灼熱の恋の浦、コンマ2秒差で逃げ切った! SA1一色健太郎が全日本初タイトル確定!!

レポート ジムカーナ

2019年9月19日

台風の余波で灼熱の一戦となった全日本ジムカーナ選手権第9戦。小武拓矢との僅差のSA1タイトル争いに挑んだ一色健太郎が、第1ヒートのタイムで今季6勝目を挙げ、自身初となる全日本チャンピオンを確定させた!

2019年JAF全日本ジムカーナ選手権第9戦「とびうめジムカーナフェスティバルin九州」
開催日:2019年9月7~8日
開催地:スピードパーク恋の浦(福岡県福津市)
主催:TOBIUME、RTCR

 全10戦で争われている全日本ジムカーナ選手権も残り2戦。第9戦は福岡県福津市にあるスピードパーク恋の浦で開催された。レースウィークの天候は晴れ。台風13号の直撃は免れて晴天に恵まれたものの、台風の余波により、強い日差しと高い気温に見舞われて、高温路面と格闘する灼熱の一戦となった。

 恋の浦はサーキットと広場のパイロンセクションを組み合わせた全国的にも珍しい設定ができるコースとして知られ、今回も前半では高い縁石を持つサーキット走行、そして後半はやや高低差のあるパイロン区間が設定された。また、タイヤに厳しい舗装路面と言われ、第2ヒートでのタイム更新が難しいとも言われている。

 今シーズンは、第7戦みかわと第8戦SUGOで、PN1小俣洋平(ダンロップitzzロードスター)、PN2山野哲也(EXEDY 12D 124)、SA2高江淳(DLオイチェΩBPFインテグラ)、SA3西森顕(BSレイッツペト犬FWGNSX)、SA4菱井将文(BSレイズ・クスコランサー)の2019年チャンピオンが確定している。第9戦恋の浦では、残る4クラスでタイトル争いが行われることになったが、注目は、どちらが獲っても初となるSA1の若手二人のバトルだった。

 シーズン序盤は合田尚司(YH@CR-XATS速心BPF)と橋本克紀(メカスタBS桐生鈑金シビック)、近藤岳士(YH/Moty's渦CR-X)、一色健太郎(DLitzzLtRSKシビック)、小武拓矢(シンシアYHワコーズCRX艶々)の5名がランキングトップを争っていた。

 それも中盤までには、第3戦エビス西と第4戦タマダで連勝した一色と、開幕戦から表彰台を外さず第5戦名阪Cで優勝した小武の一騎打ちの様相となり、第8戦SUGOには、有効7戦の合計で小武が101点、一色が100点という僅差の勝負となっていた。第8戦SUGOでは一色が優勝、小武が2位に終わったことから、ここで一色が初めてポイントリーダーを奪取。一色が有効116点、小武が104点で第9戦恋の浦を迎えることになった。

 土曜の公開練習から残暑きびしい天候に見舞われた恋の浦。今大会では一色と小武はパドックが隣り合わせ。互いに意識しつつも言葉を交わすでもなく、淡々と自分の決めたスケジュールを消化している様子だ。

 公開練習では第1ヒートから小武が好調。一色はペナルティに沈んでしまうが、第2ヒートでは仕切り直しとなり、小武が1分36秒070のベストタイムを叩き出すと、一色は1分36秒147のセカンドベストで追従してきた。

 日曜の決勝も灼熱の様相。恋の浦は”1本目勝負”になる可能性も高いため、会場には朝から独特の緊張感が漂っていた。土曜の公開練習では「自分がやれることをやるだけです。今日は早く帰って寝ます」と語っていた小武。第1ヒートは1分39秒台の戦いだったが、小武が1分37秒914にまで引き上げてきた。

 続く最終走者の一色は、1分37秒716を計測。小武をコンマ2秒引き離してベストタイムを更新してきた。容赦なく照りつける太陽は、第2ヒートの路面をどのように変化させるのか、参加者は皆、不安な表情で第2ヒートに向けた慣熟歩行に向かっていった。

 曇り空に覆われながらも高い気温に包まれた恋の浦の第2ヒート。予想通り第2ヒートではタイムが上がらない状況となり、PN1、PN2、PN3は第1ヒートのタイムで決着した。四輪駆動マシンのPN4は第2ヒートでの逆転劇が展開されたが、二輪駆動の車両では苦しい状況であるのは間違いない。

 いわゆる”Sタイヤ”を装着するSA1では、1分39秒台に留まっていた選手が軒並み僅かながらタイムを更新してきた。橋本は1分38秒台に入れてきたものの、一色と小武のタイムには届かない。

 そして小武がスタート。しかし、パイロンペナルティを喫して1分42秒台で終わってしまう。後続かつ最終走者の一色はコースを走行している状況。第1ヒートの自分の走りに納得が行っていない一色は果敢に攻めた。しかし、タイムは1分38秒台でタイムダウン……。

 この結果、第1ヒートのタイムで一色の優勝が決まり、2位小武とのチャンピオン争いは一色に軍配。昨年の第6戦みかわで全日本初優勝を挙げた一色が、今シーズンは怒涛の6勝を挙げてタイトル確定。自身初の全日本チャンピオンを確定させた。

