全日本カート選手権西地域はフレッシュな顔ぶれで開幕!

レポート カート

2020年3月18日

2020年の全日本カート選手権が、西地域から開幕。3月15日、花冷えの鈴鹿サーキット国際南コースでFS-125部門とFP-3部門の第1戦が開催された。天候に翻弄される形となったFS-125部門では、津野熊凌大選手(Scuderia Sfida)が初優勝。FS-125部門では舟橋弘典選手(HIRAI PROJECT with Ash)が全日本初レースを勝利で飾った。

2020年JAF全日本カート選手権FS-125部門/FP-3部門 西地域第1戦
2020年JAFジュニアカート選手権FP-Jr部門/FP-Jr Cadets部門 西地域第1戦

開催日:2020年3月14~15日
開催地:鈴鹿サーキット国際南コース(三重県鈴鹿市)
主催:SMSC

 18台が出走したFS-125部門。その顔ぶれは昨年と大きく入れ替わり、シングルランカーは2019シリーズ8位の鎌苅一希選手(Ash)のみだ。そのレースは予選ヒートから波乱含みの展開に。

 ポールスタートの津野熊凌大選手は順調にトップのままゴールしたのだが、スタート時の違反でペナルティを受け5番手に降格。替わってルーキーの山口大耀選手(HRS JAPAN)がポールとなった。鎌苅選手はタイムトライアルでノータイムに終わったが、17番グリッドから15台を抜き2番手でこのヒートを終えた。

 決勝は22周。上空には青空が広がっているのだが、そこから凍えるような寒風がコースに吹きつけ、2コーナーの向こうには厚い雲が湧き始めていた。この雲が、やがてレースに混乱をもたらすこととなる。

 自らの速さに自信を深める山口選手は、数少ない不安要素だったスタートを無事に決めると、0.7秒ほどのリードを築いて1周目を終えた。やがて津野熊選手が2番手まで挽回して山口選手に迫ってきたのだが、津野熊選手は山口選手のテールを完全に捕らえることができない。レースは山口選手、津野熊選手、鎌苅選手のトップ3がそれぞれ僅かな間隔を空けて周回する展開となった。

 レースが3分の1を過ぎた頃、2コーナー向こうの雲が大きく膨らみ、不気味な黒雲となってコースに迫ってくる。そして、10周目、ついに雨粒がコースを濡らし始めた。コースサイドでは全ポストでオイルフラッグを提示。スリックタイヤを履く各車は、コーナーで大きくカウンターを当てながら必死にマシンを操る。この局面で、にわかに勢いを得たのは鎌苅選手。11周目に津野熊選手を、12周目に山口選手をかわして、一躍トップに躍り出た。

 しかし、鎌苅選手は13周目の1コーナーでコースアウトを喫し大きく後れてしまう。ここでトップを引き継いだのは、山口選手をパスした津野熊選手。続いて宮島昊雅選手(ATEAM Buzz Motorsport)も山口選手を抜き2番手に上がった。すると14周目が終わったところで、濡れたコースに懸命に留まり続けるドライバーたちに赤旗が示された。

 ここでレースは成立、終了となった。チェッカーなきレースを制した15歳の津野熊選手は、FS-125部門2年目の初勝利に「今日は速さに自信がありました。冬の間に練習して、自分の弱さを修正できたのが良かったんだと思います」と喜びを語った。

 2位、3位に続いたのは全日本デビュー戦の14歳ふたり。宮島選手は「もう少しレースが続いたらトップに行けたかもと思うので、ちょっと悔しい」と淡々と語り、山口選手は「レースに手応えはあったけれど、自分のすべてを出し切れなかった。この悔しさは次のレースにぶつけます」と意気込みを口にした。

 FP-3部門は大量27台によるレースだ。22周の決勝が始まると、予選ヒートで8ポジションアップを果たして4番グリッドを得た森岡泉美選手(Formula Blue Ash)が、スタートで2番手に上がり、3周目には高村宏弥選手(Higuchi Racing Team)とともにポールの舟橋弘典選手をパスして先頭に躍り出た。

 だが翌周、高村選手、舟橋選手、久富圭選手(Club Labo)の3台がピタリ一列に連なって森岡選手をかわしていく。この3台はやがて森岡選手以下を引き離し、他車が入り込む余地のないトップ争いへと突き進んでいった。

 7周目、舟橋選手が高村選手を再逆転。11周目、久富選手が高村選手の前へ。先頭集団にポジションの変動はあるのだが、誰も無理をしない。3台はここから舟橋選手-久富選手-高村選手のフォーメーションのまま、淡々と周回を重ねていった。

