路面状況が激変した真夏の丸和! SA2北村和浩が”1本勝負”で逆転の今季2勝目!

レポート ダートトライアル

2019年8月13日

変わりやすい天候に翻弄された丸和オートランド那須の全日本ダートトライアル選手権第7戦。今季は荒井信介に押されていたSA2北村和浩が、第2ヒートの大逆転劇で今季2勝目を挙げた。

2019年JAF全日本ダートトライアル選手権第7戦「ALL JAPAN SUPER DT 2019」
開催日: 2019年7月28日
開催地: 丸和オートランド那須(栃木県那須塩原市)
主催: Team-F、360R

 7月初旬のモーターランド野沢大会に続いて、今シーズン3回目の関東ラウンドとして開催された全日本ダートトライアル選手権第7戦。その舞台は開幕戦と同じ栃木県那須塩原市にある丸和オートランド那須となった。

 日曜のみのワンデー開催となった第7戦だったが、台風6号から熱帯低気圧に変わった影響で、大雨の直撃は免れたものの、蒸し暑い曇り空で時折雨が降り出す変わりやすい状況となった。

 第1ヒートは雨でウェット路面、そして第2ヒートは強い日差しに恵まれて、時間の経過と共に路面が乾いていったため、路面の見極めとタイヤ選択に悩まされる戦いを強いられた。

 決勝コースは、開幕戦とは逆周りのレイアウトを採用。いわゆる”丸和Aコース”の変則パターンで、スタート直後は”岬”までストレートで駆け抜けるダイナミックな設定となった。

 第6戦に続いて第7戦も全日本ラリー選手権と開催日程が重なってしまったが、PN1からD部門まですべてのクラスが成立。PN1では最多の22台を集め、合計136台がエントリーしてきた。

 ナンバー付き車両では最も改造範囲が広いダートラの花形クラスのSA2では、昨年はシリーズ5位に甘んじたベテラン荒井信介(クスコADVAN itzzランサー)が、開幕戦の丸和で2017年第2戦以来となる久々の優勝を飾っており、その勢いで第2戦恋の浦も制しており、タイトル奪還に向けて絶好のスタートを切ってきた。

 全日本ダートラのSA2では、鎌田卓麻と北村和浩(MJトレーHKサーDLランサー)、黒木陽介(MJT Gulf五組DLランサー)といった気鋭の3名による対決構造となっていたが、鎌田卓麻がD部門に移行した今シーズンは、北村和浩と黒木陽介がしのぎを削る展開になると予想されていた。

 黒木陽介は合計10戦となった今季は参加大会を絞ってきたが、第3戦コスモス、第4戦スナガワでは連勝を重ねてランキング2番手を走ってきた。対する北村和浩は第4戦スナガワでまさかのクラッシュを喫してしまう。しかし、第5戦門前では、大雨が降りしきる中で修復したてのマシンで今季初勝利を挙げ、第6戦野沢でも2位獲得でランキング2番手に戻ってきた。

 第7戦野沢のウィナーは大ベテランの荒井信介。これで今季3勝目の荒井信介は堂々のポイントリーダー。残り4戦あるとは言え、北村和浩は第7戦丸和で荒井信介に対して一矢報いておきたいところだ。

 第1ヒートはウェット路面からスタート。雨が降ったり止んだりという状況のため、多くのクラスではいわゆる”ウェットタイヤ”を装着した戦いとなった。

 ところが、北村和浩の走りに異変が生じる。”象の鼻”から”富士山”を経て”大ヘアピン”に入るレイアウトで、”富士山”立ち上がりの辺りで不意にアウト側の土手にヒット。そのまま土手を削りながら正面の土手に当たってストップし、最高速の状態であわや転倒という事態が発生した。

 SA2の第1ヒートは荒井信介、マイケルティー(DLブリッドitzzランサー)、黒木陽介という順番。続く林軍市(YHクスコWMトラストランサー)、川村永二(RYP DL大翔itzzランサー)、星野悟(中越清掃社YH OZ MRランサー)という6名が1分33秒台にひしめく激戦のまま第2ヒートに折り返した。

 大勢詰めかけたギャラリーを対象とした催しが行われる中、意外と軽傷だった北村和浩のマシンは着々と修復が進んでいた。天候も曇り空ながら徐々に日照が顔を出し、悪天候の峠は超えて、第2ヒートはドライ路面での戦いができそうな状況となっていった。

 PN1では第2ヒートの決勝タイムが約3秒更新され、後続クラスでも続々とベストタイムが更新されていった。そしてN2が走行する辺りには、場所によっては砂埃が上がることもあり、いわゆる”ドライタイヤ”や”超硬質ドライタイヤ”が効いてくる路面になってきていた。

 SA2ではクラス戦闘スタートの山本伸明(ゼウスDLベストパトランサー)がいきなり1分32秒台でターゲットタイムを更新。その後の暫定ベストは川村永二や林軍市が1分31秒台に塗り替えて、4名のシードドライバーのスタートに注目が集まった。