「1本目はダメダメでした。60点ぐらいで、かなり悔しい走りでした。本来ならブレーキを踏むべきところでそのままサイドを引いてしまったので、途中からサイドが効きにくい状況に陥らせてしまいました。それでも今回はチャンピオンが獲れたということが大事で、しかも勝って決められたのは良かったです」。

「今年は厳しい状況ながら序盤で2勝できたんですけど、第4戦スナガワで勝てたことが大きかったですね。色々なことがダメなリズムの中でも勝てたんですよ。自分もクルマもうまく行っていない状況で、小清水さんや藤井さんを始め、皆さんに助けられて、その助けをうまく自分のプラスにできたことが効きました」。

「自分一人ではダメでしたね。今までは自分がダメなら走りもダメでしたが、ダメでもダメなりにうまく走ってタイムが残る状況ができました。もちろん自分の中では納得行ってないところも多いんですけどね」。

 とは一色。ジムカーナに挑む環境をやや進化させた今シーズンは、苦しい状況でもタイムを残せる走りを見出すことができた。2011年から全日本ジムカーナを追い始め、9年目での初タイトル。ジムカーナドライバーとして大きな成長を見せた2019年となった。

 第9戦恋の浦では、PN3は恋の浦デビューの新作タイヤを装着した天満清(ADVANクスコロードスター)が5年ぶりの優勝。ロードスターRFを全日本初勝利に導いた。この結果、西野洋平(BSカローラ栃木ALEX86)とユウ(BSエボitzzNTL86)の戦いとなっていたPN3のタイトル争いは、3連覇を狙っていたユウが破れ、2位に入った西野が2011年以来2度目のチャンピオンを確定させている。

 また、第1ヒートは自覚なしのペナルティに沈んでいたSC西原正樹(乱人アクアBS12インプレッサ)が第2ヒートを快走。西原、大橋渡(DLプレジャーインプレッサ)、野尻隆司(itzz DLグローバルランサー)の3名によるSC部門のタイトル争いは、2番手野尻を1秒以上引き離すベストタイムをマークした西原が優勝して、自身10回目の全日本チャンピオンを確定させた。

 そして、茅野成樹(DL☆KYB☆RAYSランサー)と野島孝宏(DLレイズWMLubランサー犬)の一騎打ちとなっていたPN4のタイトル争いは、茅野の第2ヒートの大逆転勝利で次戦に持ち越し。全10戦で争われる全日本ジムカーナは、10月6日の鈴鹿南で最終戦を迎える。

一色健太郎が第1ヒートのタイムで今季6勝目。昨年地元で全日本初勝利を挙げて以来、今季のSA1を席巻した。
2011年から全日本に挑戦する一色が、小武拓矢とのタイトル争いを制して自身初の全日本チャンピオンを確定。
PN1で今季2勝している小林規敏が第1ヒートのタイムで優勝。2位は僅かコンマ2秒差で届かなかった斉藤邦夫。
PN2は車両トラブルに見舞われながら山野哲也が第1ヒートで逃げ切った。今季8勝目で合計113勝に伸ばした。
PN2の2位表彰台獲得は河本晃一。今季は未だ1勝ながら、今季5度目の2位獲得で山野哲也に食い下がっている。
PN3挑戦4年目にしてベテラン天満清がロードスターRFを初優勝に導いた。自身の優勝はSA3時代以来5年ぶり。
西野洋平とユウの一騎打ちとなっていたPN3のタイトル争い。西野が2位で2011年PN1以来のタイトルを確定。
恋の浦で優勝しても自力でのタイトル獲得が難しかったユウ。3位に終わりPN3の3連覇は達成できなかった。
今年も茅野成樹と野島孝宏の一騎打ちとなったPN4。茅野の土壇場の勝利でタイトル争いは鈴鹿南に持ち越し。
SA2佐藤巧は2ヒートとも同タイムという奇跡の今季初優勝。澤平直樹は新型スイフトでは最上位の3位を獲得。
チャンプ西森顕不在のSA3。恋の浦を得意とする久保真吾を押さえた、FD3S使いの藤井雅裕が全日本初優勝。
SA4は恋の浦マイスターの津川信次がまさかの沈没。チャンプ菱井将文が第1ヒートのタイムで逃げ切り優勝。
西原正樹と大橋渡、野尻隆司の三つ巴となっていたSCのタイトル争い。逆転勝利の西原がSC部門3連覇を確定。
決勝コースレイアウト。サーキット区間とパイロン区間が共存するスピードパーク恋の浦。全日本では定番のレイアウトで、パイロン接触や脱輪しやすいコースながら全体的にはハイスピードという難しい設定となった。
晴天に恵まれた恋の浦では、競技終了後に全日本ジムカーナ選手会(AJGA)による、恒例のギャラリー向け同乗走行が行われた。地元九州の選手らを中心に、同乗車両の運転やコースオフィシャルを担当した。
今大会には台湾からCHINESE TAIPEI MOTOR SPORTS LTD.(CTMS)のDr.Kwong Wing YEUNG代表が来日。開会式では、日本でも開催が噂されているFIAアジアジムカーナの盛況をアピール。全日本ジムカーナ選手会(AJGA)の有志からは、昇り龍が描かれたタペストリーが日台ジムカーナの友好の証として贈られた。
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