FIAモータースポーツ・ゲームス2019、GT CUPチームジャパンの濱口弘/笹原右京組が金メダル獲得!

レポート レース

2019年11月20日

11月1~3日にイタリアで開催された「FIA MOTORSPORT GAMES 2019」。日本代表としてGT CUPに挑んだ濱口弘/笹原右京組がレース2とメインレースを席巻し、意欲的な初開催イベントで日本に一足早い金メダルをもたらした。

FIA MOTORSPORT GAMES 2019 ROMA
開催日:2019年11月1~3日
開催地:ヴァレルンガサーキット周辺(イタリア・ローマ近郊)

 FIAモータースポーツゲームスは今年から始まった、モータースポーツをテーマに各国代表選手が金・銀・銅メダルの獲得を目指して競い合う新しいイベント。今回は11月1~3日まで、イタリア・ローマ近郊のヴァレルンガサーキットを舞台に、約50のASNを代表する約200名に及ぶ選手が参加した。

 本大会は10月31日に参加車両33台による、コロッセオ広場からチルコ・マッシモ(戦車競技場跡)までのパレードランに始まり、チルコ・マッシモでは18時からオープニングセレモニーが行われた。

 この大会では「GT CUP」、「TOURING CAR CUP」、「FORMULA 4 CUP」、「DRIFTING CUP」、「KARTING SLALOM CUP」、「DIGITAL CUP」の6種目で争われ、日本からはGT CUPに濱口弘/笹原右京組、そしてF4 CUPには小高一斗選手が「TEAM JAPAN」としてそれぞれ参戦。

 濱口選手はブランパンGTシリーズに参戦しており、今シーズンはプロ・アマクラスでタイトルを確定させている。今回はFFF Racing Team by ACMがプリペアしたランボルギーニ・ウラカンGT3 EVOを持ち込んでおり、彼らは今シーズンの最後を締めくくる最適なパッケージで挑む形となっている。

 オープニングセレモニーでは、途中から強い雨に見舞われる惨状となったが、チームジャパンは小高選手が旗手を務めて3名が行進。日の丸を力強く振り続けて、金曜から始まる本戦への気勢を上げた。

 濱口/笹原組が参加したGT CUPは、昨年まで行われた「FIA GTネイションズカップ」と同様の位置付け。金曜に2回のフリープラクティスが行われ、土曜に2回の予選セッションと予選レースとなるレース1、日曜にはレース2とメインレースが行われる、走りづくめのスケジュールだった。

 金曜のFPではチームフランスとチームスイスが好走を見せ、チームドイツとチームロシアが後に続くタイムを計測していたが、土曜の予選セッションになるとチームジャパンが台頭。ウェットコンディションとなったヴァレルンガサーキットでは、予選1で濱口選手、予選2で笹原選手がトップタイムを計測し、チームジャパンの金メダル獲得を予感させる好タイムをマークした。

 ところが土曜のレース1では、ポールスタートの濱口選手がグッドスタートでレース序盤をリードしたものの、折からの雨模様で路面コンディションが悪化。それまで築いた約3秒のマージンは失われてしまう。また、残り35分でレッドフラッグとなり、その間にオープンとなったピットで笹原選手に交代。レースが再開されて巻き返しを図ったが、何と右リアタイヤにスローパンクが発生。この結果、波乱のレース1はチームドイツに軍配が上がった。

 日曜にはレース2とメインレースが行われ、レース2ではポールスタートの笹原選手だったが、雨の影響でクラッシュやスピンが続出してレースはストップ。晴れ間が見えてダンプコンディションながらレース再開となったが、ドライバー交代を終えた後半のセッションでは濱口選手が圧巻の走りを披露。約6.9秒のリードを築いた濱口選手がトップチェッカー。チームジャパンが初勝利を獲得することになった。

 日曜の午後には、メダル獲得が決まるGT CUPのメインレースがスタート。予選レースなどの結果からチームジャパンは3番グリッドを獲得。ポールはチームドイツ、2番手はチームポーランド、4番手はチームベルギーとなった。

 メインレースはドライコンディションでスタート進行が始まったが、雨の影響が心配されていたため、各車がレインタイヤを装着する状況。スタート直前にスリックタイヤへの交換を実施するチームも多く、降り出しそうな曇り空を仰ぎながら、ギリギリの選択を迫られる混沌としたスタートとなった。

 チームジャパンはスリックタイヤを装着してレインタイヤ2本を傍らに置いてグリッドに並ぶ。スタートドライバーは濱口選手。イン側のグリッドを活かして1コーナーまでに2番手にアップ。トップはチームポーランドだが、周回を重ねるごとに濱口選手が差を詰める。そしてインから美しいオーバーテイク。ペースの上がらない各車を横目に、後続を引き離して10秒以上のマージンを稼ぐ素晴らしい走りを見せた。

 しかし、折からのダンプコンディションでスピンやクラッシュが続出しており、レース開始10分でコース全体に激しい雨が降り始める展開。15分を経過してピットウィンドーが開くと、続々とマシンがタイヤ交換とドライバー交換のためピットに入っていった。

