち上がり「への字」に至る手前で、大きく左にターンするようなイメージだ。
旧丸和ではストレートとなっていた部分は、低い土手も削られて広大な広場となっている。
ダートラ練習会等で敷地のダートコース部分だけを使う場合は、暫定的にこのような位置からコースに出入りする状況となっていた。

フォト/JAFスポーツ編集部、つくるまサーキット那須、友田宏之 レポート/JAFスポーツ編集部

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