 35歳の舟橋選手は、首の負傷で2年間の活動休止を経ての復帰レース。28歳の久富選手と21歳の高村選手は、ともに鈴鹿選手権を主戦場とする鈴鹿マイスターで、全日本はスポット参戦。いずれも終盤の“本気バトル”を念頭に置いて、互いの出方を探り合っている。

 決戦のゴングは残り5周、久富選手が舟橋選手の前に出たことだった。翌周、舟橋選手がトップを獲り返し、高村選手も久富選手の前へ。最終ラップ、最終コーナーの立ち上がりで高村選手が舟橋選手に並びかけ、久富選手もそれに続く。3台が0.053秒差の中に固まってのフィニッシュで、勝利を手にしたのは舟橋選手だった。2位は高村選手、予選で10台抜きを演じた久富選手は3位だった。

「全日本初出場で緊張もあったけれど、金曜日から調子が良くて、ドライならイケると思っていました。体はもう全力で走れる状態になっていると思います」と笑顔の舟橋選手。「決勝ではセッティング変更が裏目に出て、着いていくのに必死でした。東西統一競技会がまた鈴鹿であるので、そこでリベンジしようと思います」と高村選手。「とてもいいシャシーバランスを作れていたのに、もったいないレースでした」と久富選手。見応えのある三者の戦いは、清々しい印象を残した。

 同時開催のジュニアカート選手権・西地域第1戦。FP-Jr部門は出走5台の寂しさを忘れるような熱いレースとなり、トップ加納康雅選手(SuperWinforceRT)の真後ろに着けてラップを重ねた落合蓮音選手(Ash with HOJUST)が、ラスト3周の逆転でジュニア選手権デビューウィンを飾った。加納選手はゴール間際で順位を落とし、宮本颯斗選手(TEAMぶるーと)が2位、一宮總太朗選手(KAKIE Racing Team)が3位となった。

 FP-Jr Cadets部門では、2秒以上のリードでトップチェッカーを受けた田邊琉揮選手(TAKAGI PLANNING)がペナルティで7位に降格され、2番手でフィニッシュした坂口諒宗選手(WRT)がデビュー3戦目で初優勝。ポールスタートの金子准也選手(ラムレーシング)が2位、最後尾スタートの澤田賢征選手(SKRwithHIGUCHI)が3位という結果になった。

降雨によって赤旗が掲示され、14周でレース終了となったFS-125部門の決勝。不完全燃焼ながらレースは成立し、津野熊凌大選手が優勝した。
ともに全日本選手権デビュー戦となる14歳のふたり。宮島昊雅選手が2位で、山口大耀選手が3位入賞を果たした。
FS-125部門の表彰式。左から2位の宮島選手、1位の津野熊選手、3位の山口選手、4位の玉橋陸斗選手、5位の金山魁利選手、6位の酒井畝那選手が登壇。
金曜の特別スポーツ走行から日曜の決勝まで、本開催で好調ぶりを見せていた舟橋弘典選手。FP-3部門に初参戦ながら初優勝を飾った。
昨年同大会でも上位争いを繰り広げた高村宏弥選手が2位。鈴鹿でのレース経験が豊富な久富圭選手が3位に入賞した。
FP-3部門の表彰式。左から2位の高村選手、1位の舟橋選手、3位の久富選手、4位の森岡泉美選手、5位の宮地健太朗選手、6位の佐々木克行選手が登壇。
「今年は頑張ってチャンピオンを狙います。最低でもシリーズ3位以内になりたいです」と語った落合蓮音選手が優勝。
上位3台は僅差の勝負となった。2位は宮本颯斗選手、3位は一宮總太朗選手が入賞。
FP-Jr部門の表彰式。左から2位の宮本選手、1位の落合選手、3位の一宮選手が登壇。
優勝した坂口諒宗選手は「クルマは完璧でした。優勝できて思い切り嬉しいです」とコメントした。
ポールスタートの金子准也選手は惜しくも2位。11番グリッドからスタートの澤田賢征選手が大健闘の3位。
FP-Jr Cadets部門の表彰式。左から2位の金子選手、1位の坂口選手、3位の澤田賢征選手、4位の楠本誠真選手、5位の片岡陽選手が登壇。
2019年の東西それぞれのシリーズ上位2選手かつ、2020年第1戦に参戦することを条件に、ヤマハのエンジンが贈呈されるFP-3部門の振興策。西地域は坂裕之選手と藤井亮輔選手が対象となった。

フォト/吉見幸夫、JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫

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