 荒井信介は1分31秒092で暫定ベスト更新。マイケルティーはコンマ1秒差の2番手タイム。黒木陽介はなんと1分36秒台で撃沈してしまう。残るはクラス最終走者の北村和浩となった。

 北村和浩はなんと、荒井信介の暫定ベストタイムを1秒以上、上回る1分29秒759でフィニッシュ。久々に北村和浩らしい全開走行を披露して、第1ヒートのノータイムから気合の逆転優勝を飾った。

 「1本目はタイロッドのトラブルで、4速に入るところで抜けたから、あれぐらいで済んで良かったね。さすがにわざとじゃないよ、そこまで役者にはなれない(笑)。2本目は29秒台を出したかった。勝つなら29秒台やろな、って思ってたしね」

「ただ、第6戦野沢では、荒井さんのタイムをスタートで聞いて”カーッ”となっちゃって勝てなかったので、今回は、荒井さんのタイムは聞いたけど、集中力は切らさずに冷静に、行くだけの気持ちをもって走れたのが良かったね」

「ここはまとめないとイカンなと考えてたところはちゃんと走れたし、最後まで全開!っていう感じでもなく、攻め方の方向をちょっと変えることができた。今回は少しオトナになれたよ。でも、それはすぐ忘れちゃうんだけどね(笑)」

「今年は荒井さんが調子良すぎるから、今年はもう一回勝たんと。丸和は荒井さんが得意やし、今回の丸和を落としたらマズイという気持ちがあったので、今回勝てて後半に望みをつなぐことができたよね」とは北村和浩。第7戦の結果で、2位表彰台を獲得した荒井信介がSA2のシリーズ首位をキープ。7点差の2番手には北村和浩、1点差の3番手には黒木陽介が付けて、SA2のタイトル争いは、残り3戦にして荒井3勝、北村2勝、黒木2勝という、3名による混戦模様となってきている。

 PN1は8号車の川島靖史(YH SPM Y'Sスイフト)が全日本初優勝、PN2は宝田ケンシロー(YH KYBオクヤマスイフト)が今季3勝目、PN3は竹本幸広(YHユークスオレンジ86)がPN3では初優勝を飾った。

 N1は北原栄一(YHナスカrocoパルサー)が2016年以来の自身2勝目、N2は影山浩一郎(itzz DLホリベSPランサー)が全日本初勝利を挙げた。SA1は丸和を得意とする小山健一(A DLベリティーMSシビック)が優勝した。

 SC1は坂田一也(itzz DLグローバルアクセラ)が今季3勝目、SC2は磯貝雄一(MJT ZEAL DLランサー)が1年ぶりの優勝で梶岡悟(DL・レイズ・ingsランサー)のタイトル確定を阻止。

 D部門は第1ヒートに電気系トラブルでスローダウンしていた谷田川敏幸(トラストADVANクスコBRZ)が、第2ヒートの”1本勝負”で大会オーバーオールタイムを計測。激戦のD部門では、今シーズン唯一となる、2勝目ドライバー一番乗りを果たした。

SA2表彰台。北村和浩(中央)が第2ヒートの”1本勝負”で優勝。2位は荒井信介でシリーズ首位を堅守。
PN1優勝はゼッケン8番の川島靖史。JAF関東ダートラシリーズ首位で挑み、冷静に走り切った。
PN2優勝は今季3勝目の宝田ケンシロー。第2ヒートはあわや横転の激走で細木智矢を逆転した。
ついに竹本幸広(写真右)が新設PN3で初勝利。岡翔太(写真左)とワンツーを飾るも走りに納得いかず微妙な表情。
N1で2本ベストの快勝はJN15パルサー使い北原栄一(写真右)。自身2勝目で実力を証明した。
N2優勝は関東ダートラと全日本戦をダブルで追う影山浩一郎。苦節25年の全日本初優勝!
第1ヒートトップの岸山信之(写真左)を逆転した影山(中央)。関東の足立由夫も3位入賞。
「今回は狙い通りに走れた」と笑顔を見せる小山健一が第6戦野沢に続く連勝で今季3勝目。
山崎迅人と僅差のタイトル争いを展開する長野の坂田一也が今季4勝目を挙げて一歩リード。
SC2表彰台。磯貝雄一が1年ぶりの勝利。今季4勝している梶岡悟は3位でタイトル確定はお預け。
D部門は、第2ヒート”1本勝負”となった谷田川敏幸が優勝。”今季2勝目一番乗り”を果たした。
丸和伝統の”Aコース”を下地としたレイアウトを採用。スタート直後はS字を使わずストレートで”岬”まで駆け抜け、象の鼻からの戻りも速度が乗る、かなりの高速レイアウトとなった。
晴天に恵まれた大会終了後、「全日本ダートトライアル選手会(JDCEA)」による開催地の地元ドライバーが中心となった、ギャラリー向けの競技車両の同乗パレードランが実施された。
大会終了後、丸和オートランド那須の坂本光氏からコース改修に関する発表が行われた。計画では一部に舗装路を設定する予定で、2020年のオープンを目指して10月から工事に入るという。
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