 チームジャパンもピットに入り濱口選手から笹原選手にドライバー交代。依然としてウェットコンディションではあったが、4番手でコースに復帰してすぐに3番手へポジションアップ。その後は単独走行となった笹原選手だったが、フルウェットの路面に足元を取られながらも果敢にオーバーテイクを続けて圧巻の走りを披露する。

 残り1/4となったレースは、チームポルトガルとチームチャイナが見た目上のトップを走っていたが、ピットウィンドー後半で両チームともピットイン。この結果、再びチームジャパンがトップに立つことになった。そして、残り25分でピットがクローズされると共にセーフティーカーが導入されてしまう。

 雨がやや小康状態となった残り18分でレースが再開され、笹原選手は再び猛ダッシュで後続を引き離しにかかったが、依然としたヘビーウェットな路面コンディションにサーキットは死屍累々。残り15分で再びセーフティーカーが出動する事態となった。

 天候は横殴りの雨が降り出して、セーフティーカーラン中でもスピンする車両も現れる事態。このままレースは終了となり、チームジャパンの笹原選手がトップチェッカー。この結果、濱口弘選手と笹原右京選手のチームジャパンが、初開催のFIAモータースポーツゲームスで金メダルを獲得した。

「この週末、我々のチームは素晴らしい仕事をしてくれました。(ブランパンGTシリーズを含めて)シリーズの締めくくりがこういう結果で終えることができて嬉しい限りです。笹原選手もよくやってくれました。彼はGT3マシンの初仕事とは思えない走りで、信じられない仕事ぶりでしたね」とは濱口選手。そして笹原選手は「まずはこの機会を与えてくれた”ヒロシさん”に感謝です。このようなワンダフルなチームで走ることができて嬉しいですね。日本人にとってパーフェクトな結果で、GT3レースのいいデビュー戦になりました!」と喜びを語った。

 新型F4車両によるワンメイクレースとなったF4 CUPには、JAF全日本フォーミュラ3選手権を戦う小高一斗選手が参戦。積極的に前に出る走りに挑戦したが、メインレースでは追い上げ虚しくコースオフ。16位のリザルトだったが、2019シーズン前のトヨタレーシングシリーズ(TRS)で見せたような気合の走りをローマでも披露した。

 なお、この車両は、KCMGにより本大会のために製作された新型F4車両で、F1以外では初となるHalo付きハイブリッドシングルシーター。1.4リットルターボエンジンに12kWのバッテリーを搭載する、2021年以降の次世代型F4マシンとされている。

 初開催されたFIAモータースポーツゲームスは、金メダル1枚と銅メダル2枚を獲得したチームロシアが総合首位を獲得。金メダル1枚と銅メダル1枚を獲得したチームイタリアとチームオーストラリアが次点となり、金メダル1枚を獲得したチームジャパンは、チームオランダやチームウクライナと同じ、総合3位というリザルトとなった。

「FIAモータースポーツゲームス」は今年から始まった、6種目のモータースポーツをテーマに、各国代表選手が金・銀・銅メダルの獲得を目指して競い合う新しいイベントだ。
「GT CUP」に「TEAM JAPAN」として参戦したのは濱口弘選手と笹原右京選手。使用車両はFFF Racing Team by ACMがプリペアしたランボルギーニ・ウラカンGT3 EVO。
折からの雨により2度のSC導入となったメインレースだったが、濱口選手は序盤でトップを奪うと独走。後半を担当した笹原選手も目を見張るスピードでトップチェッカーを奪取。
ヴァレルンガサーキットのカンファレンスセンターで行われたグランドファイナル。GT CUPのポディウムセレモニーでは濱口/笹原組に、栄えある金メダルが贈呈された。
パルクフェルメでは国際映像に「日本の皆さん、やりましたよ! 世界一です、世界一」と日本語で問いかけた笹原選手。表彰式ではWECでおなじみルイーズ・ベケット氏からインタビューを受けた。
次世代型F4車両のワンメイクレースとなった「FORMULA 4 CUP」には小高一斗選手がチームジャパンとして参戦。ウェット路面だったが各国代表選手が新型車を堪能した。
チルコ・マッシモでのオープニングセレモニーでは、降りしきる雨の中、チームジャパンの旗手を務めた小高選手。勢いのある走りを見せたが、メインレースは16位に終わる。
14歳から16歳までの男女混合選手で行われた「KARTING SLALOM CUP」や、単走からノックアウトステージに進出する方式の「DRIFTING CUP」も行われ、昨年のFIA IDC台場ラウンドで2位を獲得したスイスの新星イヴ・メイエー選手も参戦していた。
話題のeスポーツが種目にあるのも大きな特徴。「DIGITAL CUP」はヴァレルンガサーキットのカンファレンスセンターで開催。TCR車両による「TOURING CAR CUP」にはWTCRでおなじみのトム・コロネル選手がシビックTCRで参戦した。
各国代表のメダリストが集結した記念撮影で幕を閉じたFIAモータースポーツゲームスのグランドファイナル。金1枚、銅2枚を獲得したチームロシアが総合首位に輝いた。

フォト/SRO Motorsports Group レポート/JAFスポーツ編集部

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