今年の”ドリフト世界一決定戦”は筑波サーキット! 第3回FIA IDCはロシアのゴーチャ選手が連覇!!
2019年12月6日
3回目となる”ドリフト世界一決定戦”「FIAインターコンチネンタル・ドリフティング・カップ(FIA IDC)」が、今年は会場を筑波サーキットに移して開催された。17の国と地域から25名の選手がエントリーし、初のサーキット開催となった新生・FIA IDCに挑んだ。
「FIA Intercontinental Drifting Cup 2019 TSUKUBA DRIFT」
開催日:2019年11月29日(金)~12月1日(日)
開催地:筑波サーキット コース2000(茨城県下妻市)
主催:FISCO-C、(株)サンプロス
各国のトップ・ドリフターが勢揃いして世界一を競う「FIAインターコンチネンタル・ドリフティング・カップ(FIA IDC)」も、今年で3回目を迎えた。この大会は、FIAの冠を掲げる唯一の国際ドリフト競技会として、過去2回、日本の東京・台場特設会場で開催されてきた。3回目となる今回は会場を一新。茨城県下妻市にある筑波サーキットのコース2000で行われることになった。
今大会には17の国と地域から25名のドライバーがエントリー。当日は23名のドライバーが2019年のドリフト世界一を競い合った。今回は例年より遅い11月29日~12月1日開催ということで、各国のシリーズを終えた時期となった。それにより、各国シリーズのチャンピオンクラスのドライバーが集結することとなり、内容の濃いバトルが期待された。
昨年の第2回大会はD1グランプリ最終戦と併催されたが、今年はFIA IDCが単独開催。レースフォーマットは金曜にプラクティスが行われ、土曜には単走(SOLO RUN)による「Qualifying(予選)」、日曜には追走トーナメントによる決勝「BATTLE Tournament」が行われるスケジュール。
しかし、今回は初の試みとして「Consolation(敗者復活戦)」を実施。これは予選で上位15名を確定させ、ベスト16の残り1枠を、追走トーナメントによる敗者復活戦で奪い合うという形式となっており、土曜の午後にスケジュールされていた。
今回使用するコースレイアウトは、コース2000の順走。最終コーナーからスタートしてホームストレートで加速するが、後半の2箇所に置かれたクラッシュパッドには2箇所の「インクリップ」を設定。1コーナーの進入と立ち上がりには「アウトゾーン」が設けられ、S字にも2箇所のアウトゾーンが設定された。
そして、第1ヘアピンには進入と立ち上がりにアウトゾーンが設けられ、ヘアピン後半にはインクリップも設定された。今回の審査区間は、第1ヘアピン立ち上がりのアウトゾーン通過後にフィニッシュということで、高速かつテクニカルな設定となった。
単走で行われる土曜の予選では、各所に設定された絶妙なゾーン指定のおかげで、各ドライバーの実力と、新しいコースへの適応力が試される戦いとなった。
まず第2回台場大会の覇者、S15シルビアのゲオルギィ・チフチャン選手(通称ゴーチャ、Russian Drift Series Team)が89点を記録。その点数を追いかけるように、FD3S RX-7の松井有紀夫選手(Team RE amemiya K&N)が、計測1本目からハイレベルな走りで85点、2本目で90点を叩き出してゴーチャ選手を上回った。
これで勝負アリかと思われたが、S14シルビアのチャールズ・カキ・エン選手(T1 Racing with RYDANZ TIRES)が、さらに深い角度でコースを駆け抜けてきた。この走りが93点という予選最高得点を記録し、上位15名の決勝進出ドライバーが確定した。
注目されたのは、「フォーミュラ・ドリフト・ジャパン」を戦う、今回FIA IDC初出場となったマッド・マイクことマイケル・ウィデット選手(Red Bull/Mazda/TOYO Tires)。1200馬力の4ローター搭載のFD3S RX-7は、そのパワーゆえにストレートが速すぎたのか、1コーナー進入手前でリアの振り出しが甘く、2本目が何と0点。そのため予選は6番手に留まってしまった。
こちらもFIA IDC初出場となった、フォーミュラ・ドリフト・ジャパンを4回制しているJZX100マークⅡ使いのアンドリュー・グレイ選手(Team Kazama with Powervehicle & Valino)は4位。D1グランプリを2連覇したばかりのS15シルビアを駆る横井昌志選手(D-MAX RACING TEAM)は5位に終わる。そして、初代FIA IDC王者として挑んだ、GRスープラを駆る川畑真人選手(Team TOYO TIRE DRIFT)は7位と奮わない。
