スーパーGTとDTMの”夢のコラボ”! 特別交流戦が富士スピードウェイでついに実現!!
2019年12月4日
「日欧メーカーによる史上初の競宴」……スーパーGTとDTM車両が日本のサーキットで競い合う「ドリームレース」が、ついに富士スピードウェイで開催された。11月22~24日は生憎の天候ながら5万人を超える観客を集め、見どころ満載のレースが展開された。
「AUTOBACS 45th Anniversary presents SUPER GT×DTM特別交流戦」
開催日:2019年11月22~24日
開催地:富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町)
主催:GTA、(株)富士スピードウェイ、FISCO-C
11月22日(金)~24日(日)、静岡県の富士スピードウェイでスーパーGTとDTMによる特別交流戦が開催された。このレースには、スーパーGTに出場しているGT500クラス車両15台に加え、ドイツからアウディRS5が4台、BMW M4が3台参戦した。
アウディ陣営は、今期DTMチャンピオンを獲得したレネ・ラスト選手(Audi Sport RS5 DTM)に加え、DTMレギュラーのマイク・ロッケンフェラー選手(Akrapovic Audi RS5 DTM)、日本でもお馴染みのロイック・デュバル選手(BMC Airfilter Audi RS5 DTM)が来日。
さらに、かつて日本のスーパーGTやフォーミュラ・ニッポンでタイトルを獲得し、ル・マン24時間レースでも3度優勝しているブノワ・トレルイエ選手(Audi Sport Japan RS5 DTM)をラインナップに加えた。
BMWはDTMレギュラーで過去2回タイトルを獲得しているマルコ・ウィットマン選手(BMW M4 DTM)に加え、小林可夢偉選手(BMW M4 DTM)、アレックス・ザナルディ選手(BMW M4 DTM)がゲスト参戦している。
対する日本勢は、RAYBRIG NSX-GTが山本尚貴選手のみ、KEIHIN NSX-GTが塚越広大選手のみの参戦となったが、他の13台はそれぞれレギュラードライバー2人がクルマをシェアする形となっている。
公式日程に先立ち、21日(木)からはテスト走行が行われた。このテストはドイツ勢の多くのドライバーたちも富士は未経験ということで行われており、日本勢もハンコックのワンメイクタイヤを使用した経験がほぼないため実施されている。
金曜日もフリー走行に加え、スーパーGT勢にはタイヤテストの時間を設定。天候は木曜日が晴れ、金曜日が雨となったことから、各チームのドライバーはスリック、ウェットの両タイヤをテストすることが可能となった。
さて、いよいよ予選・決勝が行われたのは、23日(土)から。今回は土曜と日曜にそれぞれ決勝レースが行われるスタイルで、両日とも、午前中に20分間の計時予選、午後から55分+1周のスプリントレースというフォーマットで行われた。
第1レースに向けての予選はダンプコンディション。ウェットタイヤでのアタックとなったが、ここでポールポジションを獲得したのはニック・キャシディ選手(KeePer TOM'S LC500)。これにデュバル選手、山本選手、ロニー・クインタレッリ選手(MOTUL AUTECH GT-R)が続いた。
決勝レース1は、路面が乾きかけるコンディションとなったが、グリッドに着く前のウォームアップ走行で、何とフロントロウのデュバル選手がクラッシュ。デュバル選手は不出走となり、決勝レース1は21台で争われることになった。
スタートが切られて順調にリードを広げたのは、ポールポジションのキャシディ選手。予選3番手のクインタレッリ選手は、スタートで山本選手をかわして一時は2番手に浮上する。だが、すぐに山本選手がポジションを取り返す。
その後、クインタレッリ選手はジワジワとポジションを落としていく。代わって3番手まで浮上してきたのは、予選6番手からスタートした塚越選手。塚越選手は7周目のダンロップコーナーで山本選手を捕らえて2番手に浮上してみせた。
その後方でも、随所でバトルが勃発。ポジションの入れ替わりも度々起こった。
その後、レースが中盤に差し掛かると、各車ともに義務付けられたタイヤ交換のためにピットイン。塚越選手と山本選手は17周を終えたところで、同時にピットに滑り込む。また、トップのキャシディ選手は19周を終えてピットイン。順位をキープしたままコースに戻ることに成功した。
レースが残り数周となったところで、キャシディ選手は2番手の塚越選手に対して7秒以上のリードを築く。以下、塚越選手と山本選手の間には3秒余り、山本選手と4番手に浮上してきた坪井翔選手(WedsSport ADVAN LC500)との間には約5.5秒の差ができており、各車が単独走行状態に陥っていた。
