新井大輝WRX STI、全日本復帰初戦で総合ベストの快勝を飾る

レポート ラリー

2019年5月10日

全日本ラリー選手権は5月3~5日、愛媛で第4戦となる久万高原ラリーが行われ、今回から全日本復帰を果たした新井大輝が並み居る強豪達を抑えて、全日本ラリー最高峰クラスでの初優勝を達成した。

2019年JAF全日本ラリー選手権第4戦 Sammy 久万高原ラリー
開催日:2019年5月3~5日
開催場所: 愛媛県
主催:MAC、ETOILE、DCR

 四国愛媛の、標高1,000mを越える高地を舞台とする久万高原ラリーは、今年はターマックラリーを選択した。SSは2日間通して計8本と数こそ多くないが、いずれも10kmを超えるロングSSが用意され、総距離は109.96kmとタフな一戦となった。ただし100kmを越えたため、ドライバーの労苦に報いるべく、通常のシリーズポイントに1.2倍の係数が掛かる。この貴重なボーナスを求めて46台の精鋭達が覇を競った。

 最高峰クラスのJN1クラスは、新井敏弘の子息で昨年までヨーロッパでラリー修業をしていた新井大輝の参戦が大きな話題を呼んだ。大輝は今年、ERC(ヨーロッパラリー選手権)に参戦する傍ら、全日本にもこの第4戦から最終戦までの7戦にエントリーの予定。今年は計6戦の有効得点制となるため、チャンピオンも狙えるポジションだ。

 ただし、大輝が駆るのは旧型のGRB型スバルWRX STI。しのぎを削り合う父、新井敏弘をはじめとするトップ陣の戦いに挑むのはややハンディがあるかと思われたが、SS1でいきなりトップを奪った新井大輝/小坂典嵩組(ADVAN KYB AMS WRX)はその再走となるSS3でもぶっちぎりのベストを奪い、前戦優勝の奴田原文雄/佐藤忠宜組(ADVAN-PIAAランサー)を1.2秒従えてトップでLEG1を折り返す。

 父、新井敏弘/田中直哉組(富士スバル AMS WRX STI)はSS3でコースオフしてデイリタイヤを喫し、舗装を得意としながらもここ久万高原ではなぜか相性のよくない勝田範彦/石田裕一組(ラックSTI名古屋スバルDL WRX)もトップ2台に大きく水を開けられたため、勝負は大輝、奴田原の2台に絞られた。

 明けた5日の日曜。最初のSSとなるSS5大川嶺は、前日は2本とも奴田原がベストを奪ったステージ。前日から逆走となったSS5でも、その高低差のあるステージの特長は変わりはない。「上り区間は奴田原さんに2秒までは負けてもいい。その範囲なら、下り区間で取り返せると思った。最初の2本にすべてを賭けました」と振り返った大輝は、このステージで奴田原を何と約10秒も下すスーパーベストをマーク。続くSS6でも7秒の大差をつけて一気に勝負を決め、本場ヨーロッパで身につけたスピードをまざまざと見せつけて圧巻の優勝を飾った。

 JN2クラスではレクサスRC Fを駆る石井宏尚/寺田昌弘組(CUSCO Mobil 1 DL RC F)がLEG2で2本ベストを奪う好走を見せたが、眞貝知志/安藤裕一組(TGR Vitz GRMN Rally)がLEG1のマージンを守って開幕4連勝。JN3クラスは2連勝中の山本悠太/山本磨美組(sammy☆K-one☆ルブロスYH86)がSS2でパンクで大きく遅れたため、この2戦、後塵を拝してきた山口清司/島津雅彦組(jmsエナペタルADVAN久與86)が今季初優勝を飾った。

 JN4クラスでは、高橋悟志/古川智崇組(ミツバitzzDLマジカル冷機スイフト)が今回も磐石の走りで舗装3連戦を全勝。JN5クラスでも天野智之/井上裕紀子組(豊田自動織機・DL・ヴィッツ)が今季負け知らずの開幕4連勝でターマックラウンド最終戦を上がった。JN6クラス大倉聡/豊田耕司組(アイシンAW Vitz CVT)も同様に開幕4連勝でタイトルレースのリードをさらに広げている。

マシンを仕上げてくれたアライモータースポーツの若いスタッフとともに写真に収まる新井大輝(写真右)。 コ・ドライバーの小坂典嵩(写真左)は全日本初優勝。若い世代の台頭を印象付けた一戦となった。
JN2クラスは眞貝知志/安藤裕一組がRC Fの追撃をかわして開幕4連勝。
JN3クラスは2戦連続2位に甘んじていた山口清司/島津雅彦組が今季初優勝を飾った。
JN4クラスは高橋悟志/古川智崇組が2WDベスト。総合でも5位に入り、スイフトターボの速さを見せつけた。
JN5クラスでは天野智之/井上裕紀子組が今回も隙を見せない走りで快勝した。
ヴィッツCVTが1-2を飾ったJN6クラスは大倉聡/豊田耕司組が開幕4連勝を遂げた。
今回の久万高原ラリーでは中四国地区のラリーで選手、オフィシャルとして活躍する原野雅子さんが、これまでの実績を買われ、SSの運営を取り仕切るステージコマンダーいわゆる“ヤマ長”を務めた。体力・メンタルともにハードな仕事である“ヤマ長”に女性が就くのは極めて異例だが、モータースポーツも女性の時代を強く印象付ける出来事となった。
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