土曜に行われた8台による敗者復活戦は、慣れないコースや追走の間合いに手こずった海外勢のコースアウトなどによりスケジュールが遅延。日没により土曜の競技は中断となってしまい、日曜の午前中に仕切り直された。
日曜にリスタートした敗者復活戦では、予選で生じたマシンの不調を克服したS15シルビアを駆る小橋正典選手(LINGLONG TIRE DRIFT Team ORANGE)が、JZA80スープラのベンジャミン・シアム選手(Team Kazama with Powervehicle & Valino)やデイチャポン・トオインチャロン選手(通称ポン、Team TOYO TIRES DRIFT)との対戦を勝ち上がり、ベスト16の最後の1枠に滑り込んだ。
日曜の12時からはグリッドウォークが行われ、12時30分から決勝前のセレモニーが行われると、いよいよ決勝の追走トーナメントがスタートする。
ベスト16による決勝1回戦では、予選5位の横井選手が1本目に僅かなコースオフで減点を取られ、第2回FIA IDCで3位を獲得した、予選12位のチャナッポン・ケードピアム選手(通称エス、PTT Performance RD-2 ACHILLES RADIAL)に敗北する。
BMW M3を駆るフォン・ニンチー選手(通称アーツ―、Sailun Motorsports)との対戦となった川畑選手は、スタート直後のパイロンタッチ等による赤旗提示で複数回の取り直しの末、何と1コーナーで外に飛び出してしまい、1回戦で敗退してしまう。
そして昨年2位を獲得したZN6 GT86を駆るイヴ・メイエー選手(Eventseelisberg)は1本目の1コーナーでアンダーステアを出してしまい評価点0のため1回戦敗退。極めつけは、BMW M3を駆るツンクー・ジャン・レイ選手(Sailun Motorsports)と対戦したマッド・マイク選手。何とタイロッド折損でスピンとなり、走行不能となってしまう。
こうして1回戦で有力選手が次々と消えるという波乱の展開となってしまった。
ベスト8の2回戦は、敗者復活の小橋を1回戦に貫禄で下したエン選手と、RPS13 180SXを駆る藤野秀之選手(Team TOYO TIRES DRIFT)という実力者同士の組み合わせとなったが、バトル半ばでエン選手に車両トラブルが発生して勝負アリ。
グレイ選手はエス選手との2回戦を勝ち上がり、準決勝で藤野選手との対戦となった。ここはフォーミュラ・ドリフトとD1グランプリの両雄が底力をぶつけあう大迫力の接戦となり、ギャラリーからも大きな拍手が沸き起こった。審議の結果は藤野選手に軍配。しかし、グレイ選手はトラブルでパワーを失った状態での走りだったというから驚きだ。
ベスト8の2回戦、別のトーナメントではゴーチャ選手と松井選手がそれぞれ勝ち上がり、準決勝では好カードとなった。いざスタートすると、期待に違わず両者一歩も譲らない、これぞ世界戦と言うべき超ハイレベルな追走バトルが展開された。2本の対戦の結果、判定はドロー。ワン・モア・タイムが宣言され再びバトルに入るが、こちらも大接戦となり、やや時間をかけた審議の結果、軍配はゴーチャ選手に上がった。
敗退した松井選手は、そのままグレイ選手が待つ3位決定戦のグリッドへと向かう。こちらも拍手が沸き起こる白熱の追走バトルとなったが、ターボトラブルを克服したグレイ選手の走りは圧巻で、1コーナーから1ヘアピンまでの強烈な加速で松井選手がインサイドに入る隙を与えない。2本の走行の結果、3位はグレイ選手に決定した。
そして決勝戦は、ゴーチャ選手と藤野選手の組み合わせ。つまり、ロシアの帝王とD1チャンピオンという、互いのメンツを賭けた戦いとなった。
しかし、対戦1本目のスタートで藤野選手がリングギヤを破損。走行不能に陥ってしまい、走らずして勝負が決してしまった。ゴーチャ選手も決勝戦の時点ではマシンに不安を抱えており、藤野選手の走行不能による「勝ち名乗り」走行を披露したが、審査区間を越えたところで車両がストップ。クラッチのオーバーヒートでクルマは限界だったという。
筑波サーキットをよく知る日本人ドライバーが優位かとも囁かれた今大会だが、フタを開けてみれば、車両トラブルによる敗退を除けば、やはり上位は実力者が占める結果となった。各国のドリフト環境からすれば、かなりのハイスピードコースでの開催となった第3回FIA IDCだったが、各国トップドライバーたちのアジャスト能力の高さを証明する、まさに”世界一決定戦”に相応しい内容の大会だったと言えよう。
フォト/堤 晋一、JAFスポーツ編集部 レポート/深澤誠人、JAFスポーツ編集部
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