ところが、28周を終えた直後、エンジン回りに問題を抱えた佐々木大樹選手(CALSONIC IMPUL GT-R)がピットロード出口あたりのストレート上にマシンを止めると、コースにはセーフティーカーが導入される。これで各車の差はリセットされ、32周を終えたところからDTM名物の「インディスタート方式」でリスタートとなった。
ここで何とかトップをキープしたのはキャシディ選手。塚越選手らの追撃を振り切って、キャシディ選手がホッケンハイムのリベンジを果たすかのような優勝を遂げた。
2位には塚越選手、3位には山本選手。リスタート後のバトルを制した山下健太選手(WAKO'S 4CR LC500)が4位、坪井選手が5位。そして、DTM勢では、最上位が6位に入ったトレルイエ選手だった。
この週末、初めてDTM車両をドライブしたトレルイエ選手は、リスタート前には14番手だったが、わずか1周で7ポジションアップとオーバーテイクの真髄を見せた。最後は関口雄飛選手(au TOM'S LC500)をかわして、6位をもぎ取っている。
翌24日の予選は、完全なウェットコンディション。ここでトップタイムをマークしたのは中嶋大祐選手(MOTUL MUGEN NSX-GT)。今回が自身の引退レースであることを会場で宣言した中嶋大祐にとっては花道となる予選結果だったが、金曜に大クラッシュして車両を入れ替えた影響で、5グリッド降格のペナルティーが科されてしまう。
代わって、ポールポジションとなったのは、前日のレースにはスタート直前のクラッシュにより出走できなかったデュバル選手。これにナレイン・カーティケヤン選手(Modulo Epson NSX-GT)、NSX-GTの山本尚貴選手、アウディのラスト選手と続いている。
その後に天候は回復し、一時は青空が広がる。決勝スタート時は曇り空となったが、完全なドライコンディションの中でレースは行われた。
このレースで、序盤から速さを見せたのはスーパーGT勢。最終コーナー立ち上がりからの加速に勝るNSX-GT勢は、ポールスタートのデュバル選手を次々とオーバーテイクしていく。そして、4周を終えたところで、NSX-GTは1-2-3-4体制を築いた。
そして、7周目にはデュバルの左リアタイヤがバースト。ダンロップコーナーにパーツの一部が脱落したため、コース上にはセーフティーカーが導入された。
このセーフティーカー中に、BMW M4 DTMのザナルディとアウディのトレルイエがピットイン。今大会ではセーフティーカー中のタイヤ交換は義務を果たしたとはカウントされないが、ここでタイヤ交換する選択をしている。
11周を終えたところで、レースがリスタートすると、カーティケヤン選手がトップをキープ。その後方では、塚越選手が山本選手と中嶋大祐選手を捕らえて2番手に浮上。5番手はBMWのウィットマン選手とアウディのラスト選手による攻防が繰り広げられた。
その後、14周を終えた辺りからは、各車がピットインしてタイヤ交換。ここでもカーティケヤン選手が事実上のトップに立っていた。そんな中、20周目の1コーナーでラスト選手の左リアタイヤがバーストし、コース上には再びセーフティーカーが導入される。
この時、見た目上のトップにいたのはトレルイエ選手。2番手はザナルディ選手で、タイヤ交換を終えたカーティケヤン選手と塚越選手、ウィットマン選手、中嶋大祐選手が続いていた。山本選手は今回のセーフティーカー中に2度目のタイヤ交換を行い、21番手まで後退することになった。
インディ方式でレースがリスタートしたのは25周終了時。その直後からレースは波乱含みの様相を呈していく。コカ・コーラコーナーでは中嶋大祐選手が塚越選手に接触。バランスを崩した塚越選手が野尻選手と接触し、NSX-GTが2台、姿を消すことになる。
さらに同じ周のダンロップコーナーでは、ヘイキ・コバライネン選手(DENSO KOBELCO SARD LC500)が外側の縁石をまたいでジャンプ。それを避けたところからコースに戻ってきた国本雄資選手(WedsSport ADVAN LC500)と大嶋和也選手(WAKO'S 4CR LC500)が接触しただけでなく、その現場に差し掛かった中嶋一貴選手(au TOM'S LC500)と石浦宏明選手(ZENT CERUMO LC500)も巻き込まれてしまう。
さらに、最終コーナーでジェームス・ロシター選手(CALSONIC IMPUL GT-R)がBMWのザナルディ選手と接触。フロントカウルにダメージを負い、1コーナーでストップするなど、まさに大荒れの展開となっていた。
そして、コース上には3度目のセーフティーカーが導入されることになる。このセーフティーカー直前に、見た目上のトップにいたトレルイエ選手はピットイン。これによりカーティケヤン選手が正真正銘のトップに立つことになった。
複数箇所で起きた接触の影響でコース上の至る所にデブリが落ちていたため、レースはセーフティーカーランのまま終了かと思われた。しかし、残り1周で再スタート。この判断には詰めかけたギャラリーからもどよめきが起こり、最終周回に注目が集まった。
さすがに最後はインディスタートでなく、普通のローリングスタートが切られている。危なげなくトップを守ったのはカーティケヤン選手。一方、2番手に浮上してきたウィットマン選手と3番手に浮上してきたデュバル選手は丁々発止のバトルを見せ、会場を沸かせた。
GRスープラコーナーでデュバル選手がウィットマン選手を強引にオーバーテイクすると、最終コーナーではウィットマン選手がデュバル選手をコース外に追いやるところまで詰め寄った。先にチェッカーを受けたのはデュバル選手。
ただし、ゴール後、デュバルには1秒加算のペナルティーが出され、ウィットマンが2位、そしてデュバルが3位という結果となった。そして、優勝はカーティケヤン選手。日本におけるレース活動での初優勝を獲得して、1年を締めくくることになった。
この特別交流戦には、サポートレースとして「auto sport Web Sprint Cup」と「TOYOTA GAZOO Racing Netz Cup Vitz Race 2019 Grand Final」が両日に渡って開催された。
スプリントカップは、かつてスーパーGTとフォーミュラ・ニッポンのシーズンオフに行われていた「スプリントカップ」が復活する形で行われ、GT300相当の車両を2名のドライバーがシェアする形式で土曜にレース1、日曜にレース2が行われた。レース2のグリッドについては、レース1のトップ6がリバースグリットとなる方式が採用された。
レース1では、ほとんどのチームがレインタイヤでのスタートを選択する中、SHOKUMOU GO&FUN GT-Rがスリックを選択。路面が乾いてくると、レインタイヤ勢を一気に引き離した。だが、レース後半に入ると、スリックに履き替えたSYNTIUM LMcorsa RC F GT3が猛追。最後はドライバーの宮田莉朋選手がトップを奪っている。
レース2は、トップ6のリバースによりBH AUCTION CORVETTE GT3がポールポジションを獲得。この武井真司選手と笹原右京選手は特別枠として参加しており、笹原選手はコルベットGT3もタイヤも初ドライブという状況だったにも関わらず、笹原選手はスタートからブッちぎりの速さを披露。FIA Motorsport Gamesに続いて存在感を見せつけて後半を武井選手に託した。レース後半で追いついてきたのは、またしてもSYNTIUM LMcorsaの宮田選手。最終的には宮田選手がトップに立ち、そのまま2連勝を果たした。
土曜に予選、日曜に決勝レースが行われたヴィッツレース・グランドファイナルは、2019年の関西シリーズ1位、そして関東シリーズでも3位を獲得しているヴィッツマイスター・峯幸弘選手(犬印ADSファクターVitz)が後続にコンマ3秒以上の差を付けてポールポジションを獲得した。
日曜の決勝では曇り空ながら路面はウェットコンディション。ポールポジションは峯選手。2番手は北海道シリーズ1位の赤堀康裕選手(Uni10palVitzADS)、3番手は東北シリーズ4位のデパマン石渡選手(N群馬GスパイスFKμVitz)、4番手は、今季は86/BRZレースのプロフェッショナルクラスに挑んで第5戦富士ではポール・トゥ・ウィンを挙げている水谷大介選手(GR東京RacingVitz)という、そうそうたる面々が並んでいた。
10周の決勝レースは、グリップ感のない路面により上位勢が軒並みスタートを失敗する中、赤堀選手がブレーキ勝負で1コーナーまでに峯選手に詰め寄ったが、峯選手はアウト側からホールショットを獲得。その後は水谷選手と赤堀選手、デパマン石渡選手らのバトルが続き、峯選手が2周終了時点で3秒以上引き離す独走状態となる。
その後は水谷選手が集団を抜け出して2番手を疾走。しかし、グリップの上がらない路面に手こずりながら、幾度もコースをハミ出しながら峯選手を追いかける。2秒9そして3秒6とトップ2のタイム差はなかなか縮まらず、逃げる峯選手に対して水谷選手は9周目でファステストラップを計測して追いかけたが万事休す。
結局、峯選手が一度もトップを譲らずポール・トゥ・ウィン。水谷選手は届かず2位、10番手スタートの黒田保男選手(N名古屋GRガレージVitz)が3位表彰台を獲得するリザルトとなった。
フォト/石原 康、JAFスポーツ編集部 レポート/貝島由美子、JAFスポーツ編集部